一気飲みの強要で急性アルコール中毒……問われる可能性のある罪とは?
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群馬県では、平成30年の1年で、飲酒運転による死亡事故が3件も発生しています。お酒を飲んで車を運転すると判断力が低下し、事故を起こす可能性が非常に高いことはよく知られていますが、お酒を飲むこと自体で死亡するケースも少なくありません。
特に大学生のサークルの飲み会では、一気飲みを強制して急性アルコール中毒によって搬送されるケースが少なくありません。
では、一気飲みをさせて大事にいたった場合、飲酒をあおった人は何かしらの罪を問われるのでしょうか。また、その後加害者はどうすればいいのか、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が説明します。
1、一気飲みを強要した場合に問われる可能性のある罪とは?
一気飲みを強要すると、血中のアルコール濃度が急激に上昇し、急性アルコール中毒を引き起こす可能性があります。アルコール量や体質によっては、そのまま死亡するケースもあります。
ここでは、一気飲みを強要した場合に問われる可能性がある罪について解説します。
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(1)強要罪(刑法第223条)
強要罪は、他人の生命や身体、自由や名誉、財産に対して害を加えると脅迫、もしくは暴行を加えて、本人の意思に反することを行わせる犯罪です。強要罪の法定刑は、3年以下の懲役です。
たとえば、先輩が後輩に対して、後輩に一気飲みをする意思がないのに、心理的な圧力をかけて無理やり飲ませると強要罪が成立する可能性があります。 -
(2)傷害罪(刑法第204条)
傷害罪は相手の身体に「傷害」を負わせて場合に成立する犯罪です。
傷害罪という言葉を聞くと、殴る蹴る等の暴力行為をイメージする方が多いと思います。しかしながら、それだけではありません。たとえば、無理やり一気飲みを強要することで、急性アルコール中毒で健康被害が生じる恐れがあるため、傷害罪が成立する可能性があります。傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。 -
(3)傷害致死罪(刑法第205条)、過失致死罪(刑法第210条)等
●傷害致死罪
傷害致死罪は、相手の身体に「傷害」を負わせた結果、その相手が死亡してしまった場合に成立する犯罪です。たとえば、酔いつぶす(健康被害を生じさせる)目的で、一気飲みをさせた結果、相手が死亡してしまった場合には、傷害致死罪が成立する可能性があります。
傷害致死罪の法定刑は、傷害罪よりも重く、3年以上の懲役です。
●過失致死罪
過失致死罪は、不注意等による「過失」が原因で、相手が死亡してしまった場合に成立する犯罪です。
過失致死罪の法定刑は、50万円以下の罰金です。
もっとも、過失の程度が重い場合には、重過失致死罪(刑法第211条後段)が適用されます。重過失致死罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金となり、過失致死罪と比べて重くなっています。 -
(4)現場助勢罪(刑法第206条)
現場幇助罪とは、傷害罪・傷害致死罪に該当する行為が行われていた状況下で、その行為を助長するような行動をした場合に成立する犯罪です。たとえば、直接飲酒を強要せずとも、コール等をして飲酒の強要を助長した結果、被害者が酔いつぶれ、死亡した場合でも犯罪は成立する可能性があります。現場幇助罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料とされています。
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(5)保護責任者遺棄罪(刑法第218条)・同遺棄致死傷罪(刑法第219条)
保護責任者遺棄罪とは、保護責任者が、保護をする必要とする者を置き去りにしたり、生存に必要な保護を怠った場合に成立する犯罪です。たとえば、一気飲みを強要した人が、一気飲みにより具合を悪くした人を、誰もいない道端にそのまま放置した場合には、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。保護責任者遺棄罪の法定刑は、3ヶ月以上5年以下の懲役です。
そして、放置した結果、死亡させてしまうと、「保護責任者遺棄致死罪」が成立する可能性があります。急性アルコール中毒の症状が出ていなくても、酔いつぶれた人が出たら病院に連れて行く、介抱する、などの適切な処置が必要です。保護責任者遺棄致死罪が成立する場合には、保護責任者遺棄罪よりも重い刑が科されることになります。
2、損害賠償請求される可能性も……?
日本では、罪を犯した場合は刑法などにより刑事罰に問われて、懲役刑や罰金刑に処されることになります。それと同時に、民事的な責任も負わなければなりません。民事的な責任とは、被害者に対する損害賠償責任です。
一気飲みの強要で相手が急性アルコール中毒になった場合は、治療費や薬代だけでなく、アルバイトや仕事を休むことになったら、休業損害、そして慰謝料等を支払わなければなりません。後遺障害が残った場合は、さらに後遺障害の慰謝料や逸失利益なども請求されます。死亡した場合は、遺族に多額の慰謝料や逸失利益を支払う必要があるでしょう。
損害賠償請求は、警察などではなく被害者本人や被害者の遺族が行います。最初は内容証明郵便等で請求され、支払いに応じない場合は損害賠償請求の訴訟が提起されることになります。被害者との示談を早期に解決したければ、訴訟に持ち込まず、事前の交渉の段階で、合意すべきです。被害者と示談が完了していることで、問われる刑事罰が軽くなる可能性もあります。
3、刑事・民事責任を問われそうな場合、弁護士に依頼するべき?
結論から言いますと、刑事・民事的な責任を問われそうな場合、弁護士に相談するべきです。
なぜならば、早期に弁護士に依頼して弁護活動をスタートすることで、逮捕されることの不利益を回避できるからです。
●逮捕後の身柄拘束を回避できる可能性がある
一気飲みの強要で逮捕された場合、通常は72時間は留置所などに身柄を拘束されて、取り調べを受けます。その後、最大20日間も自由を奪われる可能性がありますが、弁護士に弁護を依頼することで、20日間の身柄拘束「勾留」を避けられる可能性があります。
勾留を回避するためには、逃亡の恐れがないこと、証拠隠滅の恐れがないことなどの条件を満たしていることが必要ですが、弁護士が勾留する必要がないと検察官や裁判官に働きかけてくれるのです。勾留を回避できれば、学校生活や会社への影響を最小限に抑えることができます。
●起訴を回避できる可能性がある
日本では刑事裁判で起訴されると99.9%有罪となってしまいます。だから「不起訴」を勝ち取ることが重要です。起訴不起訴を判断する大きな材料のひとつが「被害者との示談の成立」です。
検察官が起訴・不起訴を判断するまでに示談が完了していれば、不起訴となる可能性があるのです。そのためには、逮捕直後に示談交渉をスタートする必要があります。
●起訴後は執行猶予を獲得できる可能性がある
起訴されてしまうと、有罪判決を免れるのは非常に難しいですが、弁護士による弁護活動によって執行猶予付き判決を獲得できれば、刑務所に入ることなく日常の生活に戻ることができます。
執行猶予付き判決を勝ち取るためには、被害者との示談だけでなく法廷での弁護活動が重要になりますので、刑事事件の取り扱い実績が豊富な弁護士に依頼しましょう。
4、まとめ
飲酒を強要して被害者が急性アルコール中毒で搬送されたり、死亡したりした場合、一気飲みを強要した方は、強要罪や傷害罪、傷害致死罪などに問われる可能性があります。加害者となってしまった場合は、なるべく早く弁護士に相談して、早期に示談交渉と弁護活動をスタートする必要があります。
早く対応することで、今後の社会生活への影響を最小限に抑えることができますので、悩む前にまず相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が、的確に状況を把握した上で、迅速に弁護活動をスタートいたします。
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