身元引受人になる条件はある? 弁護士へ依頼することは可能?

2020年07月10日
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身元引受人になる条件はある? 弁護士へ依頼することは可能?

被告人が保釈された際に、弁護士が身元引受人として警察に迎えに来ていた光景をニュースで見た方も多いのではないでしょうか。

逮捕されたのち、身元引受人を求められるタイミングがあります。家族がいない場合や、家族がいても遠方に住んでいるなどの理由で依頼が難しいとき、どうしたらいいのかご存じでしょうか。知人に身元引受人になるよう頼まれたら、どうすべきなのでしょうか。この記事では、あまり知られていない身元引受人について説明するとともに、身元引受人になる条件などを中心に、高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、身元引受人とは?

刑事事件における身元引受人とは、犯罪行為をしたり、逃亡したりするのを防止し、監督する人を意味しています。一般的に使用されていますが、法律上、明確に定義づけされているわけではありません。

具体的には、罪を犯した容疑がかかっている被疑者を警察署などへ迎えに行き、都度警察署からの呼び出しなどに従うよう監督する役目を果たす方が身元引受人と呼ばれています。

刑事事件において、罪を犯して逮捕された方は、送致、勾留を経て起訴され、裁判が始まっても特殊事情を除いては、判決が出るまで身柄拘束をされたままになります。無罪判決または執行猶予付の判決が出た場合は釈放されますし、有罪判決で懲役刑などになった場合は、刑務所に入ることになるのです。

しかし、すべての被疑者が身柄の拘束を受けたままでは、人権的にはもちろん、留置場や拘置所のスペースにも問題があります。そこで、刑事手続きの過程で帰宅を許可する場合などにおいて身元引受人が求められることになります。

2、身元引受人が必要となるのはどのようなケース?

身元引受人が必要となる場面は、主に以下が挙げられます。

  1. (1)逮捕されたあと

    逮捕されたあと、警察署などで取り調べが行われますが、軽微な犯罪の場合は微罪処分や在宅事件扱いになる場合があります。

    微罪処分とは、注意のみにとどまり、その場で帰宅できます。その後、刑事裁判にかけられることはありませんし、前科もつきません。他方、在宅事件扱いとは、本来ならば逮捕や勾留によって身柄を拘束されながら刑事事件が進められるところ、犯罪の種類や本人の反省などにより、在宅事件として処理され、社会生活を送りながら刑事手続きを受ける措置を指します。

    微罪処分や在宅事件扱いになるかどうかについては、軽微な犯罪と判断されることや監督する役目を果たす人がいるかどうかなどが判断要素になっているのです。

    具体的には、被害が少ない場合、犯行が計画的・悪質ではない、初犯、逃亡のおそれがない、家族や上司などの監督者がいることなどです。

    この監督者がいわゆる身元引受人になります。在宅事件の処理は、求められたときにきちんと警察署に出向くなどが必要となるため、身元引受人の存在が不可欠だといわれています。

    身元引受人がいれば、釈放される可能性が高まることがあるとおり、身元引受人の存在は、被疑者や被告人の状況に大きく影響します。

    そのため、家族が逮捕されたような場合は、弁護士に相談し、身元引受人として何かできることがないかなどアドバイスを受けることをおすすめします。

  2. (2)勾留前、裁判が始まる前に保釈を求めるとき

    勾留を回避したい際や、保釈を認められるために、身元引受人が求められます。

    まず、逮捕されたのち警察は、検察庁へ身柄と捜査記録を送致します。検察官が勾留請求を行わなかった場合、または、検察官が勾留請求をして、裁判所が請求を却下した場合は、在宅事件として取り扱われます。検察官は勾留が必要かどうかを、警察からの送致を受けてから24時間以内に判断します。勾留とは、身柄の拘束を行ったまま取り調べなどを行う措置です。裁判所が、検察からの勾留請求を認めれば、逮捕から最長23日間ものあいだ帰宅できなくなります。

    勾留は、罪証の隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき、逃亡するに足りる相当な理由があるとき、被疑者が定まった住居を有しないこと、などの要素がある場合、行われることになります。

    他方、保釈とは、本来、起訴後刑事裁判が行われているあいだ身柄を拘束されるのですが、保釈金の納付を条件として、自宅から裁判所へ通うことができるようになる措置です。保釈をしてもらうためには、裁判所へ保釈請求を行いますが、裁判所に認められるためには、いくつかの判断要素を満たす必要があります。

