追突事故の被害者になったときの慰謝料と事故後行うべき対応を弁護士が解説

2021年05月31日
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追突事故の被害者になったときの慰謝料と事故後行うべき対応を弁護士が解説

群馬県高崎市のホームページによれば、令和2年に高崎市内で起きた交通事故件数は2115件でした。前年よりも減少しているものの、依然として多くの交通事故が発生していることがわかるでしょう。

また、追突事故は、同一方向を進行する後続車両が衝突してくるという事故類型で、どれだけ注意をしていても、被害者側が避けることのできないものといえます。そのため、誰がいつ被害者になってもおかしくない事故類型といえるでしょう。
そこで今回は、追突事故の被害者になってしまった方へ、適切な慰謝料を受け取るために、事故後に行っておくべきことについて、高崎オフィスの弁護士が解説いたします。

1、追突事故にあった被害者はどう対応すべきか

交通事故の中でも、追突事故は被害者にとって特に不意打ちとなることが多く、気が動転してしまって最善の行動を取れない方は少なくありません。

まずは、追突事故の被害にあった場合に被害者が取っておきたい行動について確認しましょう。

  1. (1)負傷者の救護と通報

    交通事故の当事者となった場合、速やかに車を停め、さらなる事故の危険を防ぎつつ、負傷者の救護と警察への通報をしなければなりません。これらをそれぞれ危険防止措置義務・救護義務・報告義務といい、道路交通法第72条第1項に定められています。

    救護や通報は交通事故の加害者だけに課せられた義務ではなく、被害者にも課せられている義務です。相手がたとえ加害者であったとしても、負傷している状況であれば救護して、警察に連絡する必要があります。

    警察に報告しなければならないのは、事故の発生日時と場所、死傷者の数、負傷の程度のほか、損壊物と損壊の程度、車両に積んでいた物(内容・数量・状況)、事故後に行った救護や危険防止の措置の内容等です。

  2. (2)状況確認と証拠の入手

    突然の追突事故被害に遭った後に、冷静かつ適切な対応をすることは難しいですが、なるべく事故現場の状況に関する証拠を保全しておくべきです。追突事故の経緯を確認し、お互いの車の位置関係や損壊具合、路面のブレーキ痕などについて、携帯電話のカメラ等で撮影しておくとともに、ドライブレコーダーの有無や加害者の任意保険加入の有無についても確認しておくとよいでしょう

    また、追突してきた加害者の氏名や連絡先、勤務先、車両のナンバーも確認し、記録します。この際、運転免許証を提示してもらうと確実です。

    さらに、目撃者がいれば協力を頼んでおきましょう。連絡先と氏名を聞き、証人となってくれるように依頼しておくとなおよいです。

    注意すべき点として、その場では決して示談をしないということが挙げられます。
    一度当事者同士で話をまとめてしまうと、時間がたってから身体や車の思わぬ不調が見つかったとしても、示談の内容を覆すことは困難です。そのため、加害者がどのようなことを言ってきたとしても、事故直後に当事者同士で示談をすべきではありません。

  3. (3)速やかな受診と通院

    自分で大したケガはしていない、元気だと認識(誤信)していたとしても、ケガと交通事故との間の因果関係(症状が他ならぬ当該交通事故により発生したという関係性)に疑義が生じないよう、直ちに病院を受診し、検査を受けておきましょう。

    追突事故の場合、むち打ち症(頸椎捻挫)のほか、脳出血などが生じていることもありますが、これらは、時間がたってから具体的な症状が現れるケースも決して珍しくありません。その一方で、時間がたってから初めて受診したのでは、交通事故によって生じたケガか否かについて保険会社から争われてしまうことがあります。

    そのため、ケガが当該交通事故によって生じたという点について疑義を生じさせないためにも、できるだけ速やかに受診をすることが望ましいです。

  4. (4)自分の加入している保険会社への連絡

    相手方の保険会社とのやり取りとは別に、自分の加入している保険会社にも事故の発生を連絡しておくようにしましょう。保険契約の内容次第では保険金が受け取れることもありますし、一定の助言を求めることもできます。

    また、ご自身やご家族が加入している保険に弁護士費用特約が付いているかどうかもあらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。弁護士費用特約が付いている場合、弁護士費用についてご自身の負担なく弁護士に委任することができるケースがほとんどです。対応を弁護士に一任すると、ご自身は治療に専念できます。また、適切な金額の賠償金を受け取れるよう交渉を任せることができるというメリットもあります。

2、追突された場合に請求できる慰謝料

被害者が請求できる慰謝料と、慰謝料の金額計算方法についても確認しておきましょう。

  1. (1)交通事故の被害者が請求できる慰謝料とは

    慰謝料とは、被害者の精神的な苦痛を埋め合わせるための賠償金を指します。これは、壊れた車の修理費やケガの治療費などとは別に請求することができます。

    交通事故に遭った場合に請求可能な慰謝料としては、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料が考えられます。

    入通院慰謝料とは、事故によって入院や通院をしなければならなくなったことなどの精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。また、後遺障害慰謝料とは、事故が原因の症状が後遺障害として認定された場合、後遺障害が残ったこと自体(精神的苦痛)に支払われる賠償金を指します。

  2. (2)慰謝料額を算定する基準

    慰謝料はあくまでも心の苦しみに対する賠償なので、車の修理費やケガの治療費のように明確に算定することはできません。また、状況が同じであっても当事者の主張の強度や判断する人によって慰謝料額が異なるようでは、不公平が生じます。

    そこで、負ったケガの重症度、入通院した日数などをもとに慰謝料を算定する一定の基準が設けられています。慰謝料を算定するための基準として、「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」の3つが挙げられます。

    自賠責基準とは、交通事故被害者に対する最低限の補償を目的とした自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に規定される基準です。あくまで「最低限の補償」であるため、3つの基準の中ではもっとも慰謝料額が低くなります。

    任意保険基準とは、各任意保険会社が独自に定める基準です。公開されていませんが、一般的には、自賠責基準と弁護士基準の中間程度の慰謝料額とされています。

    そして、裁判所基準(弁護士基準)とは、交通事故事件の過去の裁判例を集積して作られた基準です。3つの基準の中ではもっとも慰謝料額が高くなる傾向にあります。

3、適切な慰謝料を受け取るためにすべきこと

事故後に適切な対応をしていないと、まだ治療が必要な段階であるにもかかわらず、相手方保険会社による治療費の支払いを打ち切られたり、適切な慰謝料を受け取れなくなったりすることがあります。そのような事態に陥らないよう、注意しておくべき点は以下のとおりです。

  1. (1)しっかり病院へ通院する

    相手方保険会社は、通院期間や通院頻度、実際の症状、後遺障害と事故との因果関係などについて総合的に検討したうえで慰謝料額を算定するため、継続的な通院実績が重要となります。

    また、万が一、事故の際に負ったケガが原因で後遺症となってしまった場合、後遺障害等級の認定を申請することとなりますが、この審査は、書面審査によって行われることとなるため、客観的な通院歴や診断書等が非常に重要となってきます。そのため、あまり通院していないとなると、慰謝料算定のときのみならず、後遺障害等級の認定の際にもそのことが不利にはたらくこととなります。

    したがって、本人がいくら痛いと訴えたとしても、病院へ通院していない場合は、適切な慰謝料を支払ってもらえないばかりか、後遺障害等級の認定がなされなくなる可能性が高くなります。また、前述したとおり、事故から初診までに長時間空いてしまうと、身体の不具合の原因が事故以外にあるかもしれないという疑いが生じるため、因果関係を争われた際に不利となる可能性があります。

    そのため、事故に遭った場合は、できるだけ早く専門医で診察を受け、通院を継続するようにしましょう

  2. (2)弁護士に相談する

    たとえ適切に通院していたとしても、慰謝料をきちんと受け取れるよう交渉することは、一般の方にとっては困難です。

    また、保険会社が慰謝料の算定時に用いる任意保険基準は、自賠責基準よりは得られる慰謝料が多いものの、弁護士基準よりは少なくなります。後遺障害等級認定についても、保険会社を通じて行う「事前認定」という方法では、適切な等級認定を受けられない可能性があります。

    しかし、弁護士が代理人として保険会社と交渉することで、慰謝料請求の際に弁護士基準を採用することができます弁護士基準によれば、任意保険基準に比べて慰謝料額が相当程度多くなることが見込めます
    また、後遺症となった場合も、適切な後遺障害等級の認定を受けられるよう全面的にサポートすることが可能です。

    追突事故の被害者になったときは、病院の診療を受けるのと並行して弁護士に相談するようにしましょう。弁護士費用特約を利用できれば、大半のケースでは、弁護士費用の負担なく弁護士に依頼することができます。

4、まとめ

追突事故の被害者になってしまった場合、適切な慰謝料を受け取るためにどのような対応をすべきかについてご説明いたしました。

とりわけ、追突事故では、事故直後は何もケガを負っていないように思えても、後から症状が出てくることが多々ありますので、一度なるべく早い段階で病院に行くようにしましょう。

追突事故の被害に遭った後の対応に不安のある方や、症状が残ってしまったという方、加害者への慰謝料請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士までご相談ください。事故後の適切な対応のアドバイスや示談交渉など、包括的なサポートをさせていただきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています