労働基準法における解雇のルール|解雇予告を受けたら確認すべき事項

2024年08月29日
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労働基準法における解雇のルール|解雇予告を受けたら確認すべき事項

高崎市を管轄する群馬労働局が公表する「個別労働紛争相談の状況」によると、令和5年度に総合労働相談コーナーに寄せられた相談のうち解雇についての相談は792件もあったとのことです。

労働基準法その他の法律、判例などにおいて、解雇は制限されており、会社の都合や判断で、勝手に解雇できるものではありません。この点を踏まえ、解雇予告を受けた場合、解雇理由が正当とは言えない不当解雇に該当するのではないかという点を、慎重に判断する必要があります。

本コラムでは、法律で定められている解雇のルールについて解説するとともに、解雇予告があった場合の適切な対処について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。


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1、解雇とは|法律上におけるルールと認められる条件

本章では、解雇についての定義やルールから、具体的な解雇理由について解説します。

  1. (1)解雇の定義とルール

    解雇とは、使用者が雇用契約を一方的に解除することをいいます。解雇について、労働契約法16条は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。

    したがって、次項より解説する、労働基準法などの法令に定められた解雇が認められる条件に当てはまらない限り、会社は自由に解雇できないということです。

    もし会社から解雇と言われた場合でも、すぐに合意しないよう注意してください。3章で解説しているとおり、解雇の理由などを記載した書面を請求し、弁護士に相談することをおすすめします

  2. (2)解雇が認められる条件①|整理解雇

    整理解雇とは、会社の経営不振などの理由により、人員削減の手段として行う解雇です。解雇の有効性の判断ポイントとして判例は、次をあげています

    ●人員削減の必要性:どうしても人員削減をしなければならない経営上の理由があるか。
    ●解雇を回避する努力:希望退職募集、出向、配置転換などの他の方法を実施しても解雇を選択せざるを得ない状況があるか。
    ●人選の合理性:全社員を対象とし、人選の基準が合理的であり、その基準を適正に適用しているか。
    ●手続きの妥当性:労働者や労働組合に解雇の必要性について説明し、協議し、同意を得るような手続きを踏んでいるか。

  3. (3)解雇が認められる条件②|懲戒解雇

    懲戒解雇とは、就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当した場合に、会社が労働者を制裁として解雇することです。
    戒告、減給、出勤停止、降格など懲戒による会社からの制裁の中でもっとも重い処分といえるため、労働者に弁明の機会を設けるなど、手続きは慎重に行われる必要があります。犯罪行為をした場合や、重大なハラスメント行為をした場合などが懲戒解雇の対象になり得ます。

  4. (4)解雇が認められる条件③|普通解雇

    その他にも、労働能力や適格性の低下や懲戒解雇理由に該当しない程度の規律違反行為がある場合も、使用者が解雇することがあります。この場合、整理解雇や懲戒解雇と区別して、普通解雇と呼ばれることもあります。普通解雇の場合も、就業規則に解雇理由が定められている必要があり、それに該当するか、また解雇の相当性が判断されます

    具体的には、私的な事故などにより業務遂行不能になった場合、業務能力が著しく欠けている場合、長期欠勤など勤務態度が著しく不良な場合、試用期間中に本採用に値しないような行為があった場合などが対象になると考えられますが、就業規則に解雇事由があっても簡単に認められるものではなく、やはり慎重な判断が必要になります。

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2、法令による解雇の制限(解雇が法令で禁止されているケース)

解雇が法令で禁止されているケースとして以下のようなものがあります。

  1. (1)差別的な解雇の禁止

    たとえば、国籍・信条・社会的身分を理由とした解雇(労働基準法第3条)、組合の所属または正当な組合活動等を理由とした解雇(労働組合法第7条)、女性の婚姻・妊娠・出産等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条)があげられます。

  2. (2)権利行使を理由とした解雇の禁止

    たとえば、労働基準監督署に法律違反を申告したことを理由とする解雇(労働基準法第104条第2項)、育児・介護休業等の申し出・取得を理由とする解雇(育児介護休業法第10条、第16条)があげられます。

3、解雇予告をされたときに確認すべきこと

上司などから呼び出され、口頭で解雇予告をされた場合、突然のことで頭が真っ白になるかもしれません。しかしながら、今後のためにもその時点で確認しておくべきことがあります。

  1. (1)解雇理由証明書などを要求する

    まず、会社から解雇予告をされたとき、その場で解雇理由を確認しましょう。その場に会社側が書面を準備していなければ、解雇通知書、解雇理由証明書などの書面を要求することが必要です。
    明確な解雇理由がないのであれば、自主退職を促すための退職勧奨を行っているにすぎないことになり、その場合労働者の側に受けるかどうかの決定権があるからです。

  2. (2)解雇理由が正当なものかを検討する

    明確な解雇理由を告げられた場合、その理由が就業規則にのっとっているか、正当なものかを確認しましょう。解雇理由に身に覚えがないということであれば、不当解雇であると主張して争うことも検討すべきです。

    もし、正当な解雇であったとしても、書面により解雇理由を明らかにすることには意味があり、書面で自己都合退職ではないことを明確にしておくことで、失業保険請求の際適切な給付を受けることができます。さらに、解雇日との関係で、解雇予告期間が適切に設けられているかも確認しましょう。予告期間が不十分な場合、解雇予告手当を請求できます。

4、解雇通知書や解雇理由証明書は必ずもらえる?

解雇通知書とは、文字通り解雇を通知するときに渡す通知書ですが、法律上、解雇予告自体を書面ですることまでは求められていませんので、会社は口頭のみで解雇通知をすることが可能です。したがって、従業員の側が、解雇予告をされた場合、解雇理由などを明記した書面が欲しいと請求する必要があります

解雇理由証明書とは、会社が詳細な解雇理由を記載した書面です。この書面には、契約期間の有無、業務の種類、仕事上の地位、賃金または退職理由(退職理由が解雇の場合は、その理由を含む)などを記載する必要があります。法律上、労働者が証明書を請求した場合、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならないと定められており、会社に発行義務があります。
ただし、あくまで労働者からの請求があった場合に生じる義務ですので、会社側が自ら作成しておく必要があるものではないという点は、解雇通知書と同様です。
したがって、労働者は、今後解雇予告手当を請求する際や不当解雇で訴えることになった場合の証拠とするため、自ら必ず書面を要求することが必要です。

5、不当解雇だと思ったときの対処法や相談先

不当解雇ではないかと疑問をもった労働者が、単独で会社と交渉するということは大変勇気がいることであり、会社という大きな組織を相手に、一人の労働者が交渉するというのは非常にハードルが高いものです。
したがって、不当解雇について会社と交渉したいと考えた場合、まずは適切な相談先を選び、事前準備をしたうえで、会社との交渉に入るのがよいでしょう。

  1. (1)社内の労働組合

    まず、一番身近な相談先としては、一定規模の会社であれば、社内の労働組合があります。労働組合に相談し、会社と交渉してもらいます。

    法律上、会社は労働組合から団体交渉の申し入れを受けた場合、正当な理由なく拒むことができないことになっていますので、必ず交渉の場についてもらえるという点で意味があるといえるでしょう。

  2. (2)労働基準監督署

    次に、労働問題といえば、労働基準監督署を思い出す方が多いでしょう。労働基準監督署は、会社に労働基準法違反がある場合に対応する機関であることから、労働基準法違反となる不当解雇があることを相談することになります。

    ただし、法令違反への対応はしてもらえたとしても、解雇の撤回などの具体的な解決までしてもらえるわけではない点は注意が必要です。

  3. (3)弁護士

    前述の通り、労働組合や労働基準監督署は具体的な解決へ導くことが難しいケースが多々あります。他方で、弁護士へ相談すれば、より具体的な解決を目指すことが可能です。労働審判や裁判など法的な手段を見据えて相談したいという場合には、弁護士に相談するとよいでしょう

    この場合でも、まずは、会社との和解に向けた交渉からスタートし、必要に応じて法的手段に移行するということになります。不当解雇について、どのように進めるべきかの相談から、証拠や必要書類などの事前準備、実際の交渉、訴訟などの法的手段になった場合の対応まで、幅広く対応してもらえることが弁護士に相談することの一番のメリットでしょう。

    弁護士に依頼し訴訟となった場合、職場復帰という選択肢にかわって、ある程度の金額を会社に請求することも可能です。不当解雇であることが明らかになった場合でも、職場復帰という選択をすることがためらわれる場合もあるでしょうから、現実的な解決手段を選ぶことができることは大切です。

6、まとめ

解雇予告を受けた場合、解雇自体の有効性の問題だけではなく、手続きの妥当性の観点や、不当解雇を争うための準備などを視野に入れる必要があります。

一方、多くの方は、解雇予告を受けるのは初めてであり、知識や準備が十分でないのが通常です。このような点を踏まえ、万一解雇予告を受けた場合、その時点でまず、専門家に相談することをおすすめします。労働問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています