交通事故の過失割合が9対1!? 損害賠償が全額認められないときの対応
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群馬県警察のデータによると、令和3年中の群馬県高崎市内における交通事故発生件数は2310件でした。死者数は11人で、群馬県内では最も多い結果となりました。
交通事故は、どちらか一方のみではなく、お互いに過失(責任)が認められる場合があります。たとえあなたが「自分が被害者だ」と思っていても、ご自身に過失が認められる場合には、「過失相殺」によって請求できる損害賠償の金額が減ってしまうのです。
一方に交通事故の責任の大半があるものの、もう一方にも軽微な注意義務違反が認められる場合、過失割合が「9対1」と判断されることがあります。今回は、過失割合9対1の交通事故の例や、過失割合に納得できない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故における「過失割合」とは?
交通事故における「過失割合」とは、「事故の責任がどちらにどの程度あるか」を示す割合です。
たとえば、加害者側のみに過失(注意義務違反)があり、被害者側に全く落ち度がない場合は、過失割合が「10対0」となります。これに対して、被害者側にも一定の過失が認められる場合には、過失割合が「9対1」「8対2」「7対3」などと認定されます。
交通事故によって当事者に生じた損害は、過失割合に応じて分担することになります(過失相殺民法第722条第2項)。
- XとYがそれぞれ運転する自動車の接触事故
- Yのみに100万円の損害が発生
- XとYの過失割合は9対1
XとYに生じた損害の合計額は100万円です。
過失割合9対1に従い、Xが負担すべき損害額は90万円、Yが負担すべき損害額は10万円です。
実際には、Yのみが100万円の損害を負担している状態なので、XがYに対して90万円の損害賠償金を支払う義務を負います。
- XとYがそれぞれ運転する自動車の接触事故
- Xに40万円、Yに60万円の損害が発生
- XとYの過失割合は9対1
XとYに生じた損害の合計額は100万円です。
過失割合9対1に従い、Xが負担すべき損害額は90万円、Yが負担すべき損害額は10万円です。
実際には、Xが40万円、Yが60万円の損害を負担している状態なので、XがYに対して50万円の損害賠償金を支払う義務を負います。
2、交通事故の過失割合が「9対1」になるケースの例
交通事故の過失割合が9対1となるのは、事故の責任の大半が一方にあるものの、もう一方にも軽微な注意義務違反が認められる場合です。
過失割合9対1の交通事故の例を、いくつか見てみましょう。
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(1)信号機なし・劣後車と優先車の交通事故
信号機のない交差点で発生した交通事故において、交差する道路のうち一方が優先道路の場合、劣後車(優先道路ではない道路を通行していた側)の過失が9割、優先車の過失が1割となるのが原則です。
劣後車には徐行義務が課されているため(道路交通法第42条第1項)、交通事故に関して大きな過失(9割)が認められます。その一方で、たとえ優先車であっても、交差点では状況に応じて車両や歩行者などに特に注意して、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならないことが定められています(同法第36条第4項)。その結果、交通事故に関して若干の過失(1割)が認められるのです。
なお、当事者のいずれか一方に著しい過失または重過失がある場合には、過失割合が10%~20%程度修正されます。 -
(2)道路外に出る右折車と直進車の交通事故
右折して道路外に出ようとする自動車と、対向車線の直進車が衝突した交通事故の場合、右折車の過失が9割、直進車の過失が1割となるのが原則です。
右折して道路外に出ようとする場合、歩行者または他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがないことを確認する義務を負うため(道路交通法第25条の2第1項)、右折車に大きな過失(9割)が認められます。その一方で、直進車にも一般的な前方注意等の義務が認められるため、若干の過失(1割)が認められると判断されるのです。
なお、右折車が徐行しなかった場合や、ウインカーを出さずに道路外へ出ようとした場合などには、右折車側の過失が加算され、過失割合が10対0となることもあります。反対に、直進車側に30km/h以上の速度超過が認められる場合などには、直進車側の過失が加算されます。
また、当事者のいずれか一方に著しい過失または重過失が認められる場合には、過失割合が10%~20%程度修正されます。
3、過失割合に納得できない場合にすべきこと
加害者側の任意保険会社と示談交渉を行う際、任意保険会社は、過失割合についても提案してくるでしょう。
しかし、任意保険会社の提案する過失割合は、あくまでも独自に算定したものに過ぎず、客観的に正しいとは限りません。提案された過失割合に納得できない場合は、過失割合に関する証拠を集めて提示し、任意保険会社側に再考を求めることになります。
これまで解説したように、交通事故における過失割合は、事故の基本的な類型に加えて、さまざまな修正要素を考慮して決定されるものです。ご自身にとって有利な証拠を確保すれば、過失割合が1割、2割と変わってくるケースもありえます。
過失割合に関する証拠収集については、弁護士にご相談いただければ、事故の状況等を踏まえてアドバイスすることが可能です。
4、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼した方がよい理由
交通事故の示談交渉において、適正な金額の損害賠償を請求した場合には、以下の理由から弁護士へのご相談をおすすめします。
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(1)弁護士基準に基づく損害賠償を請求できる
交通事故の損害賠償算定基準には、自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準(弁護士基準)の3つがあります。
① 自賠責保険基準
自賠責保険から支払われる保険金額を算定する基準です。
② 任意保険基準
任意保険会社が独自に損害額を算定する基準です。
③ 裁判所基準(弁護士基準)
過去の裁判例に基づき、客観的な損害額を算定する基準です。
3つの算定基準のうち、自賠責保険基準が最も低額な設定となっています。それは、最低限の補償という位置づけであるためです。
なお、加害者側の任意保険会社は、任意保険基準による保険金額を提示するケースがほとんどです。任意保険基準は保険会社ごとに異なりますが、多くが自賠責保険基準と大きく変わらない設定となっていると考えてよいでしょう。
裁判所基準は、過去の裁判例に基づいて慰謝料などを算出する基準です。被害者にとって、実態に沿い、かつ客観的な損害額を算定できる基準といえます。状況によっては、提示された金額の倍以上の慰謝料を受け取れる可能性が出てきます。
ただし、裁判所基準で請求するためには、一定の法律に基づいた根拠が必要です。そのため、個人の方が裁判所基準で請求をしたくても保険会社は対応してくれません。事故に遭ってしまった場合は、まずは弁護士に対応をお任せください。弁護士であれば、裁判所基準に基づく適正な保険金の支払いを求め、毅然とした姿勢で相手方の保険会社と交渉することが可能です。 -
(2)すべての損害項目について漏れなく請求できる
交通事故によって生じる損害には、以下のようにさまざまな項目があります。
- 治療費
- 通院交通費
- 入通院慰謝料
- 休業損害
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
- 装具費
- 付添看護費
- 介護費
これらの損害を漏れなく把握し、加害者側に対して請求するには、弁護士によるサポートが役立ちます。
弁護士は、依頼者から丁寧にヒアリングを行い、埋もれがちな損害項目についても見逃さず、適正額による請求を行えるようにサポートします。 -
(3)正しい過失割合に基づく請求ができる
交通事故における過失割合は、損害賠償額に大きな影響を与えます。
過失割合が1割違うだけで、損害賠償額は数十万円・数百万円変わってくることもよくあるのです。
弁護士にご相談いただければ、事故の客観的な状況を分析して、依頼者にとって有利な事情を漏れなく反映し、適正な過失割合に基づく損害賠償請求を行います。 -
(4)示談交渉の時間的・精神的負担が軽減される
加害者側の保険会社と交通事故の示談交渉を行うことは、被害者の方にとって時間的・精神的に大きな負担となるケースが多いようです。
治療に専念していただくためにも、まずは弁護士にご依頼ください。弁護士があなたの代理人として、示談交渉を全面的に代行します。
依頼者の時間的・精神的な負担が大幅に軽減し、ケガの治療や日常生活に集中していただけるように、弁護士が親身になってサポートしますので、安心してお任せください。
5、まとめ
交通事故の過失割合は、請求できる損害賠償額に大きな影響を及ぼします。「9対1」という過失割合は、一見被害者側にとって比較的有利に思われるでしょう。しかし、事故の類型や修正要素などを考慮すると、客観的には「10対0」とすべき可能性もあります。
もし加害者側の任意保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、弁護士へのご相談がおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故被害者からのご相談を受け付けております。適正な金額の慰謝料を受け取りたい、示談交渉の負担を軽減したいとお考えの交通事故被害者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへご相談ください。
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