盗撮容疑で逮捕されたとき問われる罪は? 迷惑防止条例など解説

2021年08月11日
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盗撮容疑で逮捕されたとき問われる罪は? 迷惑防止条例など解説

令和3年7月、群馬県前橋警察署は、県総合交通センターの事務室に盗撮目的でスマホを設置した男を、群馬県迷惑行為防止条例違反の容疑で逮捕したという報道がありました。

「家族が、盗撮で逮捕された…」 もし、そのような事態に陥ったら、あなたはどうしますか。大変不安になることは当然のことです。今回は、盗撮で逮捕された場合の流れと、少しでも早く日常を取り戻すためにあなたが取るべき行動を、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、盗撮はどのような罪に問われるのか

盗撮は、どのような行為で、何の法律または条令に反した犯罪なのか、まずは理解しておく必要があるでしょう。

前提として、刑法には「盗撮罪」という罪名は存在しません。盗撮を行った状況や環境、被写体などによって、異なる罪に問われることになります。

  1. (1)迷惑防止条例違反

    「盗撮」とは、「迷惑行為」のひとつとしてみなされることがあります。そのため、各都道府県によって定められている「迷惑防止条例」において、取り締まりを受ける可能性があります。

    迷惑防止条例は、住民生活の平安を保持することを目的に都道府県ごとに設置されている条例です。群馬県で行われた盗撮行為は、かつては「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」によって取り締まられていました。しかし、令和3年3月に行われた改正により、「群馬県迷惑行為防止条例」へ名称が変更され、令和3年7月1日より施行されています。

    盗撮は、準備行為を含め「卑わいな行為の禁止」を明示する群馬県迷惑防止条例第2条の3第1項第2号から3号、さらに同条第2項において禁止されています。

    具体的には、以下の場所と行為が規制対象です。
    <場所>
    公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、または出入りする場所又は乗物など
    <行為>
    写真機やカメラ、鏡、透視撮影機などを用いて、衣服等で覆われている方の下着もしくは身体の映像を見、もしくは撮影し、またはこれらの行為をしようとして、写真機等を差し向け、若しくは設置すること

    なお、盗撮により、群馬県迷惑防止条例違反として有罪となった場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(同条例第10条第1項)、常習犯であったならば「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(同条例第10条第2項)、という罰則を受けることになります。

  2. (2)軽犯罪法違反

    軽犯罪法とは「国民の日常生活における卑近な道徳規範に違反する比較的軽微な犯罪とこれに対する刑罰」を定めたものです。この軽犯罪法の第1条第23号に、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見たもの」が処罰対象として規定されており、盗撮行為に伴うのぞき見が、軽犯罪法違反になる可能性があります。

    軽犯罪法に違反すると、1日以上30日未満の期間で拘束される「拘留(こうりゅう)」、または1000円以上1万円未満の範囲で金銭を徴収する「科料(かりょう)」によって処罰されます。

  3. (3)その他の法律に定められた罪

    盗撮を行った状況によっては、刑法犯として逮捕される場合があります。具体的には、以下のような罪が問われることになります。

    ●住居侵入罪、建造物侵入罪
    たとえば、盗撮のためにビデオカメラを被害者の部屋に仕掛けた場合、犯人は一度、カメラを仕掛けるために被害者の部屋に侵入していることになります。 これは刑法第130条で規定する住居侵入などに当たるため、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金に処される可能性があります。

    ●児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」といいます。)
    盗撮の対象となった被害者が18歳未満であった場合、児童ポルノ法が適用される可能性もあります。児童ポルノ禁止法でいう児童とは18歳未満の未成年を指しますので、中学生・高校生も対象になります。男女も問いません。

    近年では「児童ポルノ」に関する規制も強化されており、盗撮による児童ポルノの製造行為も新たな処罰対象に加わりました(児童ポルノ法第7条第5項)。「盗撮による児童ポルノ製造罪」は、児童ポルノに該当する、児童のわいせつな姿態をひそかに写真撮影することなどによって、児童ポルノを製造(盗撮)した場合に成立する犯罪です。

    盗撮による児童ポルノ製造罪の刑罰は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています(児童ポルノ法第7条第5項、第2項)。盗撮の内容によっては、非常に重い刑罰が下ることもありうるのです。

2、盗撮で逮捕された家族はどうなる?

警察からの連絡を待つ身としては、盗撮で逮捕された家族が具体的にどのような状態に置かれているのかなど、わからなければわからないほど、不安が増すことでしょう。

盗撮によって逮捕された後の流れを解説します。

  1. (1)逮捕後の取り調べ

    犯罪行為をした容疑がある者は、「被疑者(ひぎしゃ)」と呼ばれる立場となります。警察官に逮捕されると留置施設に入ることとなり、警察署で取調べなどが行われることになります。

    警察は、捜査のために当事者、事件の関係者の話を聞くことで証拠や情報を集める必要があります。また、警察は、逮捕から48時間以内に検察官に事件を送致する手続をとらなければならないと決められています。この間は、被疑者による証拠隠滅などを防ぐため、家族であっても面会が制限されます。自由な接見が認められているのは、弁護士だけとなります。

  2. (2)検察への送致・勾留

    警察での取り調べによって、罪を裁く必要があると判断されたときは、事件と被疑者の身柄は検察に送致されることになります。

    検察官は、警察官から送致された事件について、留置の必要があると判断した場合には、送致後24時間以内に裁判官に勾留請求をしなければならないと決められています。この期間も、やはり家族は面会することはできませんが、弁護士の接見は認められています。

    検察によって、さらに身柄拘束を続けて追加の捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要と判断された場合は、裁判所に対して「勾留請求」が行われます。これが認められると、さらに追加で10日間、最長20日間、身柄を拘束されてしまいます。

  3. (3)起訴・不起訴の決定

    送致・勾留された被疑者に対し、検察は勾留期間内に、起訴するか、それとも不起訴とするかを決定します。

    起訴の決定は、証拠や犯罪行為を認めただけでなされるわけではありません。たとえ罪を認めたとしても、被害者との示談が成立し被害者の処罰感情がないケースや、被疑者が深く反省しているなどの情状まで考慮し、判断されることになります。不起訴となれば、晴れて自由の身となり、前科がつくことはありません。

    捜査の結果、起訴されることになったときは、約1ヶ月後に刑事裁判が開かれます。同じ起訴でも、「略式起訴」の際は直ちに身柄が解放されますが、「公判請求」をされているときは、保釈が認められない限り、盗撮事件についての裁判が終了するまで勾留され続けることになります。

    なお、起訴されて有罪になれば、たとえ軽微な罰金刑であろうと、「前科」がつくことになります。前科がついてしまうと、経歴上や渡航時など、将来にわたり影響を残す可能性があります。

3、少しでも早く日常を取り戻すためにできることは

盗撮をして逮捕されると、状況によっては、最長23日間ものあいだ、身柄を拘束されてしまいます。長期間の身柄拘束によって受ける影響は、意外と大きなものです。

あなた自身が心配に思うことはもちろん、仕事などへの影響は避けられないでしょう。周囲に知られてしまう可能性も非常に高まります。さまざまな不安を抱えることになることは明らかです。家族として、少しでも早く日常を取り戻すためにできることを解説します。

  1. (1)逮捕後72時間がカギ

    前述のとおり、長期拘束を避けるためには、可能な限り早く、具体的には、「逮捕から48時間」、さらに「送致から24時間以内」の釈放を目指す活動が必要となります。しかしこの間、家族では被疑者と面会することはできません。

    しかし、弁護士であれば、逮捕段階から、休日や受付時間外でも、1日何回でも、時間の制約がなく、警察官の立ち会いなしに面会し、被疑者と面会することができます。

    家族が逮捕されたときは、できるだけ早く弁護士に連絡することをおすすめします。早期に弁護士が話し合うことができれば、被疑者自身を不利にするような発言をしないよう、アドバイスすることもできます。

    また、逮捕されたことによって被疑者は、精神的に不安定になることもあるでしょう。被疑者の味方である弁護士が、直接コミュニケーションを取り、今後の見通しなどを伝えることで精神面への負担を減らすこともできます。さらに、職場への連絡をどうするか、どのような事件だったのかなど、家族が知っておきたいことを、弁護士が代わりに確認することも可能です。

  2. (2)まずは示談成立を目指す

    被疑者が、盗撮した事実を認めているとき、長期にわたる身柄の拘束や起訴を回避するためには、「被害者との示談」に向けて動く必要があるでしょう。

    刑事事件における「示談成立」とは、多くのケースで加害者が被害者に対して謝罪と損害賠償を行い、被害者は加害者に対して「罪を許す」「加害者の処罰を望まない」などの「宥恕(ゆうじょ)」を行うことを目指します。

    示談成立のタイミングは、早ければ早いほど、被疑者の将来に大きなメリットをもたらします。たとえば、示談成立時に告訴しないことなどを約束して入れることができれば、逮捕されない可能性が高まります。また、逮捕されたとしても、示談が成立していれば、検察への送致や起訴に至らない可能性が高まるほか、万が一起訴されたとしても、減刑を考慮する材料になると期待できます。

    示談交渉そのものは、加害者本人や加害者の家族でも行えるものです。しかし、盗撮は犯罪です。よって、被害者と当事者の家族の多くが、加害者や加害者の家族との接触を望みません。無理に示談を進めると、被害者をさらに逆上させる危険性もあるでしょう。弁護士に示談を依頼することで、スムーズな解決を目指すことができます。

  3. (3)家族の逮捕を知ったらすぐに弁護士へ

    「家族が逮捕された」という事態に陥ると、責任感が強い方ほど、ひとりで何とかしようとする傾向があるかもしれません。しかし、少しでも早く事件を解決し、日常を取り戻すためには、弁護士相談することが近道となります。

    弁護士に相談することは、本人や家族にとって最善策を選択する機会となると同時に、捜査がスムーズに進む手助けにもなります。捜査が行き詰まれば、警察や検察は職場へ連絡することもありますので、弁護士があいだに入ることによって職場への連絡も回避できるかもしれません。状況によっては、職場との連携を図ることで、早期身柄開放に向けた弁護活動を行うケースもあります。

    なお、盗撮が事実でないならば「無実の証明」をする必要があるでしょう。状況によっては、起訴を避けることは困難となるため、裁判で証明することとになります。

    刑事事件においては、弁護士の知識と経験、それから精神的サポートが必要不可欠と考えて対応することをおすすめします。

4、まとめ

盗撮は、いうまでもなく犯罪です。しかし、あなたにとって大切な人が「逮捕された」と連絡があれば、落ち込んでいる時間やためらっている時間はありません。「逮捕から勾留が決まってしまう最長72時間」という限られた時間の中で、まずは何らかの手を打つ必要があるためです。

長期拘束の回避や不起訴を目指して被害者との示談交渉を行うなど、少しでも早く日常を取り戻すための対応は、個人だけではできることに限りがあります。弁護士による弁護活動の有無によって、結果が大きく異なるケースは少なくありません。

「家族が逮捕された」と警察署から連絡が入り、動揺されている方は、ひとりで抱え込まず、まずはベリーベスト法律事務所 高崎オフィスで相談してください。弁護士が適切な弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています