離婚すると子どもの相続権はどうなる? 高崎オフィスの弁護士が解説
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離婚は昨今珍しくなく、高崎市でも平成28年は離婚の届け出は622件なされています。離婚する際に子どもがいた場合、片方が親権を取って、もう片方が世話をする親に養育費を支払うパターンがほとんどです。そして、時間がたつにしたがって親権を持たない親は子どもとの面会などの回数も減っていき、そのうち長年会ってもいないという状況になる親子も多いようです。
しかし、離婚して親権がなくても親子であることに変わりはありません。離れていても、身体のことを心配することも多いでしょう。その一方で、たとえば自身に万が一のことがあった場合の相続がどうなるのかと、疑問に思ったことはないでしょうか。離婚して自身が亡くなった後、元配偶者やその子どもには財産を相続する権利はあるのでしょうか。
そこでこの記事では、離婚すると子どもの相続権がどうなるのか、また、相続時によくあるトラブルや対処法について、高崎オフィスの弁護士が解説します。相続時のトラブルを避けられるように、事前に確認しておきましょう。
1、両親が離婚した後の相続権はどうなる?
結論からいいますと、夫婦が離婚した場合に元夫と元妻は他人になりますが、子どもとの親子関係がなくなるわけではありません。したがって、両親同士は相続権を失いますが、両親の離婚後も子どもには両親に対する相続権が残ります。
たとえば、父、母、そして二人の間に生まれた子どもがいた場合、離婚後に母が親権を持ち子どもを育てることになったとします。その後、次の状況で子どもの相続権はどうなるのか考えてみましょう。
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(1)父が他の女性と再婚して、新しい妻との間に子どもが生まれた場合
このケースで父が死亡した場合、前妻の子どもにも父に対する相続権はなくなりません。父が誰と離婚し、再婚しようが子どもとの親子関係はなくならないからです。この場合、再婚した妻、再婚した妻の子ども、先妻の子ども二人が相続人になります。
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(2)母が子どもを連れて他の男性と再婚した場合
新しい父親ができたことになるので、前夫と子どもは無関係になる印象を抱くかもしれません。しかし、この場合も元の父と子どもの親子関係がなくなるわけではありませんので、相続権はあります。
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(3)実の子どもは常に法定相続人になる
このように、両親がそれぞれ離婚や再婚をしたとしても、離婚時の両親と子どもの親子関係は変わりませんので、離婚した父が亡くなった場合、その子どもは法定相続人となります。
なお、子どもを養育監護する親権とは、子どもを代理してその子どものために法律行為をすることができる権限で、相続権とはまったく別のものです。
ですから、親権を別れた両親のどちらか一方が持ち、その他の一方と関係が疎遠になったとしても、実子との親子関係は続きます。
なお、婚姻中、配偶者は常に相続人となりますが、離婚によって婚姻関係は解消されるので、元夫や元妻の相続権は消滅します。
離婚協議中や別居中は相続人のままですが、離婚した元妻や元夫には相続権はありませんので注意しましょう。
2、子どもの法定相続分は?
