迷惑動画を投稿されてしまった場合の対応方法。損害賠償はできる?
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令和5年2月、高崎市内のカラオケ店で客がマイク除菌用スプレーに火をつけて、人に向かって噴射するという迷惑動画が話題になりました。被害を受けたカラオケ店では、刑事・民事の両面で厳正に対処する方針とのことです。
近年、迷惑動画をSNSなどに投稿する若者の話題が後を絶ちません。店舗の設備や備品などを勝手に使ったり、不衛生な状態にしたりする迷惑動画が投稿されてしまうと、顧客からの信頼を損ない、社会的に大きなダメージを被るおそれがあります。そのため、迷惑動画を発見したらすみやかに適切な対応をとることが求められます。
今回は、迷惑動画を投稿されてしまった場合の対応方法などについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、迷惑動画をお客さまに投稿された場合の対応の流れ
迷惑動画をお客さまに投稿されてしまった場合には、以下のような対応が必要になります。
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(1)事実確認
迷惑動画の投稿があった場合には、企業としては、まずは、事実確認を行います。その際には、今後の対策を検討するためにも以下の点を重点的に調べることが必要です。
迷惑動画について確認すべき主な事項- 迷惑動画が投稿された媒体(SNS、YouTubeなど)
- どの店舗での迷惑動画なのか
- どのような内容の迷惑動画なのか
- いつ投稿された迷惑動画なのか
- 誰が投稿した迷惑動画なのか
- 迷惑動画によりどのような影響が生じているのか
- 迷惑動画に対してどのようなコメントがなされているのか
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(2)企業としての見解の表明
迷惑動画の内容が法的にも社会的にも問題がある内容であった場合には、そのまま放置するのではなく、いち早く企業としての公式見解を表明することが重要です。
たとえば、迷惑動画の内容が飲食店での不衛生行為であったとすると、飲食店を利用するお客さまに対して不安を抱かせ、利用を控えるなどの事態になる可能性があります。被害店舗の特定や具体的な対策(消毒、交換など)をすぐに公表することで、被害を最小限に抑えましょう。 -
(3)迷惑動画の削除請求
迷惑動画が投稿され、炎上すると、その内容はあっという間に拡散してしまいます。一度拡散した迷惑動画をすべて削除するのは難しくなりますので、迷惑動画の存在を知った場合には、すぐに削除請求を行うことが重要です。
なお、削除請求の詳しい内容については第2章で説明します。 -
(4)迷惑動画の投稿者を特定
迷惑動画の投稿によって、企業に損害が生じた場合には、迷惑動画を投稿した人物に対して、法的責任を追及することができます。
しかし、法的責任を追及するためには、迷惑動画の投稿者を特定する必要があります。迷惑動画が匿名で投稿された場合には、そのままでは投稿者を特定することができませんので、発信者情報開示請求などの手続きが必要です。
なお、迷惑動画の投稿を特定する手続きについては、「2、投稿者を特定し、動画を削除する」で説明します。 -
(5)損害賠償請求
迷惑動画投稿されると、企業はその対応や今後の予防のために費用をかけて対策を講じなければなりません。また、迷惑動画によってお客さまに不安が生じれば、客足が遠のくなどして売り上げの減少などの被害が生じることもあります。
このような被害が生じた場合には、迷惑動画を投稿した人物に対して、損害賠償請求することができます。 -
(6)刑事告訴
迷惑動画の投稿によって、業務が妨害された場合には威力業務妨害罪が、店舗内の備品が使えない状態になれば器物損壊罪が成立する可能性があります。
このような犯罪行為があった場合には、刑事告訴によって、迷惑動画の投稿者に対して、刑事責任を追及することができます。
2、投稿者を特定し、動画を削除する
以下では、迷惑動画の投稿者を特定する方法およびYouTubeでの迷惑動画の削除方法について説明します。
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(1)迷惑動画の投稿者を特定する方法
迷惑動画の投稿をしたアカウントで、個人を特定できる情報が記載されていれば、その情報から投稿者を特定できる可能性があります。
しかし、多くのケースでは、迷惑動画の投稿は、匿名によるアカウントによって行われますので、アカウント情報だけでは投稿者の特定は難しいといえます。このような場合には、発信者情報開示請求が必要となります。
発信者情報開示請求とは、迷惑動画の投稿をした人の情報(住所、氏名など)をプロバイダに対して開示するよう求める手続きです。改正プロバイダ責任制限法により、新たに非訟手続きが導入され、従来よりも素早く投稿者の特定が可能になりましたが、裁判所への申立てが必要になるなど非常に複雑な手続きとなります。そのため、発信者情報開示請求をお考えの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)YouTubeでの迷惑動画の削除方法
YouTubeでは、大別して以下の5つの項目のコミュニティガイドラインが定められています。
迷惑動画がこれらのコミュニティガイドラインに該当する場合には、YouTubeの削除依頼フォームから削除の依頼をすることができます。YouTubeのコミュニティガイドライン- スパムと欺瞞行為
- デリケートなコンテンツ
- 暴力的または危険なコンテンツ
- 規制品
- 誤った情報
他方、YouTubeのコミュニティガイドライン違反を理由に削除依頼をしても迷惑動画が削除されないという場合には、裁判所に削除の仮処分の申立てを行うことで迷惑動画を削除できる可能性があります。
3、損害賠償請求・警察へ刑事告訴
迷惑動画の投稿者に対しては、民事・刑事の両面で責任追及をすることができます。
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(1)民事上の責任追及(損害賠償請求)
近年話題になった迷惑動画としては、回転ずしのチェーン店で醤油ボトルや湯飲みをなめる動画やレーンを流れる寿司に指で唾液を塗りたくる動画などが拡散されました。
このような迷惑動画が拡散されてしまうと、企業としては、店舗の備品の交換、消毒のために費用をかけなければならず、売り上げ減少などの損害が生じます。また、悪質な迷惑動画であった場合には、店舗が閉店に追い込まれることもあり、その損害額は多大なものとなります。
このような損害が発生した場合には、民法上の不法行為を理由として、迷惑動画の投稿者などに対して、損害賠償請求をすることが可能です(民法709条)。 -
(2)刑事上の責任追及(刑事告訴)
迷惑動画により被害を遭った企業は、前記の民事上の責任追及だけでなく、刑事上の責任追及についても検討する必要があります。
なぜなら、迷惑動画が拡散されると、面白がって同様の行為をする人も出てくる可能性があるからです。迷惑動画に対しては、企業が厳しい姿勢で対処することを示すためにも、刑事告訴などの対応も進めていくようにしましょう。
4、迷惑動画でお困りなら弁護士へ相談を
「迷惑動画を発見したが対策がわからない」など、お困りの際には弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)具体的なケースに応じた対応をアドバイスできる
迷惑動画による被害を受けた企業では、被害の拡大を防ぐために、すぐに適切な対応を講じることが求められます。誤った対応をしてしまったり、対応が遅れてしまったりすると、被害の拡大を招き、取り返しのつかない事態になることもあります。
企業が講じるべき対応は、個別具体的なケースによってさまざまですので、適切な対応を選択するためにも弁護士のアドバイスが重要となります。迷惑動画の存在を知った場合には、弁護士のアドアイスを参考にしながら企業での対応を検討していくとよいでしょう。 -
(2)削除請求から損害賠償請求・刑事告訴まで一貫したサポートができる
迷惑動画の内容によっては、削除請求や損害賠償請求・刑事告訴といった法的対応が必要になることがあります。仮処分の申立てや訴訟提起などの手続きを迅速かつ適切に進めていくためにも弁護士への依頼が不可欠といえるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、削除請求から損害賠償請求・刑事告訴まで一貫したサポートが可能です。迷惑動画が拡散されてしまうと、企業側には莫大な損害が生じることもありますので、早めに弁護士に任せるのが安心だといえます。
5、まとめ
近年、SNS上に飲食店などでの迷惑行為動画を投稿する人が増えています。飲食店での迷惑動画が投稿されると、お客さまからの信頼を損ない、売り上げの減少などの損害が生じるおそれがあります。また、備品の消毒や交換、再発防止の対策などのために多額の費用が生じることもあります。
このような損害を被った場合には、迷惑動画の投稿者に対して、損害賠償などの責任追及をすることが可能です。ただし、責任追及をする前提として、まずは迷惑動画の投稿者を特定する必要があります。
実績ある弁護士に依頼することで、調査や交渉、損害賠償、予防策まで迅速に進めることができるでしょう。まずはベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています