離婚するとき住宅ローンの連帯保証人から外れる方法はある?
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群馬県が令和2年3月に公表した「群馬県住宅確保要配慮者賃貸住宅供給促進計画」によると、群馬県は全国の中でも世帯に占める、外国人世帯、子育て世帯、母子父子世帯の割合が高いということです。
婚姻中、自宅を購入した場合、住宅ローンを利用する夫婦が多いでしょう。中でも、「夫が主債務者、妻が連帯保証人」になるケースが多く存在すると考えられます。円満に婚姻生活を送っているのであれば、特に問題はありませんが、夫婦仲が悪化し、離婚を検討する際には、連帯保証人となっていることがネックになることがあります。離婚時に住宅ローンの連帯保証人を外す方法はあるのでしょうか。
今回は、離婚時に住宅ローンの連帯保証人を外す方法について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚のとき住宅ローンが残っているケースのリスク
離婚をする際には、住宅ローンが残っていることによってスムーズに離婚の話し合いが進まないことも珍しくありません。それは、住宅ローンが残っている状態で離婚をすると以下のようなリスクがあるからです。
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(1)住宅ローンの滞納によるリスク
住宅ローンを借りるときに夫婦の一方が主債務者となり、他方が連帯保証人になることがあります。連帯保証人は、主債務者と連帯して返済義務を負うことになりますので、主債務者が支払いを怠った場合には、債権者から連帯証人に対して請求がなされることになります。
住宅ローンの場合には、一般的に自宅である土地と建物が担保にとられています。そのため、住宅ローンの滞納があった場合には、金融機関または保証会社によって自宅を競売にかけられて強制的に売却され、その売却代金が住宅ローンの支払いに充てられることになります。競売にかけられますと任意に売却する場合にくらべ売却価格は低くなります。
売却代金で住宅ローンを全額返済することができれば問題ありません。他方で、売却代金を充当しても住宅ローンが残っていれば、連帯保証人は住宅ローンの残金の支払いを行っていかなければなりません。
連帯保証人も住宅ローンの支払いができない場合には、債権者から強制執行の申立てをされ、最悪のケースでは給料や預貯金が差し押さえられてしまう可能性もあります。 -
(2)名義人が自宅を出て行くことのリスク
主債務者である夫が自宅を出て行き、妻と子どもが自宅に住むという条件で離婚をすることがあります。住宅ローンが残っていない状態であれば、夫婦の合意のみでそのような内容を取り決めることができますが、住宅ローンが残っている場合には、慎重に行う必要があります。
一般的に、住宅ローンを利用する際には、主債務者が自宅に居住することが契約条件となっています。したがって、金融機関の同意を得ることなく、勝手に主債務者が自宅を出て行ってしまうと、契約違反を理由に住宅ローンの一括返済を求められるリスクがあります。住宅ローンの一括返済を求められても支払うのは困難ですので、自宅を失ってしまうことになります。 -
(3)名義変更のリスク
財産分与によって、自宅をもらうことになった場合には、自宅の名義変更をするのが一般的です。住宅ローンが残っている状態であっても、自宅の名義変更をすること自体は可能ですが、それにはリスクがありますので注意が必要です。
住宅ローンの利用時には、担保となっている自宅の名義変更をする際には金融機関の承諾を得ることが契約条件となっているのが一般的です。そのため、離婚をしたからという理由で金融機関の承諾を得ることなく勝手に名義変更をしてしまうと、最悪のケースでは、契約違反を理由として住宅ローンの一括返済を求められるリスクがあります。
名義変更の承諾を得ることができるかどうかについては、金融機関によって異なってきますので、事前に確認をしてから手続きを進めるようにしましょう。
2、連帯保証人になっているとき検討すべきこと
ご自身が住宅ローンの連帯保証人である場合には、以下の点を検討する必要があります。
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(1)どちらが自宅に住むのか
夫婦の共有財産として自宅がある場合には、離婚後にどちらが自宅に住むのかを決める必要があります。自宅の名義人でありかつ住宅ローンの名義人がそのまま自宅に住み続けるのが住宅ローンとの関係では問題が起こりませんが、場合によっては、名義人が自宅を出て行くというケースもあります。
名義人が自宅を出て行く場合には、住宅ローンの契約条件を確認し、金融機関の承諾が要件となっているような場合には、事前に金融機関に相談をすることが大切です。 -
(2)どちらが住宅ローンの支払いをしていくことになるのか
住宅ローンを借り入れた金融機関との関係では、住宅ローンを借りた者、すなわち主債務者が住宅ローンの支払いを継続していくことになります。しかし、離婚時に夫婦の取り決めで、主債務者ではなく他方の配偶者が住宅ローンを負担するという取り決めをすることがあります。たとえば、主債務者が自宅を出て行き、他方の配偶者が子どもと一緒に自宅に住むというような場合です。
このような場合には、自宅に居住する対価として一定の金銭を支払うのが一般的ですが、どの程度の金額を支払うのかなど支払いに関する条件をしっかりと決めておかなければ、後々トラブルになる可能性があります。
なお、夫婦間で住宅ローンの負担に関する取り決めをすることはできますが、債権者である金融機関にはその取り決めを主張することができませんので注意が必要です。 -
(3)連帯保証人の扱いをどうするのか
離婚によって夫婦は他人と同様の関係になりますので、連帯保証人は元配偶者の債務を保証するメリットはなくなります。そのため、離婚時には、連帯保証人を外して欲しいと考えるのが通常ですが、連帯保証契約は、夫婦間の契約ではなく、連帯保証人と金融機関との間の契約ですので、夫婦の合意だけでは連帯保証人から外れることはできません。
連帯保証人は、主債務者が返済することができなくなった場合に備えて要求されるものであり、金融機関としては確実に住宅ローンの支払いを受けるための担保として重要なものとなります。そのため、夫婦が離婚をしたという個人的な理由だけでは連帯保証人を外してくれることはありません。
ただし、連帯保証人を外すことができないわけではなく、後述する方法をとることによって連帯保証人を外すことができる可能性があります。
3、連帯保証人から外れる方法
離婚時に住宅ローンの連帯保証人を外してもらうことができる方法としては、以下のものが挙げられます。
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(1)住宅ローンの借り換え
現在住宅ローンを利用している金融機関とは別の金融機関の住宅ローンを利用して、現在の金融機関の住宅ローンを完済してしまうことで、連帯保証人を外すことができます。これを「住宅ローンの借り換え」といいます。
たとえば、A銀行の住宅ローンでは夫が主債務者、妻が連帯保証人になっている場合、B銀行で夫を主債務者とする単独の住宅ローンの申し込みをして、A銀行の住宅ローンを完済し、以降B銀行に返済をしていくという方法です。
住宅ローンの借り換えをするためには、新たな金融機関で住宅ローンの審査を受ける必要があります。そのため、申込者の収入や担保となる自宅の状態によっては、希望する金額での融資が難しい場合もあります。 -
(2)新たな連帯保証人を立てる
現在の連帯保証人に代えて新たな連帯保証人を立てることによって、現在の連帯保証人を外してもらうことができる可能性があります。
新たな連帯保証人は、現在の連帯保証人と同程度かそれ以上の信用力のある人であることが必要になりますので、高齢の両親などでは新たな連帯保証人としては認められることは少ないですが、安定した収入があれば認められる可能性があるでしょう。 -
(3)追加の担保を提供する
新たに連帯保証人を頼むことができる人が見つからない場合には、人的担保ではなく物的担保の追加提供を検討してください。
主債務者が住宅ローンの担保として提供した自宅以外にも不動産を所有している場合には、その不動産を追加の担保として提供することによって、連帯保証人を外すことを認めてもらうことができる可能性があります。
ただし、追加で提供した担保が十分な担保価値があることが必要になります。既に別の債権者の担保になっているような場合には、担保価値が不十分であるとして連帯保証人を外すことが認められないケースがあることは否定できません。 -
(4)自宅を売却する
夫婦がともに自宅を出て行くという場合には、自宅を売却することで連帯保証人を外すことができる可能性があります。
ただし、自宅を売却する場合には、住宅ローンの残額と売却代金との関係によっては連帯保証人を外すことができない場合もありますので注意が必要です。売却代金が住宅ローンの金額を上回っている、いわゆる「アンダーローン」の場合には、売却代金によって住宅ローンの完済をすることができますので、完済により連帯保証契約は終了となります。
他方、住宅ローンの金額が売却代金を上回っている、いわゆる「オーバーローン」の場合には、売却代金を充当しても住宅ローンは残ってしまいます。この場合には、残った住宅ローンについて連帯保証人の連帯保証債務も残りますので連帯保証人を外すことはできません。
4、弁護士に相談したほうがよいタイミングは?
住宅ローンの連帯保証人になっている方が離婚をする場合には、財産分与や連帯保証人の扱いについてトラブルになる可能性がありますので、弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士に相談をしようと考えている方の中には、「いつ弁護士に相談をすればよいのだろうか?」とお悩みの方もいます。弁護士は、トラブルになったときに相談をするものだとイメージする方もいますが、トラブルが生じる前であっても弁護士に相談をすることはできます。むしろ、トラブルが発生してからでは解決するのに時間と労力を要することになりますので、できる限りトラブルが生じる前に相談をすることをおすすめします。
離婚であれば、離婚を考えたタイミングで一度弁護士に相談をすることによって、現在の状況を整理することができますし、離婚に向けてどのように準備をして対応していけばいいのか、状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。また、第三者である弁護士が離婚の話し合いに参加することによって、当事者同士では感情的になってしまいスムーズに話し合うことができない場合でも冷静な話し合いを進めることができます。また、弁護士に交渉窓口が一本化されますので精神的負担も軽減されます。
早めに弁護士に相談をすることによって、将来に向けた対策もしっかりと講じることができますので、離婚を思い立ったときは、まずは弁護士に相談をしましょう。
5、まとめ
離婚をしたからといってそれだけでは住宅ローンの連帯保証人を外すことはできません。しかし、住宅ローンの連帯保証人を外す方法はありますので、具体的な状況に応じて適切な方法を選択することが大切です。
離婚や財産分与についてお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでお気軽にご相談ください。親身になって、あなたの将来にとって最良な方法を検討し、アドバイスします。
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