養育費の相場と算定基準は? 受け取る際の注意点を弁護士が解説!
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高崎市でも離婚届出件数が年間622件(平成28年)もあることから、離婚や養育費の問題でお悩みの方は少なくないはずです。離婚も再婚も珍しくはなくなってきた昨今ですが、子どもがいる方の場合、やはり最後まで不安を拭えないのは養育費の問題でしょう。特に親権者になることが想定される場合、「子どもに不自由な生活だけはさせたくない」とできるだけ高い養育費を請求したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は養育費の相場や、養育費の不払いを回避するための対処法など、養育費にまつわる不安を持っている方向けに、押さえておきたい基礎知識について、高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費とは
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(1)養育費の意味
養育費とは、子どもが社会的に自立するまでの間にかかる、養育に必要不可欠となる、さまざまな費用を指します。衣食住に必要な費用はもちろん、教育費、医療費など、子どもを養育するためには何かとお金が必要です。夫婦は離婚しても父母には子どもを扶養する義務があるので、子どもは養育費を受ける権利があります。
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(2)養育費の受け取り
養育費の受け取り方法は、手渡しや振り込みなどの方法がありますが、一般的には親権者が月々決まった額を受け取り、親権者が何にいくら使うのかを決めることが多いようです。
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(3)養育費は離婚の有責者が負担する?
養育費はあくまでも子どもの親がふたりで負担するべきものです。したがって、妻の不貞行為が原因で離婚し、妻が親権者となった場合でも、夫は「妻に離婚の責任があるのだから養育費も全額負担してほしい」などと主張することはできません。
不貞をした妻の責任は夫への慰謝料などでまかなわれますし、そもそも法律上では離婚原因と子どもの扶養義務は別の問題だからです。婚姻費用については配偶者の有責性が考慮されることはありますが、有責配偶者が養育費における負担義務を負うわけではないのです。
2、養育費の算定方法
養育費は離婚する際の話し合いによって、家庭ごとに自由な額を定めることができます。そのため、毎月20万円以上の養育費になるケースもあれば、養育費の金額が1万円になるケースもあるでしょう。
しかし、話し合いや調停で決着がつかなければ家庭裁判所の決定に従うことになります。全国の家庭裁判所では参考資料として「算定表」を用いており、主には次の要素が額の決定に影響を与えます。
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(1)夫婦の年収
両親双方の年収が考慮されます。義務者の年収が高く、権利者の年収が低いほど養育費は高額になります。
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(2)子どもの人数
養育する子どもの人数が多いほうが養育費は高くなります。ただし、子どもがひとり増えたからといって、単純に養育費が2倍になるわけではありません。
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(3)子どもの年齢
一般的に子どもの年齢が高いほど養育にかかる費用が増えるので、養育費も高くなります。
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(4)支払いの期間
養育費をいつまで支払うかは、法律では定められていません。ほとんどのケースでは、子どもが20歳になる月までと定めていますが、子どもが大学に行くケースでは「大学卒業まで」「22歳になるまで」などと取り決める場合があります。逆に、支払期間を「18歳まで」と取り決めることもあります。
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(5)そのほか個別の事情
算定表は養育費決定の指標とされていますが、あくまでも簡易迅速に算定するためのツールです。必ずしも算定表の通りに決定するわけではありません。
たとえば、次のようなケースでは個別の事情を考慮され、算定表より低くなる可能性があります。- 義務者が住宅ローンを支払っているが居住しているのは権利者と子どもたちだけの場合
- 祖父母の元で裕福な生活ができている場合
- 義務者者の退職が決まっており今後収入が減ることが予測される場合
3、養育費の相場について
養育費の相場は夫婦の収入や子どもの状況によって変わるので、一概にいくらと述べることはできません。しかし、算定表の存在がひとつの判断材料とされていることは事実です。高額の養育費を請求しても、裁判になれば実情に見合った養育費で落ち着く可能性が高いでしょう。
なお、養育費の算定表は、現在の社会情勢などを顧みて、2019年12月23日に改定されました。ここでは、小学生の子どもがひとりいる夫婦が離婚した場合、子どもを引き取り親権者となった妻が、会社勤めの子どもの父親から受け取れる月々の養育費相場を年収別に見てみましょう。なお、会社員と自営業者では年収の計算過程が異なります。たとえば、同じ収入でも自営業者のほうが、養育費が高くなることがあるのでしっかり確認したほうがよいでしょう。
- 夫の年収が500万円、妻の年収が100万円のケース……4~6万円
- 夫の年収が300万円、妻の年収が100万円……2~4万円
- 夫の年収が100万円、妻の年収が500万円……0~1万円
上記はあくまでも目安ですが、個別の状況によって変化することがよく分かります。ご自身の状況におけるおおよその養育費を知りたい方は、以下の養育費計算ツールで計算できますので参考にしてください。
養育費計算ツール(令和元年版)
4、養育費を決める際の注意点
ここまで養育費の金額面について取り扱ってきましたが、養育費の受け取りの注意点についても解説しておきます。できるだけスムーズな受け取りにつなげるためにも、ぜひ押さえておきましょう。
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(1)公正証書を作っておく
養育費について取り決めたにもかかわらず、義務者からの支払いが滞ってしまうケースが多く、社会問題になっています。これは子どもの扶養は法的義務であるものの、不払いによって直接的な罰則があるわけではないことが原因のひとつです。
不払いを避けるためには離婚協議書を残し、公正証書にしておきましょう。万が一不払いとなってしまった場合、裁判を起こさなくても給与や預金の差し押さえなどの強制執行ができ、回収がスムーズになります。公正証書の存在が義務者へのプレッシャーともなり、正当な理由なく不払いをすることへの抑止力にもなるでしょう。
なお、公正証書は双方の合意が必要で、公証人によって法的な有効性や内容の不備などが厳重に確認される書類です。相手が合意しない、書類の誤りで何度も公証役場に通うといったことを避けるためにも、弁護士などの専門家に相談しながら作成するとよいでしょう。 -
(2)相手が継続して払える金額に設定する
今後の生活に備えるためにも、高額の養育費を請求したい気持ちはよく分かります。しかし、相場からかけ離れた養育費を請求すると相手方に無理が生じ、支払いが滞るリスクがあります。
公正証書があれば給与差し押さえなどができますが、そもそも義務者の生活に支障をきたすほどの金額であればそれも難しくなります。裁判に発展した場合、話し合いの結果よりも低い金額になってしまう可能性もありますので、支払う側が無理のない範囲で決めることも重要です。 -
(3)子どもの利益を最優先に
離婚した相手への嫌悪感が募り、子どもを会わせたくないと考える方もいるでしょう。しかし、子どもにとっては大切な親のひとりです。離婚した経緯や事情はそれぞれですが、離婚した相手に定期的に子どもを会わせるなど、可能な限り良好な関係性を築いておくことをおすすめします。
もちろん、虐待の可能性がある場合などは、会わせることに危険が伴うと考えられるケースもあるでしょう。その場合でも、義務者は養育費の支払いを拒絶することはできません。しかし、個人的な感情を優先させるのではなく、あくまでも子どもを最優先に考えることは忘れないでいただきたいところです。
5、まとめ
今回は養育費の相場や、受け取る際の注意点を紹介しました。いくらの養育費が適切なのかは個々の事情によって異なりますが、相場や注意点を知っておくことで、養育費を確実に受け取れる可能性が高くなるでしょう。
お互いの話し合いで満足のいく金額にスムーズに決まればいいのですが、相手が支払いを渋ったり、支払いが滞ったりしそうな可能性がある場合は、離婚や養育費の問題に対応した経験が豊富な弁護士に相談して、公正証書などの書類をしっかりと作成しておくとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士も、随時ご相談をお受けしています。養育費について疑問や不安を抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています