盗撮した後日逮捕状を持った警察が来る可能性と事件の流れを解説

2021年03月25日
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盗撮した後日逮捕状を持った警察が来る可能性と事件の流れを解説

令和2年9月、群馬県警太田署が、盗撮をしたとみられる太田市内に住む男を県迷惑防止条例違反容疑で逮捕したという報道がありました。

当然ながら、盗撮は犯罪であり、許されないことです。しかし、盗撮を行ってしまったとして、その場では捕まらなかったがこの後どうなるのか不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

今回は、盗撮における逮捕の可能性と、逮捕される前にできることについて高崎オフィスの弁護士が解説いたします。

1、盗撮した後日に逮捕されるケースとは

逮捕の基本原則として、日本国憲法第33条において、逮捕にはあらかじめ司法官憲(裁判官)が発する令状(逮捕状)があることを前提としています。逮捕状の有無・発行時期により逮捕方式が異なり、「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3つに分けられます。

  1. (1)通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の違い

    「通常逮捕」は、裁判官の発する逮捕状に基づき、行われる原則的な逮捕方式です。検察官または警察官が「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕する」と定められています(刑事訴訟法第199条第1項)。なお、逮捕状が発せられる場合とは、検察官や警察官の請求により、裁判官が、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるとき」に発せられ、明らかに逮捕の必要がない場合には、逮捕状を発することはありません(刑事訴訟法第199条第1項)。犯行時や犯行直後ではなく、後日逮捕される場合は、この通常逮捕がなされることとなります。

    「現行犯逮捕」とは、実際に犯行中であるか、犯行直後であることを直接知覚しうる状況にあるとき、逮捕状を要せず犯人を逮捕する場合をいいます(刑事訴訟法第212条、)。現行犯逮捕の場合は、警察官等でなくても逮捕することが可能です(刑事訴訟法第213条)。たとえば、実際に、盗撮している際に、目撃者等から取り押さえられる場合が考えられます。

    「緊急逮捕」とは、検察官、検察事務官または司法警察職員に限り、殺人などの重大な罪を疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速性を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき、逮捕の理由を告げればその者を逮捕できる方法です(刑事訴訟法第210条)。この場合、直ちに、裁判官に対して逮捕状を求める手続きをしなければなりません。盗撮のみのケースであれば、緊急逮捕の要件を満たさず、緊急逮捕されることはないでしょう。

  2. (2)通常逮捕の要件

    刑事訴訟法では、通常逮捕のための要件は、原則として、以下の2つをあげています。

    • 「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき(刑事訴訟法第199条第1項)」
    • 逮捕が必要であると認められる場合(刑事訴訟法第199条第2項但書)


    検察官または司法警察員の請求により、裁判官が、上記の条件を満たしていると判断した場合、逮捕状が発せられることになります。

  3. (3)現行犯以外で盗撮が捜査される可能性

    現行犯逮捕さえ免れたら、盗撮で捜査の手が及ぶことはない、と考えることは早計です。前項の要件を盗撮に当てはめて考える必要があります。具体的には、「盗撮をしたと疑える十分な理由があり、かつ逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合」に通常逮捕される可能性があるといえます。そのため、盗撮の嫌疑がかけられている状態で逃走を図り、捜査機関からの出頭要請に応じないでいると、より逮捕の可能性が高まると考えられるでしょう。

    実際には、冒頭で紹介したケースのように、物証が出てきたり、被害届を提出されたりすることで警察が事態を認知すれば、捜査は開始されます。その捜査過程で、犯行が疑われる人物を「被疑者(ひぎしゃ)」と呼びます。

    また、近年は駅や街中に防犯カメラが多数設置されています。スマートフォンなどを使って女性のスカートを盗撮している姿が監視カメラに残っていて、被疑者の身元が判明し逮捕にいたるケースもあります。たとえば、盗撮の現場が駅であれば、防犯カメラも多数あり、客観証拠も集まりやすく、捜査の手が及ぶことは十分に考えられます。

2、盗撮容疑がかかったら何が起こるのか?