相続には、どのくらいの割合で財産を分けるのか、あらかじめ法律で規定した「法定相続分」があります。
割合は以下のようになります(民法第900条参照)。
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(1)相続人が配偶者と子どもの場合(同条第1号)
配偶者……2分の1
子ども……2分の1 -
(2)相続人が配偶者と被相続人の親の場合(同条第2号)
配偶者……3分の2
親……3分の1 -
(3)相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合(同条第3号)
配偶者……4分の3
兄弟姉妹……4分の1
つまり、誰かが亡くなった場合は、原則として配偶者は相続人となります(民法第890条)。また、子どもが複数いる場合には子どもの相続分を人数で割って算出します。
なお、被相続人が亡くなる前に、子どもが孫を残してすでに亡くなっていた場合は孫が被相続人の財産を相続します(民法第887条第2項、代襲相続)。 -
(4)相続の具体例
たとえば、2000万円の相続財産を、配偶者と子ども二人で分割する場合を考えてみましょう。すると、以下のような割合で相続することになります。
配偶者……1000万円
子ども……一人当たり500万円
このように、配偶者の分は変わりませんが、子どもが多ければ多いほど一人分が少なくなります。
3、離婚後の相続でよくあるトラブルと対処法
親が離婚したり再婚したりしても、子どもの相続権はなくならないことはご理解いただけたかと思います。
次に、ここでは親が離婚後再婚して亡くなった場合の相続でよくあるトラブルと、それぞれの対処法についてお伝えしていきます。
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(1)遺留分侵害額請求
法律上、一定の条件を満たす相続人に対しては、最低限の取り分が保障されています。これを遺留分といいます。
たとえば、父が再婚して一緒に生活している相手とその子どもに全財産を譲りたいという遺言を残したとしても、法定相続人である子どもが遺留分の返還請求をすればそれが認められ、遺言通りの相続ができないことがあるということです。
なお、この権利は子どもの代襲相続人にも認められています。
このような相続のトラブルを少しでも避けるためには、最初から実子の遺留分を侵害しないように配慮した遺言書を書くことを検討してもよいでしょう。
たとえば、相続財産は現金ばかりではなく土地・家屋も含まれますが、再婚相手とその子どもが暮らしている家に対して、実子が権利を主張するような場合、生活基盤が脅かされることにもなります。
そうならないよう、遺言書に付言事項を書いておけば、法的な効果はありませんが、なぜこのような遺言の内容にしたのかを相続人に伝えるという意味では効果があります。
もっとも、どのような内容の遺言にするかは、再婚相手とその子ども、前妻との子どもの関係性も影響してきますので、遺族がもめないような内容にするよう、配慮する必要があるでしょう。 -
(2)再婚後の連れ子との関係
父が再婚する場合、再婚相手は入籍すれば配偶者として相続人になります。
しかし、再婚相手に子どもがすでにいた場合、再婚したからといって連れ子と自然に親子関係ができるわけではなく、そのままでは連れ子は相続人になれません。
このように、養子縁組をしていなかったために、父の死後、連れ子が財産を相続できないというトラブルもあります。
これを避けるには、法律上の親子関係を作るために、連れ子と養子縁組をする必要があります。
養親と養子の関係になれば実子と同じ相続権を持つことになりますので、再婚をする際、連れ子がいた場合は養子縁組の手続きをしておきましょう。 -
(3)マイナス財産
遺産というとプラスのものばかり思い浮かべがちですが、実際には借金のようなマイナス財産も含まれています。
子どもが無条件に遺産を相続する「単純承認」をすると、借金を含めた財産も無制限に相続することになります。場合によっては借金を背負うことになり、子ども自身の財産が差し押さえられるなどのトラブルにもつながることもあります。
相続する借金が相続する財産よりも多い場合、相続財産を責任の限度として相続する「限定承認」という方法があります。また、プラス財産も含めてすべてを放棄する「相続放棄」も選択肢としてあります。いずれの場合も、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内の手続きが必要とされており、手続きを行わなければ自動的に単純承認となりますので気を付けて早めに手続きをしましょう。
なお、相続放棄は相続人が一人で家庭裁判所に申し立てることで認められますが、限定承認は相続人が全員共同して行わなければならないなど、条件があります。
残された親族に負担をかけないよう、できる限りマイナス財産を明確にしておくことも必要だといえます。
4、まとめ
離婚にはそれぞれの事情があり、何らかの理由で前妻との子どもへ相続させたくないケースもあるでしょう。しかし、いくら疎遠になっていても、実子の相続権は残ります。自分が亡くなった後の相続で、死ぬ前に作った家族と前妻の子どもとの間でトラブルが起きないとは限りません。そうなれば、残された遺族にとってはそれぞれに大きな負荷がかかることになります。
こうした事態をできる限り回避するためには、法定相続人の遺留分を侵害しないような適切な準備が必要です。しかし、遺言には決まった書式があり、間違っていた場合は効力を持ちません。遺言をしたいと考える場合は、弁護士などの専門家の力を借りることも検討するべきでしょう。
離婚後の遺産相続に不安がある方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへお気軽にご連絡ください。相続後のトラブル回避に尽力します。
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