    たとえば、犯した犯罪が殺人などの重罪ではないこと、過去に長期の懲役刑などを科されていないこと、常習として罪を犯していないこと、証拠隠滅や被害者や証人に被害を与えると疑うに足りる相当な理由がないこと、居場所が明らかなこと、などが判断要素になるのです。

    身元引受人がいることが明らかであれば、勾留を回避する、もしくは保釈を認めてもらえる可能性が高まります。なぜなら、身元を引き受ける人がいることによって、逃亡や証拠隠滅、もしくは再犯などのおそれを防止する監督者がいることを主張できるためです。

  3. (3)執行猶予を求めるとき

    起訴され、刑事裁判が開始された場合、判決によって処遇が明らかになります。この判決は、懲役刑になったとしても、執行猶予がつく場合があります。執行猶予は、刑務所に身柄を拘束されることなく、社会生活を送りながら、罪を償うことができるという制度です。

    この執行猶予が認められる場合には、いくつかの要素がありますが、初犯であること、本人が反省していること、再犯のおそれがないことなどが挙げられます。

    薬物事犯などの場合、家族の存在で執行猶予がつけられる場合が多くなっています。これは、家族が身元引受人になり、再犯を防止する役割を果たすということが理由としてあるからです。

3、身元引受人に科せられる責任は?

上記により、身元引受人の存在はかなり大きいということはご理解いただけたでしょう。では実際には、法的にどのような責任があるのでしょうか。

  1. (1)責任は定められていない

    身元引受人の責任や役割については、法律などによって決められているわけではありません。なぜならば、身元引受人の求められる存在は、個々の事件ごとに異なるため、その役割が異なるためです。

  2. (2)被疑者などの監督

    身元引受人の責任や役割について、法で定められているわけではありません。しかし、大きな役割は、被疑者や被告人の監督を行うことです。罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれを防止するために、身元引受人の存在は大きくなっています。これらをさせないために、身元引受人があるため、身元引受人の役割はおのずとこうした被疑者や被告人に罪証隠滅や逃亡をさせないことなどになるのです。

  3. (3)身元引受人を降りることはできる?

    一度は引き受けた身元引受人であっても、辞退することができます。しかし、被疑者や被告人が不利な状況になることが多いため、不安ならば最初から引き受けない方がよいこともあるでしょう。

    身元引受人を引き受けるかどうか迷った場合は、弁護士に相談して決めることもできます。

4、身元引受人は誰がなれる?

身元引受人は誰がなれるのでしょうか。一般的には家族が思い浮かぶでしょうが、それ以外でもなることができます。

  1. (1)家族や親族

    身元引受人は、被疑者や被告人を身近で監督する役割があります。そのため、一緒に住んでいる家族が呼び出されることが多くなっています。同居していなくても、家族が身元引受人として連絡がいくことも多いでしょう。

  2. (2)友人や上司

    家族が遠方に住んでいる場合などは友人や勤務先の上司がなることもできます。ただし、勤務先の上司の場合は、犯罪を行ったことが会社にばれてしまい、社内の処分を受けるリスクがあります。

5、身元引受人になるとき覚えておくべきことや注意点は?

身元引受人を要請されると、身柄請書に身元引受人がサインする必要が生じますし、被疑者や被告人の監督という大きな責任を負うことになります。しかし、四六時中監督する必要はありませんし、そこまでするのは現実的に困難でしょう。

そのため、できる範囲で監督すればよく、実際に被疑者や被告人が罪証隠滅や逃亡をしたとしても、身元引受人が責任を問われることはありません。ただし、積極的に罪証隠滅や逃亡を手助けすると、身元引受人自身が幇助などの共犯として刑事責任を負う場合もありますので、注意が必要です。

さらに、保釈の場合に逃亡したときは、納めている保釈金が没取されてしまいます。保釈金を身元引受人が用立てた場合は、大きな損害になることがありうるのです。

6、まとめ

身元引受人は、被疑者や被告人の罪証隠滅や逃亡などを防止する監督人としての役割を担います。家族に依頼できない場合でも、友人や職場の上司に依頼することも可能です。他方、責任を果たせなくても、何か罪に問われることはありません。しかし、依頼を受けたとき、一定の不安を持つ方もいるでしょう。

身元引受人となるよう頼まれた、もしくは、家族が逮捕されて身元引受人になりたいけれど遠方のためどうしたらよいのかわからないとお困りのときは、ベリーベスト高崎オフィスまでお気軽にご相談ください。高崎オフィスの弁護士が力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています