自白だけでも不貞行為の証拠になる? 慰謝料請求に必要な準備とは

2023年06月20日
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自白だけでも不貞行為の証拠になる? 慰謝料請求に必要な準備とは

高崎市を管轄する前橋家庭裁判所では、令和3年度中に1154件もの婚姻関係事件が終結しました。婚姻関係事件とは、主に離婚や婚姻継続を争う事件が中心ですが、不貞行為を理由にした離婚の場合、慰謝料を請求できるかどうかについてが争点になっているケースは少なくありません。

夫が不貞行為を自白したため、慰謝料請求や離婚を考えている方もいらっしゃるでしょう。自白の事実は、裁判で有利になる証拠となりえます。しかし、慰謝料を請求したら「不倫はしていない」と言われてしまう可能性は否定できません。不貞行為の証拠について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、慰謝料を請求したい! 不貞行為の自白に証拠能力はある?

不貞行為を白状した夫と、不貞相手に慰謝料が請求したい! と考えた場合、どのような対策を行う必要があるのでしょうか。そもそも、不貞慰謝料とはどのようなものか確認してみましょう。

  1. (1)不貞慰謝料とは

    不貞慰謝料とは、不貞行為により、負った精神的な苦痛等について発生する損害賠償金を指します。不貞慰謝料発生の根拠は、民法第709条の不法行為に基づく損害賠償請求です。

    不貞慰謝料のほかにも、相手方の暴言や暴力などにより、離婚に至った場合には、慰謝料の請求をすることができます。

  2. (2)自白は証拠になる

    たとえば、夫に不貞行為があったことがきっかけで離婚に至った場合、夫が離婚原因を作ったと考えられます。しかし、「夫が不貞行為をしたこと」を裁判所に認めてもらうには、不貞慰謝料を請求する側(この場合、妻)が、「夫が不貞行為をしたこと」を証拠に基づいて証明する必要があります。そのため、不貞慰謝料を請求する側が、不貞行為の証拠を集めておくことが必要となります。

    もちろん、夫が不貞行為を妻に対して自白したという事実だけでも、言われた本人にとっては重要な証拠となると思うでしょう。しかし、その自白を録音や念書等の書面化をしていなければ、第三者には本当に不貞があったかどうかはわかりません。したがって、仮に、裁判で争うことになり、夫が自らの発言を「言っていない」などと否定したら、裁判所に慰謝料請求を認めてもらえなくなる可能性もあります。

    つまり、裁判で考慮される不貞行為を証明する動かぬ証拠を作るためには、自白された記憶を話すだけでなく録音や念書などの書面で残しておいたほうがよいでしょう。

2、不貞行為の自白を録音していなかった場合の対処法は?

夫が不貞行為を自白したが、そのとき録音することができなかった場合はどうしたらよいでしょうか。
その際は、相手に自白内容をまとめて書いてもらうことをおすすめします。これを念書と呼びます。

証拠となる念書として成立させるために、以下の項目を押さえておきましょう。形式は箇条書きでも構いません。

  • 書面を作成した日付
  • 不貞の経緯、期間
  • 不貞は、夫が結婚していることを知っていたか
  • 不貞相手の氏名と住所
  • 今後の約束
  • 約束が破られた場合の取り決め
  • 内容に間違いがないかの確認
  • 夫と妻の署名・捺印

この内容が網羅されていれば、問題なく証拠となるでしょう。また、この書面を確認している状況をスマートフォンやICレコーダーなどで録音することもよいでしょう。

日時や場所、交通手段、誰が相手だったかなどの事実を読み上げ、夫の諾否や返答を記録しておきます。書面に不備があった場合の備えや、作成した書面を破棄された場合の備えにもなります。

3、不貞行為の自白だけで裁判に勝てる?

自白に関しては上記の書面や音声といった証拠を準備しておく必要性についてここまで解説しました。万が一、自白したにもかかわらずいざとなったら不貞行為の当事者が認めない場合は、ふたりの間に性行為があったことを、あなたが立証する必要があります。その場合は、以下のような証拠が必要となるでしょう。

可能であれば相手に問い詰める前、不倫を怪しんだ段階から、なるべく多くの証拠を集めましょう。

  1. (1)不貞行為の証拠となるもの

    基本的には、肉体関係があることを証明する証拠が必要です。

    ●写真
    ふたりでラブホテルに入る写真があることが望ましいです。手をつないで歩いている写真のみでは、肉体関係があったことまでは推認できないケースが多い傾向があります。

    ●メール
    肉体関係があるとわかるようなメール、ホテルなどで宿泊する予定を決めている内容などがあれば保存します。

    ●手帳、スケジュール帳、付箋などのメモ
    不貞相手との密会予定のメモがある可能性があります。見つけたら写真を撮っておきましょう。また、あなた自身の日記やメモも証拠になりえます。

    ●録音データ
    不貞の疑いのある配偶者との会話は、まめに録音しておきましょう。日常会話の中に出てきた週末の出掛け先、出張先などの内容が、重要な証拠になる場合があります。

    ●の記録
    クレジットカードの明細書で、ETCの記録が記載されています。配偶者が車で移動した行動範囲がわかります。

    ●領収書類
    宿泊したホテルの領収書、レストランの領収書などもあると望ましいでしょう。

    ●第三者の証言
    たとえば「不倫デートの現場を目撃した」というような第三者の証言です。または、不貞行為の事実を夫が友人や知人などに話しているケースもありえます。それら知人とのSNS上の会話画面やメールがあるとよいでしょう。

  2. (2)自白だけで慰謝料の請求は可能?

    自白は立派な証拠になりえます。相手が否定しない限り、自白のみで不貞慰謝料の請求は可能です。しかし、前述のとおり、夫や不貞相手が裁判官の前で同じ内容を話すとは限りません。そのような場合に備えて、慰謝料請求が認められるかは、他の証拠や、証言の質に左右されます。

    複数の証拠を確保することで、慰謝料請求や離婚を有利に進めることができるでしょう。効果的な証拠の収集・提出には、弁護士によるサポートを受けたほうがよいケースが少なくありません。

    また、交渉の段階から弁護士に対応を依頼することで、つらい話し合いを直接しなくてもよいという大きなメリットがあります。当初の段階から弁護士に相談しておけば、調停や裁判となったとき、速やかに依頼することが可能です。まずは慰謝料請求を検討しはじめた段階から、ひとりで抱え込まず、弁護士に相談してみることをおすすめします。

4、まとめ

もし現時点で、夫の不貞を疑っているのであれば、まずは冷静になって落ち着くことが大切です。特に慰謝料請求や離婚を考えているのであれば、夫や浮気相手が自白する前に弁護士に相談して、ひそかに不貞行為を立証するための確たる証拠を集めておくべきと考えられます。

また、問い詰めたい気持ちはわかりますが、脅しと判断されかねない言動をしてしまうと、あなた自身が不利な立場になる可能性があります。丁寧に証拠を積み重ねていけば、こちらに不貞の事実がない限り、交渉において有利であることに間違いはありません。

ひとりで抱え込まず、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへご相談ください。まずは誰かに現状を話すことで、事態を客観的に見ることができます。弁護士が、あなたのつらい気持ちに寄り添い、必ず力になります。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています