任意整理から自己破産に切り替え可能? メリットとデメリットとは
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裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に前橋地方裁判所に申し立てのあった自己破産事件の件数は、894件でした。
当初は、任意整理による借金返済を目指していたものの、収入が不安定になり、継続して借金を返済していくのが難しくなってしまうことがあります。このような場合、任意整理から自己破産に切り替えて債務整理を行うことは可能なのでしょうか。また、途中から切り替えることによって、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
本コラムでは、任意整理から自己破産への切り替えの可否と切り替えることによるメリット・デメリットについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、任意整理から自己破産に切り替えることは可能?
任意整理をすることによって、将来利息のカットや返済方法の変更などによって、借金の返済を続けることができるようになります。しかし、怪我や病気、解雇、転職などさまざまな事情によって、当初予定していた収入を得ることができず、返済を継続することが難しい状況になることもあるでしょう。
このような状況になった場合には、任意整理から自己破産に切り替えることによって、借金の負担から免れることができる可能性があります。返済が困難になった状況を放置していると、債権者から訴訟を提起され、給料や預貯金といった財産を差し押さえられてしまうリスクがあることは否定できません。
そのような事態に陥る前に、任意整理による合意に従った返済ができない状況になった場合には、早めに弁護士に相談をしてください。どのような対応ができるか、アドバイスを行うことが可能です。
2、任意整理から自己破産に切り替えるメリット・デメリット
任意整理から自己破産への切り替えには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
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(1)任意整理から自己破産に切り替えるメリット
任意整理では、将来利息のカットや返済方法の変更によって、毎月の負担を減らすことができますが、借金自体をなくすことまではできません。
これに対して、自己破産は、裁判所から免責決定を受けることによって、原則として、借金をゼロにすることができる手続きです。任意整理から自己破産に切り替えることによって、残っている借金の支払いを原則すべて免除してもらうことができます。
収入の減少などによって、当初予定していた返済が困難になってしまった場合には、再度、任意整理をすることもできますが、継続的な返済が難しいという場合には、自己破産への切り替えを検討してみるとよいでしょう。 -
(2)任意整理から自己破産に切り替えるデメリット
任意整理から自己破産に切り替えることによって、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
① 任意整理の対象外にしていた債権も含めなければならない
任意整理では、任意整理の対象に含める債権を自由に選択することができます。そのため、奨学金などの保証人付きの債権などを除外して任意整理を進めることも可能です。
しかし、自己破産は、裁判所を利用した法的手続きになりますので、債権者平等が強く求められることから、すべての債権を自己破産の対象に含めなければなりません。保証人が付いている債権については、保証人に対して一括返済が求められることになりますので、任意整理から自己破産に切り替えることによって、保証人に迷惑が及ぶ可能性があります。
② 財産を手放さなければならなくなる
自己破産では、免責によって借金をゼロにすることができる反面、一定金額以上の財産を持っている場合には、すべて手放さなければならなくなります。住宅ローン付きの自宅がある場合には、自宅を手放さなければならなくなるのが通常です。
③ それまで支払ったお金が無駄になる
任意整理から自己破産に切り替えた場合には、その時点の借金の残額が自己破産の対象となります。自己破産に切り替えたからといって、それまで支払っていたお金が戻ってくるわけではありません。
当初から自己破産を選択していれば、任意整理のために返済をした金額を貯蓄に回すことができたにもかかわらず、途中から切り替えたことによって、それまでの支払いが無駄になってしまいます。
3、自己破産ではなく個人再生も検討する
任意整理による借金の返済が難しくなった場合には、個人再生も検討してみるとよいでしょう。
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(1)個人再生とは
個人再生とは、現在の借金額では返済を継続することが困難になった人が裁判所によって借金総額を大幅に減額してもらうことによって、継続的な返済を可能にする手続きです。たとえば、借金額が500万円以上1500万円未満である場合には、借金総額が5分の1に減額されますので、1000万円の借金を200万円にすることが可能です。減額後の借金については、原則として3年(最長5年)で返済をしていくことになります。
自己破産のように借金をゼロにするまでの効果はありませんが、大幅な借金減額によって、借金の負担もかなり軽くなるといえます。 -
(2)個人再生のメリット
任意整理から個人再生に切り替えることによって、以下のようなメリットがあります。
① 借金の大幅な減額が可能
任意整理では、将来利息のカットや支払い方法の変更がメインになりますので、借金の大幅な減額は期待できません。そのため、収入が減少してしまうと当初の計画通りに返済を続けていくことができなくなってしまいます。
しかし、個人再生では、借金総額の大幅な減額が可能ですので、収入が減少したとしても安定した収入があれば、返済を継続していくことが可能です。
② 財産を手放す必要がない
任意整理から自己破産に切り替えた場合には、一定金額以上の財産を手放さなければならないことがデメリットでした。しかし、任意整理から個人再生に切り替えた場合には、財産を手放す必要はありません。
個人再生の場合には、清算価値(申し立てる人が持っている財産の価値)以上の金額を返済しなければならないという制約はありますが、自己破産のような財産を手放さなければならないという決まりがない点もメリットです。自宅や車を手放したくないという場合には、個人再生を利用するとよいでしょう。
③ 浪費やギャンブルによる借金でも債務整理可能
自己破産の場合には、破産法上、免責不許可事由が定められていますので、浪費やギャンブルで作った借金がある場合には、原則として、免責を受けることができません。
これに対して、個人再生の場合には、免責不許可事由のような制約はありませんので、浪費やギャンブルによる借金であったとしても、個人再生の手続きを利用することができます。
4、借金の返済が難しい場合には弁護士にご相談を
借金の返済が難しい場合には、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。
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(1)最適な債務整理を選択できる
当初の任意整理の内容に従って返済を継続していくことが難しくなった場合には、再度、債務整理を検討する必要があります。その際には、再度任意整理を行う方法、任意整理から自己破産に切り替える方法、任意整理から個人再生に切り替える方法の3つがありますが、それぞれの方法には、メリットだけでなくデメリットも含まれています。
どの方法が最適であるのかは、人それぞれ異なりますので、ご自身の状況に応じた最適な方法を選ぶことが重要です。弁護士であれば、債務整理の方法を熟知していますので、個別具体的な状況に応じた最適な方法を提案することが可能です。最適な債務整理の方法を選ぶことによって、より効果的に借金の負担を軽減することができるでしょう。 -
(2)面倒な手続きもすべて弁護士に任せることができる
任意整理から自己破産に切り替える場合や任意整理から個人再生に切り替える場合には、裁判所への申し立てが必要です。
申し立てにあたっては、申し立てに至った経緯、収入状況、資産状況、負債状況などを正確に書面にまとめる必要がありますが、債務整理の知識や経験がなければ適切に対応することは難しいといえます。
弁護士に依頼をすれば、このような複雑かつ面倒な手続きをすべて弁護士に任せることができますので、ご自身の負担を大幅に軽減することができます。申し立ての仕方如何によって、結果が左右されることもありますので、自己破産または個人再生の申し立ては弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
収入の減少などによって当初の任意整理の内容通りの返済を続けることが難しくなってしまった場合には、任意整理から自己破産または任意整理から個人再生に切り替えることができます。
支払いを滞ったまま放置していると、債権者から財産を差し押さえられるなどの不利益が生じるおそれがありますので、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。任意整理後の借金の返済が難しいなど借金でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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