盗用と剽窃の違いは? ネット上から取り下げさせたいときできること
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盗用や剽窃が問題になる主な舞台は、レポートや論文などを発表することが多い研究機関や大学などでしょう。
なお、群馬県高崎市が公表する「統計季報240号(2022/1.2.3)」によると、高崎市内にある大学・短期大学の令和4年3月1日時点の在籍者数は、合計1万2746名です。それぞれの大学では、学生や教授などがさまざまな研究を行い、論文などを発表していると考えられます。
もし、ご自身の文章などを盗作・盗用・剽窃した内容の投稿を発見したら、著作権法などの法的根拠に則って、毅然とした対応を行うべきです。今回は盗作・盗用・剽窃の違いや、これらの行為によってなされた投稿を発見した場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、盗作・盗用・剽窃の違いは?
「盗作」「盗用」「剽窃」は、他人が権利を有する技術や表現物などを無断で使用したり、複製したりする行為を意味します。
いずれも法律上の用語ではありませんが、広辞苑(第7版)によれば、
- 「盗用」は「ぬすんで使用すること」
- 「盗作」は「他人の作品の全部または一部を自分のものとして無断で使うこと」
- 「剽窃」は「他人の詩歌・文章などの文句または説をぬすみ取って、自分のものとして発表すること」
をそれぞれ指します。
したがって、「盗作」や「剽窃」は特に著作権侵害が問題になりやすいといえます。
なお、知的財産権の侵害を理由に何らかの請求を行う際には、法律上の用語ではない「盗作」「盗用」「剽窃」を用いるのではなく、どのような権利が侵害されているのかがわかる言葉を用いるのが適切です(「著作権侵害」など)。
2、盗作・盗用・剽窃に当たるサイトを見つけた場合のチェックポイント
ご自身が権利を有する技術や表現物などにつき、盗作・盗用・剽窃を行ったと思われるウェブサイトを発見した場合、以下のポイントをチェックしたうえで対応を検討しましょう。
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(1)権利侵害に該当するかどうかをチェックする
対象ウェブサイトの掲載内容が何らかの権利侵害に該当する場合、サイト運営者や投稿者に対して差止めや損害賠償を請求できる可能性があります。
特にウェブサイト上の掲載内容について問題となりやすいのが、著作権や著作者人格権の侵害です。具体的には、以下のような行為が著作権や著作者人格権の侵害に該当します。① 画像、文章、音楽などの他人の著作物を、著作権者に無断でそのまま掲載した場合
→公衆送信権(著作権法第23条第1項)の侵害
② 画像、文章、音楽などの他人の著作物を、著作権者に無断で改変して掲載した場合
→翻案権(同法第27条)、同一性保持権(同法第20条)の侵害
③「引用」と称して、論文や雑誌投稿などの他人の著作物を、記事の大半を占める形で掲載した場合
→公衆送信権の侵害(※本文が「主」、引用部分が「従」でなければ、適法な引用(同法第32条)の要件を満たさない)
など
盗作・盗用・剽窃が疑われるウェブサイトを発見した場合、まずは著作権法の観点から権利侵害の有無を検討しましょう。
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(2)DMCAに基づく検索結果の削除リクエストを検討する
米国企業が運営するサイトに盗作・盗用・剽窃と思われるコンテンツが掲載された場合、「デジタルミレニアム著作権法(The Digital Millennium Copyright Act|DMCA)」に基づく削除リクエストができる場合があります。
DMCAでは、著作権侵害を主張する者から法定の形式的要件を満たす通知を受領したプロバイダ等は、侵害に該当するかどうかの実体的判断を行うことなく、当該情報を削除してよい旨が定められています。
サイト運営者に対して所定の方式による通知を行う必要はあるものの、迅速に侵害コンテンツを削除してもらえる可能性が高い点が、DMCAに基づく削除リクエストの大きなメリットです。
ただし、米国法準拠の手続きになりますので、国際法務に詳しい弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
3、インターネット上の侵害コンテンツの削除を求める方法
盗作・盗用・剽窃に当たる侵害コンテンツを発見した場合、法律上の根拠に基づいて削除請求を行いましょう。
掲載先ごとに、必要となる削除請求の手続きについて解説します。
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(1)個人サイトの場合
個人が運営しているサイトの場合、運営者である個人に対して削除請求を行います。問い合わせフォームなどが設置されていれば、そちらから運営者に連絡を取りましょう。
運営者の連絡先や素性がわからない場合、ドメインの登録情報を検索することで、運営者の情報にたどり着ける場合があります。
(参考:「WHOIS」(株式会社日本レジストリサービス))
(参考:「aguse」(アグスネット株式会社))
これらのサイトには、運営者の個人情報までは掲載されていません。しかし、掲載されているIPアドレスを基に、インターネット接続業者に対して発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第4条第1項)を行うことで、運営者の個人情報を特定できる可能性があります。
運営者が削除に応じない場合には、裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てましょう(民事保全法第23条第2項)。裁判所に権利侵害の疎明が認められれば、暫定的に投稿を削除すべき旨の仮処分命令が行われます。
仮処分命令を受けてもなお、運営者が侵害の有無を争ってきた場合、最終的には訴訟で決着をつけることになります。 -
(2)企業サイトの場合
企業サイトの場合、運営者である企業に対して削除請求を行います。
削除請求の流れは、基本的に個人サイトの場合と同じです。ただし企業サイトの場合は、サイト上に企業情報が掲載されているケースが多いため、削除請求の相手方を特定する手間は省ける可能性が高いでしょう。 -
(3)匿名掲示板の場合
匿名掲示板の場合、削除請求はサイト運営者に対して行います。
サイト運営者は掲載コンテンツを削除する権限を持っているため、投稿者が特定できなくても、削除請求自体は可能です。もしサイト運営者が削除に応じない場合は、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てましょう。
ただし、投稿者に対する損害賠償を請求したい場合には、発信者情報開示請求などを通じて投稿者を特定する必要がある点にご留意ください。 -
(4)SNSの場合
SNSの場合、本人に対して削除請求を行う方法と、SNSのサービス提供者に対して削除請求を行う方法の2通りが考えられます。
実名SNSであれば、本人に対して直接削除請求を行うことで、早期に解決できる可能性があります。これに対して匿名SNSの場合は、サービス提供者に対する削除請求も検討すべきでしょう。
削除請求の方法としては、個人サイト・企業サイト・匿名掲示板と同様に、交渉のほか仮処分申立てや訴訟提起などが考えられます。 -
(5)Googleの検索結果の場合
Googleは米国企業であるため、DMCAに基づく削除リクエストを行うことで、スムーズに侵害コンテンツを検索結果から削除してもらえる可能性があります。
以下のフォームから所定の事項を入力して、Googleに対して侵害コンテンツの削除を求めましょう。
(参考:「著作権侵害による削除」(Google))
ただし、著作権侵害に当たらないコンテンツの削除をリクエストした場合、後日掲載者などから損害賠償請求を受ける可能性があります。そのため、DMCAに基づく削除リクエストを行う前に、弁護士にご相談のうえ、著作権侵害に該当するかどうかをよく検討することをおすすめします。
4、侵害コンテンツの削除については弁護士にご相談を
盗作・盗用・剽窃に当たるインターネット上のコンテンツを発見した場合、弁護士へのご相談がおすすめです。
特に以下に挙げる場合には、早い段階で弁護士にご相談いただくのが安心でしょう。
→仮処分申立てなどの法的手続きが必要となるため、弁護士へのご依頼をおすすめします。
② 侵害者に損害賠償を請求する場合
→発信者情報開示請求や訴訟などの法的手続きが必要となるため、弁護士へのご依頼がおすすめです。
③ DMCAに基づく削除リクエストを行う場合
→米国法に基づく手続きであるため、米国法に関する知識が必要となります。
また、虚偽のリクエストを行うと損害賠償責任が発生するおそれがあるため、弁護士と相談しながら法的検討を行うことを推奨します。
ご自身の著作権など知的財産権を侵害された可能性がある方は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
盗作・盗用・剽窃は、いずれも他人の知的財産権を侵害する不正行為です。もし盗作・盗用・剽窃に当たるインターネットコンテンツを発見した場合は、弁護士に削除請求をご依頼いただくことをおすすめします。
研究活動・研究成果に関する論文を盗用された研究者・科学者・大学教員の方、企業や研究機関など、知的財産権侵害にお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスにご相談ください。
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