ネットの書き込みが威力業務妨害になるケースとは? 削除方法も解説
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「高崎市の統計 令和4年(2022年)」によると、令和3年に群馬県高崎市で検挙された刑法犯は992件でした。
威力業務妨害罪に当たる悪質なインターネットの投稿とは、たとえば、殺害予告や爆破予告などが典型例です。脅迫的な内容の投稿や誹謗中傷の投稿によって被害を受けた場合は、速やかに弁護士へご相談ください。
本記事では、威力業務妨害罪または偽計業務妨害罪に当たる投稿の要件・具体例や、悪質なインターネット上の書き込みへの対処法などを、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、ネット上の書き込みは、威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪に当たり得る
インターネット上における悪質な書き込みが、「威力業務妨害罪」または「偽計業務妨害罪」に当たる可能性について、成立要件や罰則、投稿例を挙げて解説します。
なお、名誉毀損罪や信用毀損罪など、別の犯罪が成立することもあります。
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(1)威力業務妨害罪の要件・投稿例
威力業務妨害罪は、威力を用いて人の業務を妨害する行為について成立します(刑法第234条)。法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足る勢力をいいます(最高裁昭和28年1月30日判決)。暴行や脅迫でなくとも、公然と行われる妨害行為は広く「威力」に当たる可能性があります。
「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき、継続して行う事務または事業をいいます(大審院大正10年10月24日判決)。娯楽や学習などの個人的な活動や、料理・清掃・洗濯などの家庭生活上の活動は、「業務」から除外されます。
インターネット上の書き込みが以下のような内容を含む場合は、威力業務妨害罪に当たる可能性が高いです。威力業務妨害罪の投稿例- 殺害予告
- 爆破予告
- 店舗に暴力団員を送り込む旨
- その他、暴力的または脅迫的な内容
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(2)偽計業務妨害罪の要件・投稿例
偽計業務妨害罪は、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の業務を妨害する行為について成立します(刑法第233条)。法定刑は、威力業務妨害罪と同じく「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
「虚偽の風説の流布」とは、客観的真実に反する噂や情報を不特定または多数の人に広がることをいいます。直接少数の者に対して噂や情報を伝達した場合でも、その者を介して多数の者に拡散するおそれがある場合は、虚偽の風説の流布に当たることがあります。
「偽計」とは、人を欺き、または人の錯誤・不知を利用することをいいます。詐欺行為に限らず、嘘や曖昧・不確かな言葉を用いて他人の不安をあおるような行為は、広く「偽計」に該当する可能性があります。
インターネット上の書き込みが以下のような内容を含む場合は、偽計業務妨害罪に当たる可能性が高いです。偽計業務妨害罪の投稿例- 事実に反して、店舗における衛生管理の不備を指摘する
- 事実に反して、店主の人柄を批判する
- 事実に反して、アルバイトが不適切な行為をしていたと言いふらす
- その他、店舗や会社に関するデマ、誹謗中傷
2、ネット上の書き込みによる被害を回復する方法
インターネット上の不適切な書き込みによって被害を受けた場合は、以下の方法によって被害の回復を図りましょう。
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(1)投稿の削除依頼・仮処分申立て
風評被害の拡大を防ぐため、まずは一刻も早く、サイト管理者に対して投稿の削除を依頼しましょう。
削除依頼の際には、サイトにおいて公表されている投稿ガイドラインを踏まえて、投稿が削除されるべき合理的な理由を示すことが大切です。
サイト管理者が削除に応じない場合は、裁判所に対して投稿削除の仮処分の申立ても検討しましょう。投稿によって売上低下や信用毀損などの著しい損害が生じるおそれがあることなどを疎明すれば、裁判所によって投稿削除の仮処分命令が発令される見込みが高いです(民事保全法第23条第2項)。
仮処分命令をもって再度投稿の削除依頼をすれば、サイト管理者は速やかに削除に応じることが多いです。
サイト管理者に対する削除依頼や、裁判所に対する投稿削除の仮処分申立ては、弁護士にご依頼いただければ代理人としてサポートします。 -
(2)投稿者の特定|発信者情報開示請求
不適切な投稿によって実際に損害を被った場合は、投稿者(加害者)に対する損害賠償請求を行いましょう。
ただし、損害賠償請求を行うに当たっては、投稿者が誰であるかを特定しなければなりません。投稿者が匿名である場合は、プロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」を行い、投稿者の特定を試みましょう。
発信者情報開示請求は、サイト管理者やインターネット接続業者に対して行います。不適切な投稿によって損害を被っている場合は、これらの事業者が保有する投稿者の個人情報の開示を受けることができます。
発信者情報開示請求は、裁判所に対する発信者情報開示命令の申立て等によって行います。裁判手続きの準備や対応については、弁護士にご依頼ください。早めの相談が肝要です。 -
(3)損害賠償請求
発信者情報開示請求等によって投稿者を特定できたら、不適切な投稿によって被った損害の賠償を請求しましょう。脅迫やデマを含む内容を投稿して会社や店舗に損害を与えることは「不法行為」に当たり、被害者は投稿者に対して損害賠償を請求できます。
損害賠償請求は、まず投稿者に対して内容証明郵便等で請求書を送付して、金銭の支払いを求めるのが一般的です。投稿者から返信があれば、損害賠償の金額等について示談交渉を行います。
示談がまとまれば、投稿者との間で示談書(和解合意書)を締結して、その内容に従って損害賠償を支払ってもらいます。
投稿者から返信がない場合や、投稿者が損害賠償の支払いを拒否する場合は、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起しましょう。投稿が不法行為に当たることを立証できれば、裁判所は投稿者に対して損害賠償を命ずる判決を言い渡します。判決が確定すれば、確定判決を用いて強制執行の申立てが可能となります。
損害賠償請求の示談交渉や訴訟についても、弁護士にご依頼いただければ代理人としてご対応します。
3、ネット上の悪質な書き込みについては、刑事告訴も可能
インターネット上の書き込みが威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪などに当たると思われる場合には、被害者は刑事告訴を行うことができます。
「刑事告訴」とは、犯罪の被害者などが犯人の処罰を求める意思表示です。刑事告訴をすると、警察や検察が捜査に着手するため、犯人(投稿者)が検挙される可能性が高まります。
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(1)刑事告訴の手続き|警察署などへ告訴状を提出
刑事告訴は、検察官または司法警察員(警察官)に対して告訴状を提出して行います。警察署に告訴状を提出するのが一般的です。
刑事告訴の際には、犯罪の証拠を併せて提示すると、警察が捜査に動きやすくなります。不適切な投稿のスクリーンショットやURL、実際に被った損害に関する資料などを持参して、告訴状とともに提出しましょう。 -
(2)刑事告訴によって捜査機関に生じる義務
刑事告訴をすると、捜査機関には以下の義務が生じます。
- 司法警察員が、事件に関する書類および証拠物を速やかに検察官へ送付する義務(刑事訴訟法第242条)
- 検察官が被疑者を起訴し、または不起訴処分にしたときは、速やかにその旨を告知人に通知する義務(同法第260条)
- 検察官が被疑者を不起訴処分にした場合において、告訴人の請求があるときは、速やかに告訴人に対して不起訴の理由を告知する義務(同法第261条)
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(3)刑事告訴後の手続きの流れ
告訴状が受理されると、警察および検察が事件に関する捜査を行います。投稿者が匿名の場合でも、警察の権限で開示請求等が行われ、投稿者が特定される可能性があります。
投稿内容が悪質な場合は、投稿者が逮捕されることもあり得ます。
捜査の末に判明した投稿者を起訴するかどうかは、検察官が判断します。多数の人に影響を与える悪質な投稿については、検察官が投稿者を起訴する可能性が高いです。
投稿者が起訴された場合は、刑事裁判によって有罪・無罪および量刑の審理が行われます。審理の末に判決が言い渡され、有罪判決が確定すれば刑が執行されます(執行猶予が付される場合もあります)。
4、ネット上での威力業務妨害に対して弁護士ができること
弁護士は、インターネット上での脅迫的な書き込みについて、削除依頼・投稿者の特定・損害賠償請求などを幅広くサポートします。弁護士が代理人として大部分の手続きを代行することで、依頼者の労力は大幅に軽減され、かつ法的根拠に基づいた主張を行うことができます。
また被害の状況によっては、投稿者の刑事告訴についても同時にサポートが可能です。告訴状の作成・提出や刑事手続きに関するご説明など、投稿者の処罰を求める取り組みを行います。
インターネット上で威力業務妨害に当たる書き込みを発見したら、速やかに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
インターネット上の投稿に暴力的・脅迫的な内容が含まれている場合は、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。削除依頼や損害賠償請求のほか、投稿者の刑事告訴を検討しましょう。
インターネット上における不適切な投稿について、投稿者の責任を追及する際には、弁護士への依頼をおすすめします。弁護士は、削除依頼・投稿者の特定・損害賠償請求・刑事告訴など、被害回復や責任追及の手続きを幅広くサポートすることが可能です。
ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、インターネット上の不適切な投稿に関するご相談を随時受け付けております。経営する会社・店舗に対する暴力的・脅迫的な投稿を発見した方は、まずは当法律事務所へご相談ください。
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