不倫相手が認知をしてくれない! 子どもの将来を守るためにできること
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税法上、同じひとり親家庭であっても、離婚後ひとり親家庭になった世帯が受けられる控除が、未婚のままひとり親家庭になったケースでは受けられないことがあります。しかし、高崎市では、未婚のひとり親の方でも離婚後ひとり親家庭となった方と同様の控除が受けられるよう、寡婦(夫)控除のみなし適用を実施しています。もし申請していなければ、問い合わせてみてはいかがでしょうか。
あなたが子どもをひとりでも産み育てると決めたものの、相手に認知してもらえないのであれば、不安や憤りを感じる方は少なくありません。前述のとおり、未婚の親に対する法整備はいまだ不安定ですし、世間の目が冷たいと感じることもあるでしょう。子ども自身人生にかかわる可能性から、せめて子どもだけは認知してほしいと願うことは、親としてごく自然な願いです。
子どもの将来を守るため、実際に認知を拒む相手に認めさせるためにはどのような方法があるのでしょうか。そもそも、認知させたほうがよいのかどうかという点も含め、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、認知とは?
結婚していない女性が子どもを産んだ場合、その子どもは、「非嫡出子」「婚外子」などと呼ばれます。何の手続きも行わなければ、戸籍上、父親が存在しない状態になっているのです。
そもそも、「認知」とは、法律上婚姻関係にないふたりの間に生まれた子どもに対し、父親が「自分の子どもだ」と法的に認めることをいいます。認知がされると、出生した時点にさかのぼって法律上の親子関係が生じることとなります。
法律上の父親は、遺産相続や養育費に大きな影響があります。また、子どもが大きくなってから「父親は誰?」と聞かれたときに、認知の手続きがとられているかどうかで、子ども自身の受け止め方が変わる可能性が考えられるでしょう。
2、認知の種類は?
子どもの認知をしてもらう場合、具体的にはどのような認知の種類があるのでしょうか。
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(1)任意認知
任意認知とは、父親が自らの意思で「自分の子どもである。」認めることを言います。この場合、市役所等に「認知届」を提出することになります。
この届出は、母親の承諾があれば母親の妊娠中から提出することができます(民法第783条第1項)。
また、既に子どもが成人していた場合は、子ども自身の承諾が必要です(民法第782条)。
子どもが死亡していた場合も、その子どもに直系の子孫(直系卑属)がいれば、死後でも認知できます(民法第783条第2項)。死後に認知を受けて親子関係が成立すれば、直系の子孫にも相続関係が生じます。なお、直系の子孫が既に成人していた場合には、その子孫の承諾が必要になります。 -
(2)強制認知
強制認知とは、父親が子どもを認知しない場合、父親に対して法的な措置をとることで、強制的に認知させることをいいます。この場合、客観的に、父子関係があることを立証する必要があります。
まずは、強制認知をするためには、裁判所に認知の調停を申し立てます。調停前置主義がとられているため(家事事件手続法第257条第1項)、いきなり訴訟を提起することはできません。相手が調停に応じないときは、改めて認知を求める訴訟を提起します。
訴訟では、DNA鑑定などの結果などを鑑みて、親子関係の確定を受けることができます。判決で、親子関係が認められた場合は、子どもの住所か本籍地にある市町村役場に認知届を出しましょう。この手続きをしなければ、最終的に認知されたことにならないのです。 -
(3)子どもの父親が死亡した場合
存命中はさまざまな事情で認知できなくとも、遺産を渡すために遺言書で子どもを認知するというケースは少なからずあります。
①遺言による認知
遺言書による認知は「遺言認知」と呼ばれます。これにより認知された子どもは、法定相続人として相続の権利を得ることとなります。ただし、遺言書の書き方には民法で厳密な定めがあるため、有効な遺言書であるかどうかも重要です。もしも、父親が遺言書での認知を考えているのであれば、弁護士などに相談しながら作成することをおすすめします。
②死後認知訴訟
父親の存命中、認知がなく、遺言による認知もない場合、認知を求めて訴訟を提起することが可能です。
先ほど述べたとおり、認知は原則として、調停を申し立てる必要があります。しかしながら、父親が死亡している場合、協議による合意形成は考え難く、例外的に調停前置主義が適用されなくなります。そのため、死後認知の場合、初めから調停ではなく、訴訟を提起することになります。
この場合、既に父親が死亡しているので被告は、検察官となります。訴訟を提起すれば、DNA鑑定が実施されることがほとんどです。その結果親子関係が認められれば、認知の判決が下されます。
ただし、死後認知は、父親の死亡した日から3年以内に、訴えを提起する必要があります(民法第787条但書)。
3、認知しない父親に子どもを認知させるメリットとデメリット
子どもを認知させるメリットとデメリットを改めて考えてみましょう。
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(1)子どもを認知させるメリット
第1に、子ども自身のアイデンティティーに役立つ可能性があります。子どもにとって自身の父親が誰であるかは、特に思春期を迎えたころには大きな課題になりえます。法律上父親がはっきりしていることは本人にとってプラスになりえると考えられます。
第2に、経済的な面のメリットが考えられます。認知されれば、子どもが未成年であれば養育費を求める権利が、父親が他界したときには相続の権利が生じるためです。
親子であれば、たとえ同居していなくとも子どもを扶養する義務が法律で定められています。認知させる際、養育費についても取り決めて、公正証書にして残しておくことをおすすめします。さらには、父親が亡くなった場合、法定相続の話し合いにも参加できますし、嫡出子と同等の権利を主張できます。 -
(2)子どもを認知させるデメリット
認知によるデメリットもありえます。
先述のとおり、認知されると、法律上の親子関係が生じるため、子ども自身が相互扶養義務を負うことになります。子どもが大人になってから、父親自身に何かあれば扶養しなければならない可能性があるということです。また、もし父親が借金を残して亡くなっていれば、早急に相続放棄の手続きをしないと、借金を相続してしまうことになりかねません。
相手によっては認知させないほうが、子どもの将来にとってベストな選択になりえるケースも考えられるのです。
4、離婚後300日以内の出産で気を付けるべきこと
以前はDNA鑑定という手段がなかったため、民法第772条によって嫡出の推定方法が定められています。具体的には、母親が別の男性と離婚してから300日以内に子どもを産む場合は、注意が必要です。婚姻の解消後300日以内に出産した場合、出生届を出すと実際には血縁関係がないにもかかわらず自動的に元夫が父親になってしまうのです。
ただし、夫が長期の海外出張、受刑、別居等で子どもの母との性的交渉がなかった場合など、妻が夫の子どもを妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合には、家庭裁判所に子どもから実父を相手とする認知調停の申し立てをすることができます。その際、医師に「懐胎時期に関する証明書」を作成してもらう必要があるでしょう。
または、元夫が子どもの父親ではないとする「嫡出否認調停」「親子関係不存在確認調停」を申し立てる方法もあります。
5、シングルマザーが知っておくべき給付金の手続き
たとえ子どもを認知してもらったとしても、母親ひとりで子どもを育てていくのは大変なことです。国から必要な給付金を受け取る手続きを忘れずに行いましょう。
まずは現住所の区役所や役場に問い合わせてください。窓口に行く場合は、印鑑と身分証明書、振込先銀行口座がわかるものを持参するとよいでしょう。
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(1)児童手当
「児童手当」は中学校卒業前の子どもを持つ世帯に給付されます(所得制限あり)。
児童手当は出生から15日以内に申請するようにしましょう。申請が遅れると、原則的に申請前の月の手当は受け取れなくなってしまいます。また、毎年6月に「現況届」を提出する必要があります。 -
(2)児童扶養手当
「児童扶養手当」は、いわゆるひとり親家庭の生活の安定と自立の促進、児童の福祉の増進をはかり支給される給付金です。18歳に達する日以降の最初の3月31日まで児童を監護している親が受け取ることができます。前述の児童手当同様、所得制限や、受給資格が定められているので、まずは窓口に問い合わせてください。
他にも、行政に相談すれば、ひとり親家庭の医療費助成制度、母子家庭向けの住宅あっせん、母子家庭等自立支援、就労支援なども受けられるでしょう。さまざまな支援が用意されています。ひとりで悩まず、まずは高崎市役所へ足を運び、子ども家庭課などの窓口で相談してください。
6、まとめ
子どもの認知は、子ども自身のアイデンティティーや養育費や相続など子どもが受け取れるお金に大きく関係するものです。しかしながら、認知を求める相手によっては子どもにとっての足かせになりかねない点に注意が必要です。
スムーズに認知してくれない相手に認知を求めるのであれば、まずは弁護士に相談してください。法律に慣れていない素人が認知のための調停・裁判を起こす労力は非常に大きなものです。弁護士に依頼することで、養育費などの面も含め、子どもにとってよりプラスとなるよう、条件交渉を進められるでしょう。
まずはひとりで悩まず、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスで相談してください。子どものより良い未来のため、全力でサポートします。
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