横領罪で逮捕されてしまったら! 法定刑や示談などの疑問に弁護士が回答します

2019年09月25日
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横領罪で逮捕されてしまったら! 法定刑や示談などの疑問に弁護士が回答します

横領罪とは、自らが占有する他人の財産や金品を横取りする罪を指し、「業務上横領罪」のほか、「単純横領罪」「遺失物等横領罪」に分類できます。ここでは、それぞれの罪の内容や科せられる刑罰、横領罪に問われた際の示談の方法について高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、横領罪の種類と法定刑

横領とは、簡単に言えば、人から預かっていた金品や物を、相手の許可を得ず勝手に自分の物にしてしまうことを指します。

横領罪は、横領した物を預かることになった経緯などによって単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪に分けられ、それぞれ罰則の内容が異なります。それぞれの構成要件や法定刑について知っておきましょう。

  1. (1)横領罪(単純横領罪)

    「横領罪」は刑法第252条に定められています。他の横領罪と区別するため単純横領罪とも呼ばれることもあります。「自己の占有する他人の物を横領した」場合に問われる罪で、法定刑は「5年以下の懲役」です(刑法第252条第1項)。また、自身の所有する物であったとしても、公務所から保管を命じられた物を横領した場合は、同様の罪に問われる可能性があります(刑法第252条第2項)。

    たとえば、知人から借りていた物を勝手に売却した場合などは単純横領罪にあたる可能性があります。

  2. (2)業務上横領罪

    業務上横領罪は刑法第253条に定められている犯罪です。「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に問われる罪で、法定刑は「10年以下の懲役」と定められています。

    会社の経理担当者が会社の売上金を横領して自己の借金返済にあてた場合などは業務上横領罪にあたる可能性があるでしょう。

  3. (3)遺失物等横領罪

    遺失物等横領罪は刑法第254条に定められている犯罪です。「遺失物」等の「占有を離れた他人の物を横領した」場合に問われる罪で、法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」と定められています。

    遺失物所有者との委託信任関係がないため、他の横領罪と比べ軽い処分となっています。たとえば、道に落ちていた財布や貴重品をそのまま持ち去った場合などは、遺失物等横領罪にあたる可能性があります。

  4. (4)窃盗罪や背任罪との違い

    横領罪と似ている罪状に、窃盗罪と背任罪があります。

    ●窃盗罪
    窃盗罪は刑法第235条に定められており、「他人が占有している財物」を盗み取る犯罪のことです。

    横領罪と窃盗罪の違いは、対象物を占有している主体です。対象物を他人が占有している場合は窃盗罪、許可を得て自己が占有している(預かっている)場合は横領罪に該当します。なお窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」と定められています。

    ●背任罪
    背任罪は刑法第247条に定められています。

    背任とは、他人のために事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図るまたは本人に損害を加える目的で背任行為により本人に財産上の損害を加えたときに成立する犯罪で、「5年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に処せられます。

    たとえば仕入れ担当者が、取引先から自分に何らかの利益を約束させ、本来の見積もりより水増しした額で購入し取引先に利益を与えて、自分の会社が不利益を被った場合などは背任罪にあたります。

2、横領罪には示談が有効

単純横領罪や業務上横領罪で有罪になったときは、罰金刑の設定がないため、懲役刑という重い罰則が科せられます。もしも起訴され、有罪判決が下った場合は、執行猶予が与えられなければそのまま実刑となっていまいます。

しかしながら、横領罪は、示談が成立すれば、被害者が被害届を取り下げてくれる可能性もあります。

  1. (1)横領罪に対して示談が有効である理由

    特に業務上横領罪は、多くの場合、従業員による内部犯行であることから、事件を公にすることで企業イメージを低下させる要因にもなりかねません。

    刑事事件における示談では、加害者は被害者に対して謝罪と賠償を行います。同時に、被害者には示談書において「罪を許す」「処罰を望まない」という意味を示す「宥恕(ゆうじょ)文言」を入れてもらうことを目指すことになります。

    なぜなら、警察や検察は、被害者の処罰感情の有無を非常に重視するためです。被害者が処罰を望まないことを明言している状態であれば、立件の必要はないと判断される可能性が高くなるでしょう。

    示談の成立は早ければ早いほどメリットがあります。逮捕前に示談が成立すれば事件化を避けられる可能性があるでしょう。たとえ示談交渉に入る前に逮捕されてしまっても、そのあと示談が成立すれば、不起訴となる可能性があります。

  2. (2)示談が成立できない場合

    横領事件では、そもそもお金に困っていたから横領したというケースもあり、示談金を支払えないことが少なくありません。

    業務上横領罪は、露見するまで複数回にわたり行われる場合が多く、規模によっては立証に時間がかかるケースもあります。逮捕にいたる前に、可能な限り弁済のための方策を尽くしましょう。

    たとえ捜査が終了するまでに必要な示談金すべてを用意できなかったとしても、できる限り弁済の努力をすることが大切です。それらの努力も、起訴された場合、量刑の軽減に考慮される可能性はあります。

3、横領事件で弁護士を依頼するメリット

横領事件で弁護士を依頼するメリットはどのようなものがあるでしょうか。

  1. (1)示談交渉のサポート

    先述の通り、横領事件では示談交渉が有効です。なるべく早期に示談を成立させることで、不起訴処分の獲得に向けて動きます。

    また全額の弁済が難しい場合でも、相手が示談に応じてくれるよう、現実的な支払い方法についても相談することができます。これらの交渉をあなたの代わりに行えるのは弁護士に限られます。

  2. (2)逮捕後のサポート

    仮に逮捕されてしまった場合、逮捕後は48時間以内で警察の取り調べを受けます。その後検察へ送致され、24時間以内で検察の取り調べを受けます。検察によって、引き続き身柄を拘束しての取り調べが必要と判断された場合は、検察から裁判官に対して「勾留(こうりゅう)請求」がなされます。

    勾留決定がなされると10日間の身柄拘束が許可されます。勾留延長を含め逮捕から最長23日間自宅に帰ることができない可能性もあるのです。

    逮捕後の72時間は家族であっても面会することはできません。しかし、弁護士に限っては、唯一いつでも接見することが可能です。

    取り調べでの態度や対応によって、その後の警察や検察の判断に大きく影響することがあります。弁護士のサポートがあれば、家族との連絡を依頼したり、早期釈放につながる弁護活動を受けたりすることができるでしょう。

    なるべく早く弁護士を依頼することを強くおすすめします。

  3. (3)公判での弁護活動

    起訴された場合、刑事裁判で重すぎる量刑が科されないように、証拠収集や反省を示す意見書などを作成します。また、被疑者段階から引き続き示談交渉を進めていくことになります。有罪となっても、執行猶予を獲得できれば刑務所に行くことはありません。
    そして、起訴後であれば、保釈請求をしたうえで、早期の身柄解放を目指すことになります。

4、まとめ

横領は、どのような理由があろうと人の信頼を裏切る行為です。被害者に対して誠意のこもった対応が求められます。

示談交渉や逮捕後の弁護活動をする場合は、弁護士の知見がなければ対応が難しい可能性が高いでしょう。あなたやあなたの家族が横領の罪を犯してしまったときは、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへ相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています