妻側の親族と折り合いが悪いのを理由に離婚できる? 法定離婚事由の基本
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高崎の名産品である高崎だるまには、夫婦円満を祈願した寿だるまというものがあり、ひざ部分に寿という文字と夫婦2名の名前が入ります。結婚式や披露宴などで開眼し、参列者に寄せ書きなどをしてもらうという風習があるのです。
しかし、こうした祈願もむなしく離婚したいと感じることはあります。中でも離婚の原因が相手方の親族との不仲であることは決して珍しくありません。では、親族との不仲を理由にした離婚は可能なのでしょうか。親族との不仲を理由にした離婚について、弁護士が解説します。
1、離婚原因ってどういうもの?
結婚もそうだったように、離婚もまた、夫婦そろって合意する必要があります。片方だけが「離婚したい」と考えたとしても、片方だけの意思では離婚することはできません。では、どうしたら離婚することができるのでしょうか。
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(1)離婚に必要な条件は?
離婚そのものは、双方が合意していれば、すぐにでも離婚できます。そこで、離婚したいと考えたときにまず起こす必要があるアクションは、「相手に離婚したいという意思を伝えること」になるでしょう。
そして多くの場合、離婚したい理由とともに伝えることになります。理由がわからなければ、説得することはもちろん、話し合うことも難しいためです。離婚原因のみならず、親権や養育費、慰謝料などの条件面も含めて相手が納得し、離婚に承諾して、離婚届を提出すれば、離婚が成立します。
一方で、相手が離婚に応じず、話し合っても平行線となり、結論が見えなくなるケースがあります。そのときは、離婚調停や裁判などを通じて、離婚を目指す必要があります。
離婚調停とは、調停委員が、夫婦の間に入って意見のすり合わせを提案し、助言してもらえる制度です。離婚調停をしても、離婚が成立するには、相手方の承諾が必要になります。そのため、調停でも互いの意見がまとまらなかった場合は、離婚調停が不成立となり、裁判で判断してもらうことになります。特に裁判では、離婚が適切であるかどうかが判断されることになる、離婚の理由が必要不可欠となります。
法廷で争うことになった際、相手が離婚に承諾していなかったとしても離婚が認められる理由を「法定離婚事由」と呼びます。 -
(2)法定離婚事由とは
法定離婚事由は、裁判によって離婚が適切だと判断される原因を指します。民法では以下5つの法定離婚事由が定めています。
●不貞行為……配偶者以外の人と性的関係を持つことです。芸能人がしばしば「一線は越えていない」と弁明するのは、この不貞行為をしていないと主張するためです。
●悪意の遺棄……夫婦には、同居義務や扶助義務があります。悪意の遺棄とは、理由がないのに一緒に住まない、生活費を一切渡さない、突然家から追い出して中に入れないなどという行為を指しています。
●3年以上の生死不明……震災などが起こり、いなくなってしまった、消息が不明といった場合です。
●回復の見込みのない強度の精神病……配偶者が強度の精神病になった場合も離婚事由となり得ます。ただし、回復の見込みがないからすぐに離婚できるわけではなく、精神病になったパートナーのためにあれこれ手を尽くしても、回復しないような場合に離婚が認められるようになります。
●その他婚姻を継続し難い重大な事由……たとえば、別居期間が長い、パートナーがアルコール中毒で経済的に苦しい、暴力をふるわれる、家庭を顧みないほどに宗教活動に力を入れすぎている等、が該当する可能性がありますが、上記事由があれば必ずしも認められるものではなく、夫婦間のあらゆる事情を考慮して判断されることになります。
もしあなたが一方的に離婚を希望している場合、相手側にこれらの離婚事由に該当する状況があったと証明する必要があります。逆に、自分側に離婚事由に当てはまる行為があるときは、あなた自身が「有責配偶者」となるため、あなたから離婚を求める場合、離婚のハードルが高くなります。
たとえば、相手側が不貞行為をしていればあなたから希望した離婚は認められます。しかし、あなたが不貞行為をして相手が離婚に応じない……というケースでは、たとえ法廷で争ったとしても、裁判所が、離婚を認めると判断することはほとんどないでしょう。
2、親族との折り合いの悪さを理由に離婚はできる?
さて、妻(夫)側の両親など、親族と仲が悪いことを理由に離婚することはできるのでしょうか。親族との折り合いの悪さは法定離婚事由に該当するかどうかを確認する必要があります。
まず、上記の離婚事由のうち、「不貞」や「行方不明」、「回復の見込みのない精神病」は、親族とは無関係と考えられます。よって、「悪意の遺棄」の有無や、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかで判断されることになります。
ただし、親族との不仲によってどのような状況に陥っているかは、個々のケースで異なりますが、「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難しい重大な事由」が認められるためのハードルはかなり高くなっています。単純にパートナーの親族と仲が悪いというケースがあったとしても、夫婦と異なり、親族とは同居義務はありません。不仲ならば、一緒に住まない、会いに行かない、会いに来ても顔を合わせないなどの選択肢があります。工夫すれば、特に支障はなく、夫婦関係を継続することができるためです。
もっとも、さまざまな事情に応じて総合的に判断されているため、場合によってはパートナーの親族との不仲のみならず、その他一切の事情を考慮して離婚できることもあります。
たとえば、配偶者の親族との不仲について、以下の状況があれば離婚事由として認められ、夫婦間の信頼関係が失われ、婚姻関係を続けられないという主張が通る可能性もあります。ただし、そのハードルはかなり高いでしょう。
- 配偶者が自分の親族が指示するまま、家を追い出す、家出をする
- 配偶者が自分の親族へ貢いでしまって生活費を入れない
- 親族との不仲の原因がパートナー自身にある
- パートナーに不仲を解消しようとする努力が見られない、知っていて放置している
- パートナーが余計に不仲になるよう働きかけている
- パートナーが、自分の実家に帰ってばかりで、ほとんど家に帰ってこない
相手が離婚に合意しない、もしくは状況の改善を図らないなどの理由で、離婚したくても進展できないときは、弁護士に相談することをおすすめします。
3、離婚する前にできることはある?
離婚したいという希望を伝える前に、しておくべきことのひとつに、離婚原因となる証拠集めがあります。万が一、離婚裁判に至ったときはもちろん、調停の場でも、証拠がなければ、言い分を認めてもらえる可能性が低くなってしまうからです。
大前提として、財産分与のために財産の全体を把握しておくことも大切な準備のひとつです。相手方が財産を隠すことを回避し、離婚後のスムーズな生活のためにも重要と考えられます。
子どもがいれば、その育成環境や将来について考えておく必要もあるでしょう。子どもにとって、できるかぎりベストな状況を作れるよう、力を尽くすことも親の仕事です。相手に託してよいのか、あなた自身が仕事などを融通して手をかけたほうがよいのか、という親権・監護権についてはもちろん、養育費の問題についても考える必要があるでしょう。
また、準備のために弁護士に相談しておくのもひとつの方法です。パートナーが離婚に応じてくれない場合に間に入ってくれたり、調停や裁判で代理人となってもらったりすることもできます。
4、離婚の手続き・流れについて
離婚には、成立までの過程によって主として協議離婚と調停離婚、裁判離婚の3種に区別されています。具体的に、離婚の手続きや流れについてみていきましょう。
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(1)協議離婚
協議とは、話し合いを指します。離婚したい旨をパートナーに伝え、離婚の条件面も含めて応じてもらえた場合は、離婚届を市区町村の役場へ提出することで、協議離婚が成立します。
合意さえすれば離婚はできてしまうものです。しかし、可能な限り、離婚に伴う財産分与や慰謝料、養育費などの条件などを、あらかじめ取り決めたほうがよいでしょう。離婚後、改めて話し合いすることは難しくなるケースが多いためです。
もし話し合いを通じて互いに合意ができたら、離婚協議書を作成してから離婚届を提出することになります。離婚協議書は、互いの将来のためにも公正証書にしておくことをおすすめします。
協議をスムーズに行うことを望み、協議の段階で弁護士を依頼するケースは少なくありません。弁護士を代理人として建てることによって、言った・言わないなどの水掛け論を避けることができ、冷静な話し合いが望めます。結果的にスピーディーに離婚が成立する可能性を高めることができるでしょう。 -
(2)離婚調停
話し合いにより離婚が成立しない場合は、家庭裁判所で調停を申し立てることになります。調停では、男女2名の調停委員が間に入り、それぞれひとりずつ呼び出され、個々の主張を行いながら、話し合いを進行させる制度です。両者が冷静さを持って向き合うことが期待できます。
ここで互いの条件をすり合わせ、合意できれば、調停離婚が成立します。発行された調停調書は、判決等と同等の効力を持つため、大切に保管しておきましょう。
なお、調停での当事者間の合意が成立しなかった場合、家庭裁判所が相当と判断したときは、職権で離婚を認める審判をすることができます。もっとも、この手続きはほとんど利用されることなく、調停不成立となった場合は、裁判になることがほとんどです。 -
(3)離婚裁判
調停でも離婚が成立しない場合は、裁判が行われることがあります。
もし、審判が行われないときは、訴訟を提起することになります。訴訟では、証拠などを提出し、裁判官によって離婚が妥当かどうか判断してもらうことになります。このように、裁判を通じて離婚が成立することを「裁判離婚」と呼びます。
訴訟を通じて和解したときは「和解調書」、相手があなたの要求を認めたときは「認諾調書」、判決が下されたときは「判決書」が発行されます。
5、離婚した後、相手側の親族との付き合い方は?
離婚後、相手方であるパートナーの親族と付き合う必要はなくなります。しかし、子どもがいる場合は簡単にはいかないこともあるでしょう。あなた自身と、配偶者の親族は赤の他人になれますが、子どもにとっては親族である事実に変わりがないためです。
あなたが親権を取った場合でも、子どもへの影響を慎重に考慮しながら、子どもとの面会などについて一定の取り決めをしておく必要があるかもしれません。たとえば、元配偶者の父は、あなたの子どもにとっては祖父になります。配偶者の父に万が一のことがあったときは、あなたの子どもが相続人となるケースもあるなど、切っても切れない関係が続くことになるでしょう。
逆に、あなたが親権を手放していれば、養育費を要求される可能性が高いでしょう。ただし、養育費は、配偶者や配偶者の家族に支払うものではなく、あなた自身の子どもに対して親としての最低限ともいえる責任を果たすべく支払うお金です。渡した養育費が子どものために使われない懸念がある相手であれば、親権を渡すべき相手ではないと考えたほうがよいかもしれません。
想定できる問題を弁護士に相談しながら、対応の方針をある程度決めておくとよいかもしれません。
6、まとめ
親族との不仲を理由に離婚するためには、婚姻関係を継続し難い重大な事由に該当する必要がありますが、実際はかなり難しいです。なぜなら、あくまでパートナー自身に離婚原因がないと認められないからです。
とはいえ、親族との不仲が原因で婚姻関係に大きな亀裂が入っている場合には離婚が認められることもあります。あなただけの力で証明することは難しいケースが少なくありません。まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所・高崎オフィスの弁護士が力を尽くします。親族との不仲を理由とした離婚を決意したときは、まずはひとりで抱え込まず、連絡してください。
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