ネットの書き込み被害で困っている方は必見! 対処方法を弁護士が解説

2020年04月01日
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ネットの書き込み被害で困っている方は必見! 対処方法を弁護士が解説

高崎市では平成27年に、市内の中学生らがSNSを原因とするトラブルやいじめなどを防ぐために「個人情報を書き込まない。相手の立場になって送信しよう。家族のルールを決めよう」という提言をまとめたという報道がありました。このルールは高崎市教育委員会のいじめ防止プログラムの一環として作られたものです。

中学生らもこのような取り組みをするほど、全国的にネット上の悪質な書き込みは日常的に行われています。その被害内容は、対象や発信者が異なることから多様なものになりますが、実際にネットの書き込み被害に遭ってしまい、削除の方法があるのか、どこに相談するべきなのかお困りの方もいるでしょう。

そこでこの記事では、ネットの書き込みを削除する方法や、相談先を中心に、高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、ネットの書き込みの影響とは?

ネットの書き込みに対しては感情的にならないことが大切ですが、放っておけばよいわけではありません。匿名性が高く非常に強力な拡散力をもつネットの書き込みは、個人、法人ともに多大な影響を受けることになるからです。

  1. (1)個人が受ける影響

    不特定多数の人間が閲覧するネットの書き込みは、たとえうその情報であったとしてもその情報を信じる者、その情報を信じた結果として個人攻撃に参加する者もいます。
    他者からの社会的評価は、そのときだけではなく、今後のライフステージのさまざまな場面に影響を及ぼします。たとえば、職場内の評判が下がり退職を余儀なくされるといったことです。
    このほか、個人情報が流出することによって、悪徳業者や出会い系サイトからの勧誘電話やダイレクトメールがくることも考えられます。ひどい場合には誰か分からない者から嫌がらせのメールが届く、住所を公開されて犯罪被害に遭うといったリスクもあります。

  2. (2)法人が受ける影響

    法人の場合は消費者、取引先、金融機関などからの信用が失墜し、社会一般的なイメージも悪くなります。それは商品サービスの売り上げ減少につながり、結果的に経済的なダメージが大きくなります。
    また、人材面でも社員のモチベーションが低下、優秀な人材の流出、採用活動への悪影響も考えられるでしょう。
    元従業員による悪質な書き込みによって機密情報が流出し、ライバル企業と差をつけられてしまうこともあるかもしれません。
    このように、多方面からの影響を受けるという点では、法人が受ける影響は個人以上に複雑かつ甚大になりやすいといえます。

2、ネットの書き込みを削除する3つの方法

では、ネットの悪質な書き込みをどのように削除すればよいのでしょうか。考えられる主な削除方法を3つ紹介します。

  1. (1)発信者に直接削除を求める

    発信した相手がどこの誰か判明している場合には、その相手に対して直接削除を求めます。個人名までは分からなくても、ブログやSNSであれば書いた本人へ直接メッセージを送ることができます。
    感情的な文言は避けるようにし、「どのような権利侵害にあたるのか」「法的措置も検討している」という点を書くようにすると、一定の効果があります。
    もっとも、直接削除を求めることにより、発信者が面白半分で、さらに個人情報を拡散するリスクはあります。

  2. (2)運営側に削除要請をする

    掲示板や口コミサイトなどの管理者、SNSの運営元などに対し、削除要請を行います。専用フォームやメールによる削除要請を受け付けていることがあります。サイトのガイドラインなどを確認して削除を求めましょう。
    ただし、あくまでも任意の削除要請なので応じてもらえないことがあります。管理者や運営元は、投稿者の表現の自由や、投稿を見る者の知る権利を守ろうとするからです。具体的な権利侵害の内容を示し、正当な理由のある削除要請であることを論理的に伝えることで、削除につながりやすくなります。

  3. (3)裁判所へ仮処分および訴訟

    交渉しても削除ができないた場合、裁判所に対し、削除の仮処分申し立てを行います。
    仮処分とは、裁判の結果を待っていると依頼者の権利が守られなくなるおそれがある場合に行われる、暫定的な手続きのことです。ネットの書き込みは拡散力が強力で速やかに削除する必要があるため、まずは仮処分によって削除を求めるというわけです。
    仮処分は、裁判所が削除の必要性を認める法的手続きです。命令がでればウェブサイト管理者などが削除に応じることが多いため、削除の目的はここで果たせることになります。

3、書き込んだ発信者への損害賠償請求

ネットの書き込みは、場合によっては、名誉毀損(きそん)罪、信用毀損(きそん)罪、業務妨害罪といった犯罪にあたります。いわゆるリベンジポルノ等の場合には、リベンジポルノ法違反になります。しかし、発信者が誰か分からなければ刑事告訴は難しくなります。
さらに重要な点は、発信者に罰を与えて安易な投稿を抑制することにはなっても、受けた損害を直接補填してもらえるわけではないことです。
そこで、民法の不法行為に基づく損害賠償を求める必要がありますが、こちらも書き込みをした発信者が誰かを知らなくてはできません。重要となるのが発信者情報開示請求です。
発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法第4条により、創設的に認められた権利です。
発信者情報開示請求の方法は、次のとおりです。

  1. (1)サイトなどの運営者(コンテンツプロバイダ)に対して投稿者のIPアドレスなどを開示させる

    いきなり個人を特定するのではなく、まずはサイトなどの運営者(コンテンツプロバイダ)に対して投稿者のIPアドレス、タイムスタンプ(発信時間)などの開示を求めます。この場合、コンテンツプロバイダは、任意で情報を開示することはほとんどないので、コンテンツプロバイダを相手として、発信者情報開示の仮処分を申し立て、裁判所から開示の命令を出してもらい、ここで得たIPアドレス等の情報から経由プロバイダを特定します。

  2. (2)発信者情報消去禁止仮処分命令の申し立てを行う

    経由プロバイダが保存している発信者の特定に必要な記録は、おおむね3か月で消去されていきます。そのため、場合によっては、まず裁判所に発信者情報消去禁止仮処分命令申し立てを行い、裁判所から経由プロバイダに対し、記録の消去を禁止する命令を出してもらいます。

  3. (3)プロバイダに対し、発信者情報開示請求訴訟をする

    経由プロバイダに対し、発信者の氏名や住所などの個人情報の開示を求める訴訟を提起します。裁判所がプロバイダに投稿者の住所や氏名などの情報開示命令を出せば、無事発信者が特定されます。

  4. (4)投稿者に損害賠償請求をする

    この後は、発信者に対して内容証明郵便を用いて損害賠償請求書を送るか、損害賠償訴訟を起こすことになります。

    なお、発信者情報開示請求は個人や法人で行うこともできますが、法的な知識が必要な場面も多々あるため、法律家である弁護士に依頼するほうがよいでしょう。

4、ネットの書き込み被害の相談先

最後に、ネットの書き込み被害に遭った場合の相談先を紹介します。

  1. (1)警察

    ネットの書き込みは、基本的に民事上の権利侵害を争うものが多いため、警察は簡単に動いてはくれません。ただし、ネット上に「今から殺しにいく」といった脅迫を受けている場合や、住所などの個人情報が不特定多数の目にさらされている場合は、事件に巻き込まれるおそれがあります。そのような悪質かつ緊急性の高いものは、お近くの警察署やサイバー犯罪相談窓口に相談しましょう。

  2. (2)弁護士

    具体的な行動に移す前に、ネットの書き込みが法律上どのような権利侵害にあたるのかを把握しておかなくてはなりません。書き込みが正当な批判や意見であれば、単に少し嫌な思いをした、私的制裁を加えたいといった理由では書き込み削除や法的手続きはできないからです。
    弁護士であれば権利侵害の内容を明らかにするとともに、具体的に何を行うべきかをアドバイスしてくれます。任意で削除要請する際も、個人や法人が行うより、弁護士が交渉することで応じる場合もあります。裁判所への仮処分申し立てや発信者情報開示請求などの法的措置を行う場面においても、代理人となってもらうことができます。

  3. (3)削除代行業者に注意

    削除要請や開示請求は法律行為にあたり、ご自身で行うか、弁護士に依頼するのかの2つの選択肢があります。

    ここで気をつけたいのが、書き込み削除代行業者の存在です。
    弁護士以外の者が、報酬をもらって法律行為をすることは弁護士法第72条で禁じられている非弁行為にあたります。犯罪の片棒を担ぐことになるほか、書き込みの削除ができないうえに費用が戻ってこないなどの被害に遭うことになりますので、注意が必要です。

5、まとめ

今回は、ネット上で悪質な書き込み被害に遭った方に向けて、その影響や削除方法、相談先などを紹介しました。ネットの情報は瞬く間に拡散していき、その影響力を無視することはできません。速やかに対処することが何より大切です。とはいえ、権利侵害の確認や具体的な手続きについては法的知識が求められることがほとんどです。早い段階でしかるべき場所へ相談されるほうがよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所・高崎オフィスでもご相談をお受けします。悪質な書き込みによる被害が広がる前に、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています