男女間の金銭トラブルも法的に解決できる? 状況別対応方法を解説

2020年11月06日
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男女間の金銭トラブルも法的に解決できる? 状況別対応方法を解説

高崎市では、男女間に起きた問題や金銭トラブルをはじめ、日常で起こりがちな問題に対応するための法律上の手続きや方法などを教えてくれる無料相談を実施しています。これらの無料相談では実際にトラブルの対応をしてもらえるわけではありませんが、必要に応じて利用を検討することもひとつの手です。

実際の対応を行える法律事務所においても、「付き合っていたときに貸したお金が返ってこない」というトラブルのご相談をいただくことがあります。そこで本記事では、高崎オフィスの弁護士が交際中に貸したお金を取り戻す方法、男女間の金銭トラブルを解決する方法を解説します。

1、男女間の金銭トラブルを解決しにくい理由とは?

個人間のお金の貸し借りは、トラブルの火種となり得るものです。中でも男女間の金銭トラブルは揉めることが多く、解決が難しい傾向にあります。

まずはその理由について解説します。

  1. (1)男女間でのお金のやり取りは借金なのか贈与なのか判別が難しい

    法律的には、交際中の男女がお金を貸し借りした場合でも、「お金を貸した」という消費貸借契約は成立し、借りた側は返済する義務を負います。

    借りた側が、「確かにお金を借りたし返済します」と認めていれば問題はありません。ところが、借りた側が、「借りたのではなくもらったのだ」と、贈与を主張した場合や「お金は受け取っていない。」と主張した場合には、問題は複雑になります。交際中の男女間でお金を貸し借りする場合、ほとんどのケースで借用書や契約書は取り交わしません。

    また、お金を貸すときも、「現金の手渡し」など、貸したことを証明する証拠が残りにくいことに加えて、男女間の交際のため「貸したものなのか」、「贈与したものなのか」を客観的に判断することが難しいのです。

  2. (2)勘違いをしやすい

    お金を貸した側は、貸したつもりでも、受け取った側は「もらった」と勘違いしているケースもあります。

    たとえば、恋人が、アーティストや作家活動によって働いていないため、「成功したら返してね」と言って一方が生活費を負担するというような事例です。この場合、お金を受け取っていた側は、「援助してもらった」と判断し、お金を渡していた側は、「将来返してもらうつもりだった」と考えていることがあります。

2、借用書がなくてもお金を返してもらえるのか

では、借用者がなくてもお金を返してもらうことはできるのでしょうか。法律の考え方を確認しておきましょう。

  1. (1)口約束でも契約は成立する

    返済を求めようとしても、「借用書」や「金銭消費貸借契約書」、「念書」などの書類がないから何も請求できないと考えている方もいると思います。しかし、原則として、お金を貸すときに、それらの書類を作成していなくても、返してもらう前提で金銭を貸したという約束は成立します。

    なぜならば、法律上、書面に残していなくても口約束だけで契約が成立するからです。

  2. (2)返済を求めることもできる

    前述のとおり、書面がなくても契約は成立します。したがって、書面が残っていなくても、相手方に返済を要求することができます。

    もちろん、相手もお金を借りていることを認めていれば問題ありません。しかし、相手が認めないときは、お金を貸したことを客観的に立証できる証拠を求められることになります。
    相手方が、お金を借りたことを認めない場合、「借用書」「金銭消費貸借契約書」のような客観的な証拠がなければ、3以下で述べるような証拠に基づいて、請求をすることになります。

3、借用書以外で証拠となり得るもの

では、借用書以外でお金を貸していたことを立証できる証拠にはどのようなものがあるのでしょうか。具体例を交えながら確認していきましょう。

  1. (1)送金履歴

    まず重要なのは、確実にお金を受け取ったことがわかる証拠です。「そもそもお金を受け取っていません。」と言わせないために、銀行の振り込み履歴や、出金履歴などを用意しておきましょう。現金を手渡していた場合は、証拠が残りにくいですが、家計簿などをつけていれば「働いていないのに生活が成り立っていたのは、お金を貸していたからだ」と主張することができることもあります。

  2. (2)メールやSNSなどの記録

    「お金を貸してほしい」
    メールやSNSアプリなどで、このように相手方から申し入れがあった場合は、それがお金を貸したことの証拠になり得ます。
    機種変更等で記録が失われる前にスクリーンショット等で確実に保存しておきましょう。

  3. (3)念書

    借用書といったあらたまったフォーマットでなくてもメモ書き程度の、「50万円借ります」といった念書もお金を貸していたことの証拠になり得ます。

  4. (4)音声データや動画

    書類や振り込み履歴などが一切ない場合でも、借金を申し込むときの音声データや動画データがあれば証拠になり得ます。また、お金を渡したときに録音や録画をしていなくても
    電話で督促をする際に、「ちゃんと返すよ」などの発言した録音などがあれば、借金をしていることを認めたことになりますので、証拠となり得ます。

