相続した土地の名義変更を行うとき気を付けるべきポイントと手順

2022年02月28日
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相続した土地の名義変更を行うとき気を付けるべきポイントと手順

群馬県統計情報提供システムで公表している「住宅・土地統計調査(平成30年調査)」によると、現住所の敷地のほかに所有する宅地などの土地の取得方法は、相続や贈与で取得したものが最も多いことがわかっています。

相続によって土地を取得した方やこれから土地を取得する予定という方は、どのような手続きによって土地の名義変更を行わなければならないのか疑問を抱いている方もいるかもしれません。土地の名義変更自体は、義務ではありませんが、名義変更を放置しているとさまざま不利益が生じることがあります。土地の所有権を取得した場合には、速やかに名義変更を行ったほうがよいでしょう。

今回は、相続した土地の名義変更を行うときに気を付けるべきポイントと手順について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、土地を相続したタイミングによって手続きが変わる

土地の名義変更の手続きは、土地をどのタイミングで取得したかによって異なってきます。

  1. (1)土地の相続の方法

    親が所有する土地を取得する方法としては、取得するタイミングによって、生前贈与と相続の二つの方法が考えられます。

    生前贈与とは、親が亡くなる前に土地を取得する方法であり、当事者同士で贈与契約を締結して土地の所有権を移転します。これに対して、相続は、親が亡くなった後に土地を取得する方法であり、遺言書により取得する方法と遺産分割協議によって取得する方法の2つがあります。

    土地を取得することになった場合には、どのような方法で取得するかによって名義変更の手続きも異なるので、まずは、生前贈与による取得なのか相続発生に伴う取得なのかを確認することが重要です。

  2. (2)生前贈与と相続の違い

    生前贈与と相続は、上記のとおり、土地の所有権をいつ取得するかというタイミングの違いがあります。また、遺言書を作成しない場合には、相続人による遺産分割協議によって誰が土地を取得するかを決めることになりますが、生前贈与の場合には、財産所有者が自分の意思で土地を取得させる人を選ぶことができます。

    このような生前贈与と相続は、税金面でも大きな違いがあります。生前贈与の場合には、贈与税が課税され、相続の場合には相続税が課税されることになります。贈与税には、110万円の基礎控除額が設けられていますが、土地のように高額な資産の場合には、基礎控除額を大幅にオーバーすることになります。贈与税の税率は、相続税の税率よりも高くなっていますので、生前贈与を選択する場合には、贈与税の負担も考えた上で行うことが重要です。

2、生前贈与のとき行う土地の名義変更の手順

生前贈与によって土地の所有権を取得する場合には、以下のような手順で名義変更を行っていきます。

  1. (1)贈与契約書の作成

    生前贈与は、贈与をする人(贈与者)と贈与をされる人(受贈者)との間で結ばれる契約です。法律上は、口頭で約束した場合でも贈与契約が有効に成立しますが、将来の争いを防止するためにも贈与契約書を作成することをおすすめします。

    贈与契約書は、後述する名義変更手続きにおける登記原因証明情報としても必要になる書類ですので、必ず作成するようにしましょう

    贈与契約書では、贈与の対象となった土地を正確に特定する必要がありますので、あらかじめ法務局で当該土地の登記事項証明書を取得し、登記事項証明書に記載のとおり所在、地番、地目、地積などの情報を記載するようにしてください。

  2. (2)名義変更の登記

    贈与契約の締結後、生前贈与の対象となる土地を管轄する法務局において、名義変更登記の申請を行います

    生前贈与による名義変更にあたっては、以下のような書類が必要になります。

    • 登記申請書
    • 登記識別情報または登記済証
    • 贈与する土地の固定資産評価証明書
    • 登記原因証明情報(贈与契約書など)
    • 贈与者の印鑑証明書
    • 受贈者の住所証明情報(住民票など)
    • 司法書士に委任する場合は委任状(贈与者、受贈者ともに)


    生前贈与によって土地の名義変更をする場合には、登録免許税がかかります。登録免許税は、「固定資産税評価額×2%」という計算によって算出します。また、土地の名義変更の登記を司法書士に依頼をした場合には、司法書士に支払う報酬も発生します。

3、被相続人が他界した後に行う土地の名義変更の手順

相続によって土地の所有権を取得する場合には、以下のような手順で名義変更を行っていきます。

  1. (1)遺産分割協議

    被相続人が死亡することによって、相続が開始します。被相続人が遺言書を残していれば、当該遺言書の内容に従って、遺産を分けることになりますが、遺言書が存在しない場合には、相続人による遺産分割協議によって遺産分割方法を決めることになります。

    相続人による話し合いの結果、誰がどの遺産を相続するのかが決まった場合には、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、贈与契約書と同様に、名義変更手続きにおける登記原因証明情報としても必要になる書類ですので、必ず作成するようにしましょう

  2. (2)名義変更の登記

    遺産分割協議が成立後、相続によって取得した土地を管轄する法務局において、名義変更登記の申請を行います

    遺産分割協議により土地を取得した場合の名義変更にあたっては、以下のような書類が必要になります。

    • 登記申請書
    • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
    • 被相続人の住民票の除票
    • 相続人全員の戸籍謄本
    • 相続人全員の印鑑登録証明書
    • 不動産を取得した相続人の住民票
    • 遺産分割協議書
    • 不動産の固定資産評価証明書
    • 相続関係説明図


    相続によって取得した土地の名義変更をする場合には、登録免許税がかかります。登録免許税は、「固定資産税評価額×0.4%」という計算によって算出します。また、土地の名義変更の登記を司法書士に依頼をした場合には、司法書士に支払う報酬も発生するのであらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。

4、土地の名義変更を行わなかった場合起こりうるトラブル

土地の所有権を取得したとしても、現在は名義変更をすることは義務ではありません。しかし、名義変更をしないで放置していると以下のようなデメリットが発生しますので注意が必要です。

なお、令和3年4月の法改正によって今後相続登記が義務化されることになります。

  1. (1)土地を売却することができない

    土地の名義変更をしない場合、登記上は前所有者の名義のままになっていますこの状態では、土地を売却することも、土地を担保にしてお金を借りるということもできません。そのため、売却や担保に入れる予定はなかったとしても、将来、売却などする際に必要な書類が手に入らず、スムーズに手続きを進めることができないなどのトラブルが生じる可能性があります。

    生前贈与や相続によって土地を取得した時点であれば、名義変更に必要な書類は、ほとんど手元にあることが通常です。たとえ不足していたとしても関係者から書類の取得をするのが容易だといえます。そのため、土地を取得した場合には、できる限り速やかに名義変更の手続きを行うようにしましょう

  2. (2)権利関係が複雑になる

    土地の名義変更を放置しておくと時間の経過とともに権利関係が複雑になるというデメリットがあります。

    名義変更をしないまま、土地の所有者が亡くなり、さらにその相続人が亡くなったりすると、名義変更をする際の関係者がどんどん増えていくことになります。そのまま年月を重ねるごとに登記名義人を確認しただけでは現在の所有者が誰であるかがわからなくなってしまう事態が起こりえます。その場合、いざ名義変更をしようとしても、土地の共有者を見つけ出すだけでも膨大な時間と労力を要することになる可能性があるのです。

    自分だけでなく、将来自分の遺産である土地を相続する相続人に対しても苦労を掛けることになってしまいますので、自分の代できちんと手続きを済ませておきましょう。

  3. (3)勝手に土地を処分されてしまうことがある

    土地の名義変更を怠っていると、有効に取得したはずの土地を勝手に処分されてしまうというリスクがあります

    たとえば、ある土地が4月1日にAに贈与され、その後5月1日にBに贈与され、B名義に変更登記がされたとします。このケースでは、先に贈与を受けたAが当該不動産の権利については優先すると考える方も多いかもしれませんが、不動産の所有権の優先関係は、登記の先後によって決めることになります。そのため、先に名義変更を行ったBが当該土地の所有権については優先することになります。

    このように、登記を怠っているとせっかく取得した土地を失ってしまう可能性があるのです。

5、まとめ

土地の名義変更自体は、個人でも行うことができる手続きです。しかし、土地を取得する際の遺産分割などでトラブルが生じた場合には、専門家によるサポートが必要になります。将来、土地の取得で揉めることのないように、きちんと弁護士をはじめとした専門家に相談をしながら進めていいた方が安心です。

土地の相続や名義変更についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています