離婚に伴い財産分与分を請求したい! 退職金は対象になる? 計算方法は
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群馬県によると平成29年の群馬県内の離婚件数は、概算で3154件でした。群馬県内でも、多くの方が離婚問題で悩んでいることが伺えます。
離婚時は、さまざまなトラブルが発生しやすいものです。中でも財産分与は大きな問題になりやすい傾向にあります。特に退職金の財産分与は、財産分与の対象になるかどうかを含めてもめてしまう可能性が高いでしょう。
今回は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が、退職金は財産分与の対象になるのかどうか、どのように評価して分け合うことになるのかについて、わかりやすく解説します。
1、退職金は財産分与の対象?
結論から言えば、離婚時の財産分与では、退職金も対象となる場合があります。
そもそも、離婚する際に発生する財産分与の対象は夫婦の共有財産に限られます。共有財産は、労働で得た賃金や不動産、株など、婚姻期間中に得た資産が該当します。たとえ、どちらかが専業主婦などで労働による収入が一切なかったとしても、共有財産を受け取る権利があります。夫が労働に集中できたのは妻が育児や家事を担ったためと考えられるためです。裁判で財産を分け合う割合で争うことになったときは、ほとんどのケースでは、2分の1ずつ分け合うことになるでしょう。
他方、財産分与の対象にはならない財産を特有財産と呼びます。結婚する前や別居後に得たお金や不動産などの財産や、どちらかが親族から相続した遺産などが該当します。これら特有財産は、本人が結婚していなくても得ることができた財産であるため、分与の対象とはなりません。
したがって、夫婦が結婚してから別居するまでの期間中に働いていた分に該当する退職金のみ、財産分与の対象となる場合があります。結婚前や別居後に働いた時期の分と考えられる退職金は財産分与の対象外です。
2、退職金を財産分与の対象にできるケースとは?
前述のとおり、退職金は財産分与の対象になる場合がありますが、すべてのケースで財産分与の対象にできるわけではありません。
以下では、どのような場合に、退職金が財産分与の対象となるかを見ていきます。
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(1)退職金がすでに支払われている場合
すでに退職金が支払われている場合、財産分与の基準時において現存する限り、財産分与の対象となります。
もっとも、支給された退職金が、貯金される等、さまざまな形の資産に変化している場合には、他の共有財産と同様、変化後の資産の種類のまま、財産分与の対象となります。 -
(2)退職金がまだ払われていない場合
財産分与の対象となる退職金は、「将来確実に受け取ることができる退職金」に限られます。したがって、20年以上先の退職金、など遠い将来支払われる可能性がある退職金については、財産分与の対象外になる可能性が高いです。
しかし、まだ退職金が支払われていなくても、退職金の支払がほぼ確実であれば、財産分与の対象にできる可能性があります。財産分与の対象になるかは、退職金が支払われる可能性が高いか低いかで判断されるので、具体的な判断ポイントを確認していきましょう。
●会社の規定上、退職金は支給されるのか
そもそもの話、退職金が支給されなければ、当然、分与の対象にはなりえません。会社の雇用契約書や就業規則を確認して、退職金の有無を確認しましょう。
●会社の経営状況
会社の経営状態が悪いと退職金が支払われない可能性があります。健全な経営状態かどうかも確認しなければなりません。
●配偶者の勤務状況
相手の勤務状況によって退職金の有無や金額が変わります。
会社の規定上では退職金が支払われることになっていても、相手に転職癖があるなどで仕事が長続きしないことがあります。この場合、退職金が支払われる保証がないため、財産分与の対象にならない可能性があります。一方で、能力や勤務態度などの評価が高いと、退職金がより多く支給されることもあるでしょう。この場合、水準よりも多めの分与を請求することが可能となるかもしれません。
●退職金支給までの期間
退職まで、まだ10年、20年かかるような場合、退職金を確実にもらえるとは言い切れません。中途退職になると退職金が支払われない可能性もありますし、会社の経営が破綻している可能性もあります。そのため、退職金支給までの期間が長い場合は財産分与に含むことは難しくなります。また、仮に支払われたとしても少額になる傾向が強いでしょう。
退職金が分与に含まれるかの判断基準は、状況によって大きく異なります。したがって、財産分与の対象となる退職金の具体的な金額を計算することは、やや複雑になります。個々の状況によっても参入できる期間も異なるため、具体的な金額を考慮した請求を行うときは、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
3、退職金を財産分与する流れは?
財産分与対象の総額のうち、夫婦それぞれが受け取れる割合を決める方法について知っておきましょう。
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(1)計算式
実務的には、財産分与として受け取れる退職金の金額は、以下の計算式によることが多いです。
(退職金額)×(同居期間)÷(労働期間)×寄与度 -
(2)夫婦の「寄与度」を考えながら話し合う
裁判や調停になった場合は、たとえ他方配偶者が専業主婦や専業主夫であったとしても、原則として2分の1で分割します。
しかし、夫婦の分割割合は話し合いで自由に決めることもできます。財産形成に対する夫婦それぞれの「寄与度」に応じて、話し合いで決まるのであれば、好きな割合で決定しても問題ありません。
話し合いで財産分与について合意ができれば、離婚協議書を作成し、その内容を記しましょう。あとで「言った」「言わない」などのトラブルに陥ることを防ぐことができます。さらに可能な限り、作成した離婚協議書は、強制執行認諾条項をつけた公正証書にすることをおすすめします。
相手から約束した額が払われない事態に陥ったとき、離婚協議書のみであっても支払いを受ける主張はできます。しかし、相手の資産を差し押さえるなどの強制執行を速やかに行うことができません。裁判を起こし、その判決を待つ必要があります。強制執行認諾条項をつけた公正証書があれば、裁判を起こさなくても強制執行が可能になります。トラブルを未然に防ぐためにも、公正証書はきちんと作成しておくことをおすすめします。 -
(3)話し合いがまとまらなければ調停を申し立てる
協議で分割割合を合意できなければ、調停に移行します。
調停とは、家庭裁判所の調停室で調停委員を介して行われる話し合いの場所です。離婚するかしないかなどの根元から、財産分与について話し合うことができます。
直接相手と話し合う必要がなく、調停委員がお互いの意見をききつつ仲介し、客観的な意見を提示してくれます。相手と顔を合わせる必要がなく、通常より冷静に話し合いを進めることができます。また、あくまで話し合いの場であるため、最終的に合意するかどうかは当事者で決めることができる点も大きなメリットでしょう。
合意した内容はさまざまな法的効力を持つ「調停調書」として証拠に残されます。調停調書は、裁判における「確定判決」と同じ効力があります。相手が調停調書に定められた債務を履行しないときに差し押さえなどの手続きを行うことができるため、しっかり保管しておきましょう。 -
(4)調停でまとまらなければ裁判
調停で合意できなければ、裁判に移行します。
離婚裁判では、当事者の話し合いではなく裁判官の判断により財産の分与額を決めます。調停よりも証拠が大切になるので、離婚裁判を考えているときは証拠の保存に注意してください。
財産分与の割合は、原則として2分の1となります。それ以上の割合を主張したい場合は、寄与度を示す証拠が必要になります。手続きも複雑となるため、弁護士を依頼して進めたほうがよいでしょう。
4、まとめ
離婚の際、退職金も財産分与の対象となる場合があります。また、寄与度によって分与の割合が異なる場合もあります。夫婦で話し合い、双方が納得できるような財産分与をしましょう。
まだ退職金が支給されていない場合、ケース・バイ・ケースで考える必要があるでしょう。双方が納得できる結論が出せない可能性があるときは、もめてしまう前に弁護士に相談することをおすすめします。
財産分与額の評価方法や配偶者の説得などお悩みや疑問点があるときは、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでご相談ください。弁護士が、状況に適したアドバイスや交渉を行います。場合によっては、税理士や社会保険労務士と連携して対応することも可能です。
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