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不受理届とは? 「不受理申出」を行えるケースを弁護士が教えます

2021年07月01日
  • 個人のトラブル
  • 不受理届
不受理届とは? 「不受理申出」を行えるケースを弁護士が教えます

高崎市のホームページには、さまざまな届け出に関する案内が掲載されています。各種の届け出は、市区町村役場に提出して受理されると、その効力が発生します。しかし、なかには本人にとって不都合な届け出もあります。その代表例が、婚姻、離婚、養子縁組、認知などについて本人の同意なしに相手方や第三者から勝手に届け出をされることがその例です。

このような届け出は基本的に違法となりますが、その後の手続きなどを考えれば事前に防ぎたいとお考えになることは当然です。そこで、このような合意のない届け出を防止するために、戸籍法では「不受理申出」の制度が設けられています。

本コラムでは、不受理申し出の概要から不受理申出をせざるを得ないトラブルの解決方法について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、不受理届とは?

不受理届という正式名称の書類は存在しません。一般的に、法律上「不受理申出」と呼ばれる手続きを行うために使われる書類を指した通称として使用されているようです。

「不受理申出」とは、婚姻届、離婚届、養子縁組届、養子離縁届、認知届の5つの届け出について、自分が区役所の窓口に直接出向いて届け出をしたことが確認できない限り、受理しないよう申し出る制度です。すなわち、本人が知らないうちに第三者が勝手に本人の意思に基づかない届け出を市区町村役場に出して、それが戸籍に記載されることを防止するための制度です。市区町村役場に対して「私が関係する○○について届け出があったとしても、私が承認するまでは受理しないでください」と申し出ることをいいます。

たとえば離婚する場合、離婚届を作成する時点と市区町村役場に離婚届を提出する時点で、夫婦双方に離婚の意思(届出意思)があり、離婚することについて合意していなければなりません。夫婦双方に届出意思がなければ、一方の配偶者が勝手に離婚届を作成して役所に提出したとしても、この届け出は無効となり離婚は成立しません。

離婚の過程では、離婚条件や離婚そのものについて夫婦がお互いに合意できていないというケースは少なくありません。あるいは一度は離婚に合意したものの、やはり離婚を考え直したいという状況も起こりえるでしょう。

しかし、何らかの事情で一方の配偶者が離婚を急いでいる場合は、当該配偶者が勝手に市区町村役場へ離婚届を提出してしまう可能性は否定できません。それが受理されてしまうと、その時点で離婚が法的に成立します。そして、戸籍の記載も離婚したことになってしまいます。

もちろん、このような離婚届が無効であることを確認するための手続きは存在します。しかし、この手続きは市区町村役場では行うことはできません。家庭裁判所に対して離婚無効調停を申し立て、それでも合意に至らない場合は離婚無効訴訟で争う必要があります。そのため、精神的な負担や決して軽いとはいえない労力や時間、費用がかかってしまうのです。

このような事態を防ぐため、不受理申出の制度が存在します。あらかじめ市区町村役場へ不受理申出をしておくことにより、本人が市区町村役場の窓口に出頭して離婚届を提出したことを市区町村役場が確認できない限り、離婚届が受理されないようにしておくのです。

なお、夫婦お互いの同意がないのにもかかわらず、配偶者の一方が離婚届を作成して提出することで、その配偶者は以下の罪に問われる可能性があります

  • 公正証書原本不実記載等罪(刑法第157条)……5年以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 有印私文書偽造罪(刑法第159条)……3月以上5年以下の懲役
  • 偽造私文書行使罪(刑法第161条)……3月以上5年以下の懲役

2、不受理申出ができるケースと必要な条件

不受理申出をすることができる届け出とすることができる人は、戸籍法で規定されています。以下では、不受理申出の有効期間と合わせてご説明します。

  1. (1)不受理申出ができる届け出の種類

    届けられることによって戸籍上の身分変動が生じる以下の届け出が、不受理申出の対象となります(戸籍法第27条の2)。

    • 婚姻届
    • 離婚届(協議離婚)
    • 養子縁組届
    • 養子離縁届(協議離縁)
    • 認知届(任意認知)
  2. (2)不受理申出ができる方

    不受理申出は、以下の要件を満たし、かつ自身が届出人となる届け出のみすることができます

    • 婚姻届……夫になる方、または妻になる方
    • 離婚届……夫または妻
    • 養子縁組届……養親になる方、または養子になる方(15歳未満の場合は法定代理人)
    • 養子離縁届……養親または養子(15歳未満の場合は離縁後の法定代理人)
    • 認知届……認知する父親
  3. (3)不受理申出の有効期間は?

    不受理申出は、基本的に申出を行った方が取り下げない限り有効です。
    ただし、相手方を特定した不受理申出の場合、相手方が適法に届け出を行ってそれが受理されれば、不受理申出の申出は効力がなくなります。

3、不受理申出をしなくても不受理になるケースとは?

混同されやすいのですが、市区町村役場における「受付」と「受理」は異なります。受付はあくまで申出人から書類等を受け取るという事実行為だけで、それが法的に適切かどうかを審査したうえで、受理が決定します。すなわち法的効果が生じます。

つまり、勝手に結婚届を出された場合などにおいて、明らかに偽造であると判断できる届け出は、法的に不適切なため不受理届を出さなくても市区町村役場に受理されないともいえます。具体的には、届出人や証人の筆跡がすべて同じであるケースや、戸籍謄本の記載と年齢が一致しないなどのケースが偽造の可能性があるとして調査される可能性があるといえるのです。

なお、受理が決定したあとで届出書に記載の不備や不実記載があることが判明した場合は、その箇所だけ不受理となるケースもあります

不受理となった場合、市区町村役場は届出人に対して不受理となった箇所を「補正」、つまり修正するように指示します。このとき、本人の署名・捺印が必要な届け出であるにもかかわらず、それを偽造していた届け出は、その場での補正ができません。したがって、不受理届を出さなくても受理されない状態が続くことも考えられます。

ただし、届け出の偽造を防ぐためには、待ちの姿勢はあまり得策とはいえません。あなた本人の合意がないのにもかかわらず、相手方から勝手に届け出がされるおそれがある場合は、先手を打って不受理申出をしておくことが望ましいといえるでしょう。

4、自分でできる? 不受理申出の手続き方法

不受理申出の申し出および取り下げの手続きはご自身で行えます。

  1. (1)申し出の手続き

    不受理申出は、基本的に本籍地の市町村役場宛てに行います。本籍地の市区町村役場宛てに後述する必要書類を提出して受理されれば、直ちに不受理申出の効力が発生します。

    本籍地以外の市区町村役場宛てに申し出ることもできますが、この場合は申し出た市区町村役場から本籍地の市区町村役場に不受理申出が送付され到達するまで、不受理申出は効力が生じないことに注意が必要です。

    不受理申出を申し出る際に必要な書類等は、以下のとおりです。

    • 不受理申出書(全国共通、インターネットで取得可能。申出日、申出をする人と相手方の事情、申出をする人の記名押印、連絡先などを記入)
    • 申し出をする人の印鑑(浸透印やゴム印は不可)
    • 申し出をする人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、顔写真付きの住民基本台帳カード、パスポート、保険証など)


    なお、申し出る窓口の名称は自治体によってさまざまですが、戸籍を取り扱っている窓口が多いようです高崎市の場合は、市民課の戸籍係になります。まずは戸籍がある市区町村役場のサイトを確認して、どこの窓口で戸籍を取り扱っているか確認してください。

  2. (2)取り下げの手続き

    不受理申出の取り下げの手続きは、申し出をした本人が市区町村役場に「不受理申出取下書」を提出することで行います。このとき、不受理申出をしたときと同じように印鑑や本人確認書類が必要になります。

5、不受理申出をする前に相談できる場所

婚姻、離婚、養子縁組、認知について、「相手との話し合いが進まないから」などといった理由で当事者の一方の合意を得ずに、市区町村役場へ勝手に届けを出されたという事例は全国的にも相当数あるようです。

そして、このような届け出が一度受理されてしまうと、戸籍の記載を訂正しなければならなくなるため調停や裁判を経る必要があります。その負担は、決して軽いものではありません。そのような事態を防ぐためにも、事前に不受理申出をしておくことは有効なのです。

不受理申出をしなければならない事態に陥ったとき、多くは法的なトラブルが生じているはずです対応に悩んでいるときは、弁護士に相談することをおすすめします

たとえば、不受理申出を受理してもらうためには、申出をする方と相手方の事情を記載する必要があります。戸籍関係のトラブル解決に知見と実績のある弁護士であれば、不受理申出をしなければならない事情をくみ取り、問題なく市区町村役場の職員が受理できるように記載方法をアドバイスすることが可能です。

また、弁護士はあなたの代理人として、不受理申出をしなければならない原因となっているトラブルの解決に向け、相手方と交渉することができます。弁護士に依頼することで、不受理申出やその原因となっているトラブルについてあなたの精神的な負担が軽くなることが大いに期待することができます。

6、まとめ

不受理申出をすることを検討している方の多くは、何らかのトラブルが起きていることと思います。弁護士に相談することで、不受理申出の作成だけではなく、あなたの身に起きているトラブルについて精神的負担の軽減やトラブルそのものの解決が期待できます。

不受理申出もトラブル解決も病気の治療と同じで、早めに対処することがあなたにとって有効な解決の第一歩となるのです。ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、不受理申出の方法のほか、さまざまな法律相談を承っております。ぜひお気軽にご連絡ください。あなたのために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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