4、貸したお金を返してもらうまでの手順

お金を貸していた証拠が残っていても、すぐに相手の財産や給与を差し押さえることはできません。以下の手順に従って返済を求めます。

  1. (1)電話やメール等による督促

    まずは、貸している金額を明示した上で、電話やメール文書の発送などの手段で借金の返済を求めます。この際に注意しなければならないのが、相手の勤務先にバレるような形で督促をしないことです。勤務先に督促状を送付したり、本人以外に借金の話をしたりすると、名誉毀損等で責任を問われるおそれがあります。また、脅迫や恐喝とみなされるような言動も厳禁です。
    自宅へ訪問するという方もいますが、別のトラブルになる可能性も高いので、あまりおすすめできません。

  2. (2)内容証明郵便の送付

    電話やメール、文書による督促に応じない場合は、内容証明郵便を送付します。内容証明郵便は、郵便局が送付した内容文書を保管しておき、内容を証明してくれるというものです。内容証明郵便に支払いを強制する効力はありませんが、内容証明郵便という見慣れない手紙が送付されることで、心理的圧力を与えることができます。
    また、内容証明郵便を送付する際は、配達証明をつけることでいつ督促したかを明確にすることができます。

  3. (3)訴訟提起および強制執行

    相手方が、内容証明郵便を送付しても反応しない場合は、訴訟提起を検討します。訴訟提起後、相手方が訴訟期日に出頭しない場合や相手方の反論が認められない場合には、貸金を払うことを認める判決が出されることになります。ただ、判決が出たとしても、相手方が当然支払うわけではありません。相手方が、任意で支払わない場合には、「強制執行」を申し立てて、給与や財産の差し押さえることになります。
    相手方に財産等がない場合には、強制執行をしても差し押さえる財産がないことになり、結果としてお金を回収することができません。
    そのため、相手方の資力や財産を考慮しながら、訴訟提起をするか否か検討すべきでしょう。

5、男女間の金銭トラブルを弁護士に依頼したほうがよいケース

これまでお話したように、男女間の金銭トラブルは解決が難しい問題です。弁護士に依頼したほうが、確かに証拠集めの面や、裁判手続きをスムーズに進められるなどのメリットがあるでしょう。

しかし、貸している金額によっては費用倒れになってしまうケースが多々あります。弁護士を依頼すべきケースや、自身で対応できるケースについて解説します。

  1. (1)自身で対応したほうがよいケース

    まずは、借金の金額が少ない場合には、弁護士費用との兼ね合いからご自身で対応したほうがよいでしょう。また、相手があなたから借金をしていることを認め、支払いを約束している場合には、弁護士を入れずにお金を受領したほうがスムーズです。
    さらに、相手があなたから借金をしていることとその金額に同意していて、貸している金額が60万円以下であれば、「少額訴訟」と呼ばれる訴訟制度を利用できます。裁判所で行う手続きが簡素になっていて原則として提訴した当日に判決が下るため、早期の決着が可能ですし、個人での手続きが十分可能です。

  2. (2)弁護士に依頼したほうがよいケース

    相手とそもそも貸したものなのかプレゼントしたものなのかどうかなどで争いがある場合は、訴訟提起せざるを得ないことがほとんどです。訴訟となる場合は、弁護士に依頼するほうがよいでしょう。ただし、訴訟費用のほかに弁護士費用もかかることになるため、費用倒れになってしまう可能性があります。訴訟となれば、判決が下るまで年単位の時間がかかることになるケースが多いため、精神的な負担も避けられません。慎重な検討が必要になるでしょう。

    また、貸している金額が大きいケースも弁護士に依頼することをおすすめします。多くの方は、弁護士からの電話や文書を受け取ると、そのプレッシャーから「返済しなければ」と考え、返済に応じるケースもあります。

    もちろん、弁護士に依頼することで、借金を回収するための法的手段も講じやすくなります。弁護士は、段階を踏んで、督促を行い最終的には訴訟を視野に入れて交渉をしますので、支払いを強く求めることができるのです。

6、まとめ

交際していた男女間で借金をしていた場合、多くのケースで、「貸した」、「借りていない」の水掛け論となり、請求が難しくなります。しかしながら、法的には口約束であっても消費貸借契約は成立しますので、請求すること自体は可能です。

請求する際は、相手が否定したときに備え、お金を確かに貸していたことが客観的にわかる証拠を集めておくべきでしょう。証拠を用意した上で、相手に督促を行い、相手方が返済に応じない場合には、最終的に訴訟で支払いを求めることになります。消費貸借契約書がない場合でも、状況を詳しく確認していけば証拠になり得るものが存在することが少なくありません。

「貸した証拠はないけど返してほしい」、「返済すると言いながら返済してもらえない」といったお悩みを抱えている方は、ひとりで悩まず、まずはベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています