戸籍上の名前は変えられる? 改氏・改名手続きの方法を弁護士が解説
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名前はその人を表象するものです。しかし、生まれたときに与えられた名前によっては円滑な社会生活を送ることに支障が出るため、改氏・改名したいという方もいることでしょう。改名の手続きは家庭裁判所、高崎市にお住まいの方であれば前橋家庭裁判所高崎支部に申し立てることから始めますが、改氏・改名手続きは思いのほか手間がかかり、しかも家庭裁判所に申請したからといっても直ちに認められるものではなく、却下されることも珍しくありません。
そこで本コラムでは、改氏・改名の手続きの流れと家庭裁判所に認められるための方法について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、改氏・改名手続きに必要な条件とは?
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(1)氏を変える場合
たとえば以下のケースのように結婚・離婚・養子縁組で氏(姓)を変える場合は、役所に「氏の変更届」を出すだけです。したがって、特に家庭裁判所の許可を得る必要は特にありません。
- 離婚してから3か月以内に婚氏続称(民法第767条第2項、婚姻期間の氏を続けて使用すること)届を提出したあとに、結婚した当時の氏に戻すこと
- 外国人と結婚してから6か月間経過後、配偶者の氏に変更すること
- 養子縁組から7年経過し離縁したあとから3か月以内に、縁氏続称(民法第816条第2項、養子縁組の氏を続けて使用すること)し、養子縁組当時の氏に戻すこと
しかし、それ以外の場合は戸籍法第107条の規定に基づき、家庭裁判所の許可を必要とします。また、改氏をするためには、同じく戸籍法第107条の規定により「やむを得ない事由」が要件とされています。
「やむを得ない事由」とはやや抽象的ですが、過去の事例から以下のような事由が該当すると考えられます。- 正確に読むことが難しい漢字が用いられていること
- 身近に同氏同名の人がいるため、まぎらわしいこと
- 外国人に間違われやすいこと
- 外国人配偶者のミドルネームを氏に追加して、複合姓とすること
- 外国人を親として養子縁組をし、外国人の養親の氏に変更すること
- 国籍を取得した(帰化した)ときの氏を変更すること
- 長年用いている通称に変えること
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(2)名を変える場合
名に用いられている漢字が通常の読み方とは違うため、名前を読み間違えられることが多く日常生活へ支障すら出てしまっているという方には、名に用いられている漢字は変更せずに読み方だけ変えるという方法が考えられます。
この場合、戸籍法上は住民票や戸籍謄本にふりがなを付すことは求められていないため、家庭裁判所の手続きは必要ありません。ただし、自治体によっては名の読み方を変えることが認められないケースがあることに注意してください。
一方で、名に用いられている漢字そのもの、あるいは漢字を平仮名やカタカナに変更する場合は、戸籍法第107条の2の規定により家庭裁判所からの許可が必要です。
なお、改名には以下のような「正当な事由」を必要とします。- 奇妙、珍奇な名であること
- 正確に読むことが難しい漢字が用いられていること
- 身近に同姓同名の人がいるため、まぎらわしいこと
- 異性や外国人に間違われやすいこと
- 長年用いている通称に変えること
- 僧侶になったこと、あるいはやめたこと
改氏と同様に上記は過去の事例にすぎず、法律上明確な規定が存在しているわけではありません。したがって、改名が認められるか否かは家庭裁判所の裁量によるところが大きいといえます。
2、改氏・改名手続きの流れ
ここでは、家庭裁判所で必要な改氏・改名手続きの流れについてご説明します。
改氏にせよ改名にせよ、実際に申し立てをお考えの場合は、申立書および添付資料を用意して申し立てする前に、家庭裁判所の家事受付・家事相談窓口などに行き改氏・改名の手続きや必要書類について尋ねてみることをおすすめします。
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(1)改氏の手続き
氏の変更届を届け出ることができるのは、戸籍の筆頭者またはその配偶者のみです。氏の変更は同一戸籍内にあるすべての人の氏に適用されます。
したがって、もし20歳以上で、筆頭者またはその配偶者による氏の変更を望まない家族がいれば、改氏手続きを行う前に分籍届を出すことによって、戸籍から離れておかなくてはなりません。
改氏手続きに必要な書類は、以下のとおりです。- 申立書
- 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 収入印紙 800円分(氏の変更許可申立書に貼付)
- 郵便切手(家庭裁判所からの通信用、80円切手を数枚)
- 氏の変更の理由を証する資料
- ①婚氏続称または縁氏続称をした申立人が、婚姻前の氏や縁組前の氏に戻ることを求める場合
……婚姻前または養子縁組前の申立人の戸籍謄本(除籍、改製原戸籍および現在の戸籍すべて) - ②離婚や配偶者の死亡により復氏をした申立人が、婚姻中の氏に戻ることを求める場合
……婚姻中の申立人の戸籍謄本(除籍、改製原戸籍および現在の戸籍すべて) - ③外国人の配偶者の氏(または通称氏)へ変更する場合、あるいは外国人の父または母の氏に変更する場合
……当該外国人の住民票 - ④戸籍の筆頭者またはその配偶者のほかに、同一戸籍内に15歳以上の人がいる場合
……その人の氏変更に関する同意書
- ①婚氏続称または縁氏続称をした申立人が、婚姻前の氏や縁組前の氏に戻ることを求める場合
また、結婚・離婚・養子縁組以外の理由で氏を変更するときは、家庭裁判所の面談や書面による照会、追加資料の提出などを求められることがあります。
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(2)改名の手続き
改名の手続きは改氏と異なり、名を変更する本人が申し立てを行います。もし申立人が15歳未満であれば、親権者などの法定代理人が本人に代わって申し立てを行います。
改名手続きに必要な書類は、以下のとおりです。- 申立書
- 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 収入印紙 800円分(名の変更許可申立書に貼付)
- 郵便切手(家庭裁判所からの通信用、80円切手を数枚)
- 名の変更の理由を証する資料
上記のうち「名の変更の理由を証する資料」とは、別の言い方をしますと「名を変更することに正当な事由があること」を証明する資料です。たとえば、長年使い続けた通称であることを事由として改名する場合、通称が記載された手紙や卒業証書などが考えられるでしょう。
なお、改氏手続きと同様に、改名手続きにおいては家庭裁判所の面談や書面による照会、追加資料の提出などを求められることがあります。
3、改氏・改名が許可されたときに取るべき手続きとは?
家庭裁判所から改氏・改名が許可されたとしても、後続の手続きがあります。実際に氏や名を変更するためには、家庭裁判所の許可の審判が確定したあとに申立人の本籍地または住所地を管轄する市区町村役場に届け出をすることが必要です。各自治体によって必要な書類が異なることがありますが、届け出に必要な書類は、概ね以下のとおりです。
- 改氏の場合……氏の変更届出、審判書謄本、確定証明書、戸籍謄本(市区町村役場による)
- 改名の場合……名の変更届出、審判書謄本、戸籍謄本(市区町村役場による)
上記のうち、「審判書謄本」と「確定証明書」は、審判を行った家庭裁判所に申請します。申請書は各地域の裁判所のホームページにありますので、必要な通数と収入印紙を貼付し申請してください。なお、郵送で申請する場合は返信用の切手も同封してください。
4、改氏・改名手続きは弁護士に依頼したほうがよい?
改氏・改名手続きは、ひとりでも行うことができます。しかし、改氏・改名手続きは弁護士と依頼したうえで進めることをおすすめします。先述のとおり、改氏・改名ができるか否かは、「やむを得ない事由」「正当な事由」が必要です。しかし実際は家庭裁判所の裁量によるものが大きく、家庭裁判所に提出する資料や家庭裁判所との面談が改氏・改名の成否を分けるといっても過言ではありません。
このような場合にアドバンテージとなるのが改氏・改名手続きの経験があることですが、ほとんどの方は一生に何回も改氏・改名することはないでしょう。ほとんどの方にとって、改氏・改名手続きは初めてのライフイベントだと思います。一方で、改氏・改名の申立を行う家庭裁判所は、同じ申し立てを何回も受けているだけではなく、家庭裁判所によっては改氏・改名そのものをネガティブにとらえていることもあります。そのような場合、改氏・改名手続きに経験と実績のある弁護士であれば、家庭裁判所に改氏・改名手続きを認めてもらえるための心強いパートナーとなります。
改氏・改名手続きに経験と実績のある弁護士であれば、あなたに以下のようなサービスを提供することが可能です。
- 氏または名の変更の理由を証する資料の作成に関するアドバイス
- 家庭裁判所からの照会や面談に上手に対応するためのアドバイス
- 依頼人が改氏または改名を必要とする理由をフォローアップする意見書の作成
- 戸籍謄本や審判書謄本、確定証明書の取得代行
- 家庭裁判所や市町村役場への申し立ておよび届出の代行
弁護士が積み上げたノウハウを最大限に活かすことで、改氏・改名手続きが認められる可能性が高くなることが期待できるのです。
5、まとめ
改名の手続きは個人でもできますが、認めてもらえないケースは少なくないようです。そのため、改氏・改名手続きをご検討の際は、ぜひ弁護士にご相談ください。どのように転ぶかわからない改氏・改名の申立手続きも、弁護士に依頼することで成功する可能性が高まります。
ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、改氏・改名手続きについてのご相談を承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。あなたのために、ベストを尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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