盗撮事件を認知した警察は、どのような行動を起こすのでしょうか。現行犯逮捕であればそのまま警察に連行され、取り調べが始まります。しかし、盗撮行為をした当日、逮捕されなかったときは、どうなるのかを知っておきましょう。

  1. (1)被疑者に任意出頭を求め、取り調べを行う

    捜査によって被疑者が特定された場合、まずは警察から出頭要請を受けるケースが多々あります。つまり、任意の取り調べに応じるよう要請されることが多いでしょう。取り調べは「任意」ですので、拒否することは法律上では可能です。

    しかし、すでに証拠もある状態の被疑者が任意の取り調べの拒否を続けていると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあり、逮捕の必要性があると判断される可能性があります。結果、前述のとおり逮捕状を請求したうえでの逮捕に踏み切られてしまう可能性があることは否定できません。

    警察の要請に応じて被疑者が出頭し、犯行を認め、逃亡や証拠隠滅のおそれがないとみなされたら、逮捕状は請求されず、取り調べ後そのまま家に帰ることができるでしょう。このような場合、「在宅事件扱い」として、身柄は拘束されずに捜査は継続します。

    もし身に覚えがなく、その証明ができるのであれば、この時点で嫌疑なしとして自分と事件の関わりが完結する可能性もあります。

    しかし任意出頭・取り調べに応じることが不安な場合は、すぐに弁護士に相談することを強くおすすめします。取り調べ前に弁護士からアドバイスを受けることによって、万が一、逮捕や勾留にいたった場合にも、迅速に釈放に向けて弁護活動を開始することができます。また、取り調べに立ち会うことはできませんが、出頭の際に弁護士が同行することも可能です。

  2. (2)逮捕状に基づいて逮捕される

    警察の捜査の結果、逮捕による身柄拘束と取り調べが必要だと判断した場合は、裁判官に逮捕状を請求します。これが認められ逮捕状が発行されると、通常逮捕が実施されます。

    警察は、被疑者の自宅に向かい、被疑者に対して逮捕状を見せたうえで、逮捕状が発せられている旨と、被疑事実、罪名を告知し、被疑者を逮捕します。

    逮捕後48時間は警察で取り調べが行われます。この間は、基本的に家族であっても面会はできません。例外として、弁護士のみ、自由に接見が行えます。その48時間以内で、警察はこの事件を検察に送致するかどうかを判断します。「微罪処分」として釈放されるケース、身柄ごと検察に送致し引き続き拘束されるケース、事件の捜査書類のみを検察に送致して釈放されるケースがあるでしょう。

    身柄ごと送致されるケースでは、さらに検察において24時間の取り調べが行われます。検察では24時間以内に、さらに身柄拘束と捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要か判断します。

    勾留請求は、検察官から裁判官に対してなされます。勾留が認められると、原則10日間、延長が認められればさらに10日間、身柄が拘束されることになります(刑事訴訟法第207条、208条、208条2)。

    勾留された場合、検察官がこの20日間で起訴するか、不起訴処分とするか判断します。起訴・不起訴が決まるまでの間だけでも、逮捕から最長で23日間も身柄の拘束を受け続けることになるわけです。そのあいだ、仕事も当然休まざるを得ません。勾留されたことが周囲や仕事先に知られてしまえば、今後の生活にも大きく支障をきたす可能性も否定できないでしょう。

3、重すぎる刑罰を処されないためには

「つい盗撮をしてしまったが、反省している」「罪を償いたいが、前科がつくのは避けたい」などと考えている方もいるかもしれません。逮捕後の微罪処分や、検察への送致後の不起訴処分は、証拠不十分のケースか、確かな証拠はあるが示談が成立していて、被疑者が処罰を望んでいないケースなどで下される判断です。

微罪処分や不起訴処分の場合、前科がつくことはありません。ただし、盗撮の疑いで警察に逮捕された日時や、どのような判断でどのような形の処分を受けたかなどの履歴は残ります。これらは「前歴」と呼ばれ、再び逮捕された際は内容が考慮されていきます。

では、どうすれば前科がつくことや、長期にわたる身柄拘束を回避できるのでしょうか。

  1. (1)自首

    盗撮をした事実を認める場合は、「自首」を行うと刑が減免される可能性があります。「自首」は刑法第42条に規定されている行為であり、成立すれば刑が軽減される可能性があります。

    ただし自首が成立するには条件があります。それは、「犯人が判明していない、または犯罪自体が発覚していない」状況で行うということです。「すでに犯人は発覚しており、所在地のみわからない」という場合に自ら罪を告白しても、自首は成立しませんので、注意が必要です。

    自首する、任意聴取に応じることは、逃亡のおそれがないという判断材料を捜査機関に与えることになります。よって、長期にわたる身柄拘束は免れる可能性が高まると考えられるでしょう。ただし、自首する以外にも状況に適した対応方法があるかもしれません。不安がある場合は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

  2. (2)示談

    すでに盗撮が発覚し、警察から被疑者として出頭の要請を受けていたり、逮捕されていたりするとき、もっとも重要な方法は、被害者との示談交渉を行うことです。

    「示談(じだん)」とは、事件の当事者同士が話し合い、解決を図ることを指します。加害者は、被害者に対して謝罪と賠償を行う一方、被害者には、加害者に対して寛大な気持ちで許すという意味を持つ「宥恕(ゆうじょ)の意思」を「示談書」において示してもらうことを目的としています。

    被害者から「処罰感情がない」という意思表示をしてもらえないときは、示談が成立したとはいえません。送致や、起訴・不起訴を決定する際、被害者に処罰感情があるかどうかは、警察や検察にとって重要な判断要素になります。被害者に許してもらうことは「微罪処分」や「不起訴処分」を勝ち取るには不可欠なものといえるでしょう。

    しかし、盗撮は犯罪です。加害者側が直接、被害者と示談交渉をすることはほぼ不可能と考えてよいでしょう。弁護士を介してのみ、交渉に応じるケースが中心となります。ただし盗撮は親告罪ではないため、示談をしたとしても告訴取り下げによって不起訴になることはありません。先述した不起訴は、さまざまな事情を考慮した結果での不起訴処分である点には注意してください。

4、弁護士に相談するメリット

もしも自分が盗撮を犯し、現行犯で逮捕されなかったとしても、後日逮捕される可能性はあります。
そのような状況でいつ逮捕されるだろうかとおびえるよりも、自分の将来をよりよいものにするための行動を起こすべきではないでしょうか。
自分が後日逮捕されるような行動をした自覚があるならば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士には守秘義務がありますので、どんなことも隠さず全て話してください。弁護士が、今とるべき対策をしておくべきことをアドバイスいたします。
また、万が一逮捕された場合は、長期の拘束を回避するために、逮捕後72時間以内の釈放を目指すための行動が非常に重要となります。

弁護士による迅速な対応によって、被害者との示談をいち早くまとめることで、釈放、不起訴、執行猶予の獲得を有利に進めることが可能です。

示談交渉の内容においても、弁護士が、適切な補償額と無理のない支払いとなるよう交渉します。示談交渉が決裂した場合も、捜査機関に対して、被害者とできうる限り歩み寄ろうとした事実などを伝えることで、反省の態度などの判断材料となりますので、無駄にはなりません。

5、まとめ

前科がついてしまうと、就業や資格取得、渡航時制限を受ける可能性があります。つまり、将来にわたり大きな影響を残してしまうということです。

逮捕されそうだと悩んでいるときは、できるだけ早い段階でベリーベスト法律事務所・高崎オフィスで相談してください。対応できるタイミングが早ければ早いほど、不当に重い処罰を受けないよう、適切な弁護活動を行うことができます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています