SNSで誹謗中傷してくる相手を特定する方法! 発信者情報開示請求
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SNS上での誹謗中傷が社会問題化していることを受けて、令和2年12月、群馬県では、全国で初めて「インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例」を制定しました。同条例によって、誹謗中傷による被害を受けた方の被害回復に向けた相談体制の整備や悪質な投稿の抑止が期待されます。
SNSなどのインターネット上での誹謗中傷を受け、多大な精神的苦痛を被った被害者であれば、書き込んだ方に対して責任追及をしたいと考えることは当然のことでしょう。しかし、その場合には、発信者情報開示請求によって、書き込みをした人物を特定する必要があります。
本コラムでは、SNSによって誹謗中傷をする相手を特定する方法である「発信者情報開示請求」について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、SNSで誹謗中傷を受けたときにとれる対応
SNSで誹謗中傷の被害を受けた方は、以下のような対応をとることができます。
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(1)誹謗中傷する書き込み・投稿の削除
SNSによる誹謗中傷を受けた場合には、当該誹謗中傷の書き込み・投稿の削除を請求することができます。誹謗中傷の投稿・書き込みをそのまま放置していると、時間とともに内容が拡散していき、被害が拡大していってしまいます。書き込み・投稿の内容が虚偽のものであったとしても、多くの人は真偽を確かめることは難しいでしょう。その結果、拡散された書き込みの内容を真実であると信じてしまう可能性は否定できません。その結果、被害者は回復困難な損害を受けることになりえます。
このような被害を防止するためには、誹謗中傷の書き込み・投稿に気付いた段階ですぐに削除請求を行うことが大切です。 -
(2)誹謗中傷をした相手への損害賠償請求
誹謗中傷の書き込み・投稿を削除することによって、被害の拡大を食い止めることはできます。しかし、すでに被ってしまった損害を回復することはできません。被害者が被った被害を回復するために、誹謗中傷の書き込み・投稿をした相手に対して損害賠償を請求することが可能です。
ただし、損害賠償請求をするためには、その前提として加害者を特定する必要があります。そこで、「発信者情報開示請求」という方法によってSNSで誹謗中傷をしてきた加害者を特定し、そのうえで損害賠償請求をすることになります。 -
(3)刑事告訴
悪質な誹謗中傷の書き込み・投稿がなされた場合には、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)に該当する可能性があります。このような被害に遭った場合には、刑事告訴をすることによって、加害者の処罰を求めることができます。
刑事告訴をすることによって、捜査機関によって捜査が開始され、加害者は捜査機関から取り調べを受けることになります。そして、内容によっては、検察官によって起訴されて刑事裁判で裁かれることになります。
刑事告訴自体には、被害者が被った被害を回復するという効果はありません。しかし、加害者に対して自らの行為を悔い改める機会を与えることができますので、再発を防止することができるという効果が期待できます。
2、相手を特定する「発信者情報開示請求」とは?
SNSで誹謗中傷をした人物を特定することができる発信者情報開示請求とはどのような手続きなのでしょうか。以下で、詳しく説明します。
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(1)発信者情報開示請求とは
発信者情報開示請求とは、SNSやインターネット上の掲示板などでの誹謗中傷の書き込み・投稿により、名誉毀損やプライバシー権侵害などを行った人物を特定するために、サイト管理者やプロバイダなどに対して、投稿者に関する情報開示を求めることをいいます。プロバイダ責任制限法4条では、加害者である発信者を特定する手段として、発信者情報開示請求を規定しています。
インターネット上での誹謗中傷は、匿名で行われることが多く、投稿者がだれであるのかがわからないのが通常です。たとえ、だれが書いたのかは予想ができたとしても、誹謗中傷を行った本人であることを証明する必要があるのです。
加害者を特定することができなければ、損害賠償請求などを行うことができません。まずは、発信者情報開示請求によって加害者を特定していくことになります。 -
(2)発信者情報開示請求の方法
発信者情報開示請求によって投稿者を特定するためには、1回の請求で特定することはできないケースがほとんどです。そのため、以下のような2段階の手順が必要となります。
① コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求
コンテンツプロバイダとは、インターネット上のコンテンツを提供している会社のことを指します。一般的には、ブログや掲示板、アプリなどの運営者やサイト管理者などがこれにあたります。
投稿者を特定するために、まずは誹謗中傷の書き込み・投稿がなされたサイトを運営するコンテンツプロバイダに対して、以下のような情報の開示を求めていきます。- 対象の投稿に関するIPアドレス
- 携帯電話端末などのインターネット接続サービス利用者識別符号
- SIMカード識別番号
- 対象の投稿が送信された年月日及び時刻(タイムスタンプ)
- ポート番号
コンテンツプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う場合には、仮処分という方法を用いるのが一般的です。後述するインターネットサービスプロバイダが保有している通信ログは、保存期間が数か月程度で削除されてしまケースが少なくありません。そのため、本案訴訟を提起していると判決が出る前に通信ログが削除されてしまい、投稿者を特定するために必要な情報が失われてしまうことがあります。
必要な情報を取得できる前に削除されないよう、本案訴訟よりも迅速に判断してもらうことができる仮処分を用いるのです。
② インターネットサービスプロバイダに対する発信者情報開示請求
コンテンツプロバイダから発信者のIPアドレスなどの情報が開示された場合には、次の段階としてインターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行います。
インターネットサービスプロバイダとは、インターネット通信に接続するサービスを提供するプロバイダのことを指します。「経由プロバイダ」や「アクセスプロバイダ」などとも表現されます。
インターネットサービスプロバイダに対しては、以下のような情報の開示を求めていきます。- 住所
- 氏名
- メールアドレス
インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う場合には、上記のような仮処分ではなく本案訴訟を提起して請求していくのが一般的です。
仮処分の申立てのためには、保全の必要性という要件を満たす必要がありますが、インターネットサービスプロバイダが保有する契約者の情報は、保全の必要性を満たしません。通信ログのような短期間の保存期間が定められているものではないため、仮処分の申立てではなく、最初の段階から本案訴訟を提起していくのです。
3、発信者情報開示請求を行う手段は今後2通りに
プロバイダ責任制限法が改正されました。これにより、現行の2段階による発信者情報開示請求だけでなく、より簡略化されたといわれる「発信者情報開示命令制度」という手段をとることが可能になります。
ただし、改正法の施行は令和4年10月までにされますが、令和4年3月末日時点で具体的な施行日は決定していません。今後はどのような流れをとれることになるのかについて、確認しておきましょう。
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(1)現行制度の問題点
令和4年3月時点で、プロバイダ責任制限法では、前述の通り、仮処分の申立てと本案訴訟の提起という2回の裁判手続きが必要になります。その結果、発信者の特定に至るまでに時間とコストがかかり、被害者にとっては大きな負担になるという問題点がありました。
そこで、プロバイダ責任制限法が改正されることになったのです。改正後は、発信者情報開示手続を、簡易・迅速に行うことができるようにするために、発信者情報開示請求を1つの手続きで行うことができる新たな裁判手続(非訟手続)が創設されることになっています。 -
(2)改正法により創設された発信者情報開示命令制度とは
改正プロバイダ責任制限法に新たに創設された発信者情報開示命令制度によって、裁判所の非訟手続によって発信者情報開示請求をすることが可能になります。
創設された発信者情報開示命令制度では、以下のような流れで発信者情報の開示を求めていくことになります。- ① コンテンツプロバイダに対して発信者情報開示命令の申立てを行う
- ② ①を本案とする提供命令の申立てをして、コンテンツプロバイダが保有するインターネットサービスプロバイダの名称の提供を求める
- ③ ②で得たインターネットサービスプロバイダの情報に基づき、インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示命令の申立てを行う
- ④ ③を本案とする消去禁止命令の申立てをして、発信者情報の消去を禁止する命令を出してもらう
- ⑤ 開示命令が発令されるとインターネットサービスプロバイダから発信者情報(発信者の氏名・住所など)が開示される
従来の発信者情報開示請求では、SNSでの誹謗中傷がなされた場合には、外国への送達が必要になりますが、改正法の発信者情報開示命令制度では外国への送達が不要になります。したがって、相手が使用しているサーバーが海外のものであったとしても、より迅速に発信者情報の開示が可能となると考えられます。
4、弁護士に発信者情報開示請求を依頼するメリット
弁護士に発信者情報開示請求を依頼することによって、以下のようなメリットが得られます。
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(1)迅速な対応が可能
コンテンツプロバイダが保有する通信ログは、数か月という非常に短い期間しか保存されていません。そのため、投稿者を特定するためには、誹謗中傷の書き込み・投稿に気付いた時点で迅速に対応する必要があります。
しかし、発信者情報開示請求は、仮処分の申立てと本案訴訟の提起という裁判手続きを行わなければならず、不慣れな方では仮処分の申立てをするまでに時間がかかってしまいます。場合によっては、準備している間に投稿者の特定に必要となる情報が失われてしまう可能性があるということです。
そのため、投稿者の特定を検討している方は、早めに弁護士に対応を依頼することをおすすめします。発信者情報開示請求の方法や手順についての知見が豊富な弁護士であれば、依頼を受けた時点から迅速に必要となる手続きに着手することが可能となるでしょう。 -
(2)削除請求や損害賠償請求までサポートしてもらえる
誹謗中傷の書き込み・投稿の被害者が、受けた被害の回復を図るためには、発信者情報開示請求だけでなく、誹謗中傷の書き込み・投稿の削除や損害賠償請求を行わなければなりません。
依頼を受けた弁護士は、削除請求から損害賠償請求までの一連の手続きをすべてサポートします。インターネット上の権利侵害については、インターネットの仕組みや各サイトの特徴などを熟知していなければ適切に行うことができません。このような複雑な手続きについては、ご自身で進めるのではなくインターネットに詳しい弁護士に任せるのが安心です。
5、まとめ
SNSによる誹謗中傷は、匿名でなされるケースが多数を占めます。損害賠償請求などを行うためには投稿者を特定しなければならず、特定するためには発信者情報開示請求という法的な手段をとる必要があります。
通信ログなどの保存期間もあるため、迅速な対応が必要になりますので、誹謗中傷の被害に気付いた場合には、すぐに弁護士に相談したほうがよいでしょう。SNSでの誹謗中傷被害でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでお気軽にご相談ください。
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