会社法に違反する行為とは? 罪に問われる行為や罰則、逮捕の可能性を解説

2021年06月10日
  • その他
  • 会社法
  • 違反
会社法に違反する行為とは? 罪に問われる行為や罰則、逮捕の可能性を解説

高崎市は交通の拠点としても発展しており、群馬県内ではもっとも事業所が多い経済都市です(令和元年経済センサスより)。これから起業しようと考えている方、あるいはすでに会社を経営している方も多いでしょう。

会社経営はビジネスの手腕だけでは成立しません。各種の法令を遵守し、さらに社会的ルールに従って企業活動を行う「コンプライアンス」を重視する必要があります。

会社経営において必ず登場するのが「会社法」です。会社法の規定を理解していないと刑罰を受けてしまう事態にもなりかねません。本コラムでは、会社法の概要や会社法違反が成立するケースと刑罰、会社法違反に問われてしまった場合の日常生活への影響について、高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、会社法とは

「会社法」という法律は、たとえば民法や刑法などと比べるとなじみが薄いと感じる方も多いでしょう。どのような目的で制定されたものなのか、どのような内容が規定されているのかなど、まずは会社法について解説します。

  1. (1)会社法の目的

    会社法は、会社の設立、組織、運営および管理について定めた法律です(会社法第1条参照)。

    元々、これらの内容は商法や有限会社法、商法特例法などの個別の法律によって定められていました。しかし、さまざまな規定が法律別に散在しているため運用が難しく、しかもこれらの旧法は制定された時代が古くカタカナ表記が多いため読み解きにくいという問題がありました。

    そこで、法律別に散在していた規定をひとつの法律にまとめて運用しやすいかたちにまとめたかたちで作られたのが会社法です。

  2. (2)会社法に規定されている内容

    会社法は全8編・979条で構成する法律で、主に次のような内容が規定されています。

    • 用語の定義や会社の商号
    • 株式会社の設立や株式発行にかかる手順、株主総会の手続きおよびその規律、取締役の責任および権限等に関する規定
    • 持分会社に関する規定
    • 社債に関する規定
    • 会社の組織変更、合併、分割、株式交換・移転の手続きに関する規定
    • 外国会社に関する規定
    • 訴訟、登記、公告に関する規定
    • 規定に反したときの罰則


    実際の会社経営においては、会社の設立や会計帳簿の保管、募集株式の発行などで深く関係することになるでしょう。

2、会社法違反が問題となるケースと罰則

会社法は会社に関するさまざまな内容が規定されていますが、さらにいくつかの違反行為については罰則を設けています。
ここで挙げる行為があった場合は会社法に違反することになり、各罰条に応じて罰則が科せられます。

  1. (1)特別背任罪

    会社法第960条・961条は「特別背任罪」について定めています。

    特別背任罪とは、一定の立場にある者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をして、株式会社に財産上の損害を加える犯罪です。

    刑法第247条にも「背任罪」が規定されていますが、会社法における特別背任罪が適用されるのは、次の立場にある者に限られます。

    【第960条:取締役等の特別背任罪】
    • 発起人
    • 設立時取締役または設立時監査役
    • 取締役・会計参与・監査役・執行役
    • 仮処分命令によって選任された取締役・監査役・執行役の職務を代行する者
    • 役員の欠員によって裁判所に選任された一時取締役・会計参与・監査役・代表取締役・役員・執行役・代表執行役
    • 支配人
    • 事業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人
    • 検査役
    • 清算株式会社の清算人・清算人代理・監督委員・調査委員

    【第961条:代表社債権者等の特別背任罪】
    • 代表社債権者
    • 決議執行者


    ここで挙げたように、会社の運営において重要な立場にある者が、不正融資や不正取引、不良債権の貸付などをはたらいて会社に損害を与えると、特別背任罪が成立する可能性があります。

    罰則は、第960条にあたる立場であれば10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科、第961条にあたる立場では5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその併科です。
    刑法の背任罪では5年以下の懲役または50万円以下の罰金であり、一般の従業員などが背任行為をはたらいたときよりも格段に重い刑罰が科せられます。

    なお、これらは未遂の場合でも有罪になれば処罰を受けるので注意が必要です(会社法第962条)。

  2. (2)株式などに関する不正行為

    会社の運営において一定の立場にある者が株式などに関する不正行為をはたらいた場合は次の罪に問われます。

    ●虚偽文書行使等の罪(第964条)
    株式・新株予約権・社債などの募集において、会社の事業などを説明する資料や文書として虚偽の記載があるものを行使した場合に成立します。
    法定刑は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。

    ●預合いの罪(第965条)
    株式の発行にかかる払い込みを仮想する目的で「預合い」をした場合に成立します。
    預合いは、実際には現金が移動せず銀行などにおいて帳簿上の操作が行われるにすぎない不正行為です。
    預合いをした者には5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
    また、預合いに応じた者も同様に処罰されます。

    ●株式の超過発行の罪(第966条)
    発起人、取締役等の一定の立場にある者が、株式会社が発行できる総数を超えて株式を発行した場合に成立します。
    法定刑は5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。

  3. (3)贈収賄罪(第967条)

    取締役・会計参与・監査役・執行役などの立場にある者が、不正の請託を受けて財産上の利益を収受し、またはその要求もしくは約束をした場合は、会社法第967条1項の「収賄罪」が成立します。

    利益を供与・申し込み・約束した者には同条2項の「贈賄罪」が適用されます。

    それぞれの法定刑は次のとおりです。

    • 収賄……5年以下の懲役または500万円以下の罰金
    • 贈賄……3年以下の懲役または300万円以下の罰金


    刑法の贈収賄罪は対象が公務員に限られていますが、会社法における贈収賄罪では会社役員なども処罰の対象に含まれています。

3、会社法に違反すると逮捕されるのか?

新聞・ニュースなどでは「会社法違反で容疑者が逮捕された」といった報道が流れることがあります。会社法に違反すると、必ず逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)逮捕の要件

    「逮捕」とは、罪を犯した被疑者の身柄を拘束する強制手続きのひとつです。処罰の一種ではありません。

    したがって、容疑があれば必ず逮捕されるというわけではありません。逮捕されるケースは、要件を満たす場合に限られます

    逮捕の要件となるのは、次の2点です。

    • 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
    • 逮捕の必要性があること


    「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」とは、犯罪にあたる行為があったと疑う客観的・合理的な根拠がある状況を指します。税務調査の結果や内部告発などの情報をきっかけに捜査機関が証拠を集め、容疑が固まれば、逮捕の理由が存在することになるでしょう。

    「逮捕の必要性」とは、被疑者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあるなど、身柄を拘束する必要がある状況を指します。

  2. (2)損害の程度や不正の内容が重視される

    特別背任では会社に与えた損害額が、贈収賄では賄賂の金額も逮捕の必要性に影響を与えるでしょう。損害額・賄賂の金額が大きくなれば、裁判官の量刑も重く傾く可能性があるため、重罪から逃れようと逃亡・証拠隠滅を図るおそれが高まると考えられてしまうのです。

4、日常生活への影響を抑える方法とは?

会社法違反の容疑をかけられて逮捕される事態になれば、役員を解任されてしまったり、取引先からの信用を失ってしまったりといった経済的な不利益を被ることになるでしょう。また、会社名とともに実名で報道されてしまうおそれがあり、日常生活が息苦しいものになってしまうはずです。

経済的な不利益や日常生活への影響を抑えるためには、弁護士への相談をおすすめします。

  1. (1)逮捕の回避に向けたサポートを受ける

    弁護士に相談すれば、逮捕の理由や必要性を否定するための弁護活動によって、逮捕による身柄拘束を避けられる可能性があります

    容疑に対して積極的に証拠を提出し、任意での事情聴取や取り調べにも応じる姿勢を示しておけば、逮捕の理由は明らかでも捜査に協力的な姿勢が評価され、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されて、身柄拘束の必要性がないと判断される可能性があります。

  2. (2)過剰な刑罰を避けるためのサポートを受ける

    特別背任や贈収賄など、会社法違反には厳しい刑罰が規定されています。

    刑罰を受ける事態を避けるためには「起訴されないこと」が重要です。会社への損害について全額弁済している、受け取った賄賂を全額返還しているなど、起訴を回避するための行動を尽くす必要があります。

    ただし、会社法違反は社会的に厳しく非難されるものであり、検察官が起訴に踏み切る可能性も否定できません。

    刑事裁判に発展すれば、刑罰の軽減や執行猶予の獲得を目指す必要があります。法廷で深い反省や情状証拠を示すには、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士のサポートが欠かせません。

5、まとめ

会社法では、会社の設立や運営の取り決めの根拠として機能する一方で、特別背任や贈収賄といった不正行為に対する罰則も定められています。不正行為を疑われて会社法違反の容疑をかけられてしまうと、厳しい刑罰が科せられるだけでなく、役員の座を追われる、社会的信用が失墜するなど、さまざまな不利益が生じます。

日常生活にも多大な悪影響を及ぼすでしょう。会社法違反の容疑をかけられた場合は、直ちに弁護士に相談してサポートを求めることをおすすめします。

会社運営のなかで取った行動について会社法に抵触する可能性があるかどうかなど、そもそも法に触れないような企業活動を行うためのアドバイスも可能です。まずはお気軽にベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています