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成年後見人がついている配偶者と離婚する方法は? 弁護士が教えます

2020年05月22日
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成年後見人がついている配偶者と離婚する方法は? 弁護士が教えます

認知症や重度の精神障がいなどで判断能力が低下した人には、財産管理や法律行為を代理する成年後見人がつけられる制度があります。成年後見人制度は、高崎市を含む群馬県前橋周辺でも広く利用されています。司法統計によると、平成29年度中に前橋地方裁判所で取り扱われた家事審判や調停のうち「後見人等の選任」は163件。そのうち、「成年後見人の選任」が92件となっています。

病気や障がいを持っている配偶者と離婚するのは、見捨てるようで心苦しく感じるかもしれません。しかし法律では介護する方の苦労にも配慮して、一定の場合に裁判上の離婚も認めています。ただし、成年後見人がついている配偶者と離婚する場合には、通常の離婚とは異なる注意点がいくつかあります。本コラムでは、成年被後見人との離婚について、高崎オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、配偶者に成年後見人がついている状態でも離婚できるのか

  1. (1)後見制度とは

    後見制度とは、認知症や精神疾患、精神障害などが原因で判断能力が低下している人を保護し、支援する制度です。後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。法定後見制度には、判断能力の程度に応じて、成年後見、保佐、補助の3つ類型があります。法定後見制度では、家庭裁判所により選任された成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して、財産管理や法律行為をしたり、本人の法律行為に対して同意を与えたり、同意を得ずになされた本人にとって不利益な法律行為を取り消したりします。
    このうち、成年後見人が選任されるケースは、本人が、精神上の障害により、判断能力が欠けているのが通常の状態の方の場合です。

    成年後見人は、本人のためにどのような保護、支援が必要かに応じて家庭裁判所が選任します。本人の親族以外にも、弁護士や司法書士、その他福祉の専門家が選ばれる場合もあります。成年後見人の行為を監督する成年後見監督人が選ばれることもあります。

    任意後見制度は、本人が判断能力の十分あるうちに、将来、判断能力が欠けた状態に備えてあらかじめ自ら選んだ後見人に自分の療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与えるものです。この場合、公正証書に残す必要があります。

    以下では、法定後見制度を前提に話を進めてまいります。

  2. (2)法定離婚事由があれば離婚できる可能性あり

    軽微な障がい・病気のみを理由に、一方的に離婚することはできません。

    しかし、長期間にわたって献身的に介護をし続けてきたものの、回復の兆しがない、あなたのことを認識できないとなると、どうでしょうか。病気になった本人には落ち度がないとはいえ、片方だけが一方的に負担を強いられることになります。介護疲れが原因で、うつ病などの病気になってしまうこともあるでしょう。

    肉体的・精神的・経済的に過酷な介護を経て疲れ切っても離婚が認められないというのは、あまりにも酷です。

    そこで民法第770条第1項第4号では、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」には裁判手続による離婚を認めるとしています。これは、裁判上で離婚が認められる「法定離婚事由」のひとつです。法定離婚事由はそのほかに、「不貞行為」、「悪意の遺棄」、「3年以上生死不明のとき」「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があります。

    夫婦の話し合いによる「協議離婚」や「調停離婚」では、夫婦の双方が合意しなければ離婚はできません。しかし、裁判手続による離婚の場合、相手に法定離婚事由があれば、相手が合意しなくても離婚が認められます。

    なお、第4号の「強度の精神病」として認められているのは、躁うつ病や統合失調症、偏執病などの深刻な精神疾患のみに限られます。それ以外のアルツハイマー型をはじめとした認知症や、重度の身体障がいなどについては第5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として扱われるケースが多いでしょう。

  3. (3)実際には離婚が難しいことも

    第4号の「回復の見込みがない強度の精神病」による離婚は、実際には裁判所に認められにくく、“非常に狭き門である”と言われています。

    例外的に認められた事例としては、経済的余裕がない中で病気の妻を介護しながら、幼い子どもを育て、妻の成年後見人である妻の父親へ過去の療養費を支払っていた男性からの離婚請求があります。この事例では、妻の実家が裕福であり経済的心配がないこと、原告男性が離婚後も介護に協力する姿勢を示したことなどの事実があることから、精神病を利用とした離婚が認められました(最高裁昭和45年11月24日判決)。

    病気や障がいを持つ配偶者との離婚が裁判所に認められるためには、以下の要素が重要になるでしょう。

    • これまで誠心誠意看護・介護をしてきた事実
    • 離婚後に配偶者が困窮することのないよう、サポートする約束をする
    • 離婚後に配偶者の治療・生活が保証されていること(実家が引き取る等)
    • 病気が回復する見込みがないこと
    • 夫婦生活が破たんしていること


    第4号では無理だったとしても、第5号「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」で離婚が認められるケースがあります。

    アルツハイマー型認知症が第5号に該当するとして離婚が認められた過去の裁判例があります。本件では、献身的に看護してきた事実、離婚後も老人ホーム費用の全額負担など経済的援助を約束したことなどが評価されました(長野地裁平成2年9月17日判決)。

    夫婦間の乗り越えがたい事由には法律に挙げきれないほどさまざまなパターンがあるものです。そのため、実際の夫婦関係や離婚事由は、第1~4号だけでは分類しきれないほど多種多様であることから、第5号に「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」が規定されています。病気以外の事情等も加味して判断されることになるので、病気以外にも、DVやモラハラ等の事情があれば積極的に主張していくべきでしょう。

2、成年後見人がついている配偶者との離婚手続き

  1. (1)話し合いができるなら協議離婚が可能

    配偶者に成年後見人がついている状態でも、離婚の意味を理解し、意思表示ができることもあります。その場合は、夫婦の話し合いによる「協議離婚」が可能です。相手が合意して離婚届に記入してくれれば、離婚成立となります。

    離婚などの「身分行為」は財産管理や法律行為ほど理解が難しくないこと、そして性質上本人の意思を尊重すべき行為であることから、成年後見人の同意なしで行うことができると定められています(民法第738条)。

  2. (2)話し合いができない状態のときは裁判離婚の手続きを進める

    離婚について理解も意思表示もできない場合には、成年後見人を相手に離婚訴訟を提起することになります(人事訴訟法第14条第1項)。成年後見人は身分行為の代理をすることはできませんが、訴訟なら代理できます。他方、もしあなた自身が配偶者の成年後見人である場合には、成年後見人を監督する「成年後見監督人」を相手に訴訟を提起します(人事訴訟法第14条第2項)。

    基本的に、離婚をする際には“調停前置主義”と言って、訴訟の前に必ず離婚調停を行うことがルールとなっています(家事事件手続法257条第1項、第2項)。しかしこのようなケースでは調停で話し合いを行うことが不可能であるため、いきなり訴訟を起こすことになります(同条第2項但書)。

    ただし前述の通り「法定離婚事由(民法第770条第1項第4号または5号)」として裁判官を納得させなければ、離婚が認められないおそれがあるでしょう。裁判では、これまでの経緯や離婚後の経済的見通しなどが総合的に判断されます。

3、離婚までのプロセスと注意点

話し合いでまとまらない場合には、まず弁護士に依頼して、成年後見人(または成年後見監督人)を相手に離婚訴訟を提起してもらいましょう。訴状には、「法定離婚事由」の第4号または5号を記載することになります。裁判官を納得させるために、以下のような証拠をあらかじめ用意しておくことも大切です。

  • 回復の見込みがないことを証明する医師の鑑定書
  • 長期間にわたって献身的に看護を続けてきたことを示す資料
  • 離婚後も一定のサポートを続けていくことを示す資料


訴訟を提起してから約1か月後、第一回口頭弁論が行われます。その後月1回のペースでお互いの主張を述べ、裁判官がもう十分だと判断したところで「結審」となります。

その後約1か月後に判決が下され、判決書が原告・被告(成年後見人、または成年後見監督人)のもとに届きます。離婚を認める判決書が届いた場合、互いに控訴せず2週間たつと、判決が確定し、離婚が成立します。
離婚が成立したら、10日以内に夫婦の本籍地(住所地)の役所に離婚届・判決書謄本・判決確定証明書を提出して離婚手続を行います。

4、まとめ

不倫・DVによる離婚と違って、重い障がい・病気は本人に責任はありません。そのため裁判所も慎重に判断を行う傾向があり、離婚成立が難しいケースは少なくないでしょう。離婚後の生活についても配慮した上で、離婚を主張していく必要があります。

成年後見人制度が絡んでいる場合、通常の離婚と比べて複雑になるため、スムーズに離婚ができるとは言いがたいと考えられます。ひとりで悩まず、高崎オフィスの弁護士に相談してください。状況に適したアドバイスをすると共に、あなたの希望をかなえられるようサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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