解雇予告手当とは? 計算方法と解雇予告を受けた際に確認すべきこと

2024年06月20日
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解雇予告手当とは? 計算方法と解雇予告を受けた際に確認すべきこと

群馬労働局が公表するプレスリリースによると、令和4年度中に解雇についての相談は600件あったとのことです。

会社と労働者の間で多く問題になるもののひとつに、解雇が挙げられます。仕事がなくなってしまうと生活に大きな影響を及ぼすためです。しかし、突然人事や直属の上司に呼び出され、「明日から来なくていい」など解雇を言い渡されたとすると、動揺してその場では何も言えないことが多いのではないでしょうか。

本来、解雇は簡単にできないよう法律上定められています。また、解雇された日によって解雇予告手当を受けることが可能です。そこで、本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が、解雇予告をされたときに確認すべきことから、解雇予告手当はもらえるのか、その計算方法、解雇に納得できないときの相談先などについて解説します。


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1、解雇予告をされたときに確認すべきこととは?

ここでは、解雇予告をされたときに確認すべきことについてご説明いたします。

  1. (1)そもそも解雇予告とは

    労働基準法第20条第1項において、原則として「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない」と規定されています。

    つまり、会社が従業員を解雇する場合、原則として解雇する30日前までに解雇予告という手続きをとる必要があります。

    解雇は労働者に与える影響が大きいため、労働者に対して事前に解雇を告知することによって、再就職などの準備をする時間的余裕を与えるという点にあります。

  2. (2)確認すべきポイント

    解雇予告は口頭で行うことができます。もっとも、後日の紛争を防止するため、解雇予告は解雇予告通知書という書面でなされるのが通常です。

    解雇を告げられれば誰しも動揺されるかと思いますが、その際に承諾しないように気をつけてください。また、会社から何らかの書類へサインを求められるかもしれませんが、それも保留しましょう。

    口頭で解雇を知らされて書面の交付がない場合であっても、従業員は使用者に対して解雇予告通知書を請求することができます。

    特に、解雇事由については、従業員が使用者に証明書を請求した場合、使用者は必ずその証明書(解雇理由証明書)を交付しなければならないとされています(労働基準法第22条第1項)。

    解雇理由証明書は、解雇が不当なものであるか判断する重要な資料となるため、口頭のみで解雇を伝えられた場合には、なるべく早い段階で会社に請求するようにしましょう。

    解雇予告通知書は解雇を予告する旨を記載した書面にすぎず、その解雇自体が無効である可能性もあります。

    そこで、解雇通知書の記載内容をしっかりと確認する必要があります。

    解雇通知書で確認すべきポイントは、①解雇日と②解雇理由です。

    ①解雇日
    労働基準法第20条第1項によれば、原則として解雇予告は少なくとも30日前に行う必要があります。

    したがって、解雇通知書に記載されている解雇日が、解雇予告通知書を渡された日の翌日から30日以上経過した日付かどうかを確認する必要があります。

    ②解雇理由
    解雇は、労働者に与える影響が非常に大きいものであることから、濫用的な解雇が認められるわけではありません。

    労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。

    すなわち、解雇事由は客観的合理的理由と社会的相当性が認められるものでなければならないということです。

    たとえば、「気に入らないから」などの理由による解雇は、客観的に見て合理的理由に欠けるため、不当な解雇である可能性が非常に高いでしょう。

    したがって、解雇通知書に記載されている解雇理由をしっかりと確認する必要があります。
    「不当な解雇かどうか判断ができない」という場合には、一度弁護士までご相談されることをおすすめいたします。

2、解雇予告手当とは

ここでは、解雇予告手当とはどういうものかについてご説明いたします。

そもそも解雇予告手当とは、解雇予告をしなかった場合に支払われる、30日以上分の平均賃金のことをいいます。

解雇予告をしなかった場合、会社は解雇する労働者に対して30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされています(労働基準法第20条第1項)。

そして、解雇予告期間が30日よりも短い場合は、会社は短縮された期間分の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法第20条第2項)。

すなわち、解雇予告が解雇の5日前になされたケースでは、30日から短縮された25日分の平均賃金が支払われることになります。

3、解雇予告手当がもらえないケース

ここでは、解雇予告手当がもらえないケースをご紹介いたします。

解雇予告をせずに即時解雇された場合、または30日よりも短い解雇予告期間で解雇された場合は、原則として解雇予告手当をもらうことができます。

もっとも、次のケースでは例外的に解雇予告手当をもらうことができないのでご注意ください。

  1. (1)解雇理由による例外

    労働基準法第20条第1項ただし書きによれば、以下の解雇理由では解雇予告手当はもらえないことになっています。

    ①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
    たとえば、地震などの災害によって大きな被害を受けて会社の事業を継続することができなくなった場合です。

    こういった場合は、会社に解雇予告をさせるのは酷であると考えられるため、解雇予告手当はもらえません。

    ②労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合
    たとえば、労働者が会社お金を横領したというように労働者側に解雇される責任があるといった(懲戒解雇相当)場合です。

    こういった場合、落ち度のない会社に解雇予告をさせるべきではないことから、解雇予告手当をもらうことはできません。

  2. (2)労働者の種類による例外

    労働基準法第21条によれば、以下の労働者については解雇予告手当をもらえないということになっています。

    ①日々雇い入れられる者
    1日限りの有期労働契約で雇われている者をいい、いわゆる日雇い労働者のことです。

    ②2か月以内の期間を定めて使用される者
    2か月以内の期間という有期労働契約で雇われている者のことをいいます。
    具体的には、短期のアルバイトやパートタイムという形態で働く者のことです。

    ③季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
    季節に左右される業務において4か月以内の有期労働契約で雇われている者のことをいいます。
    たとえば、積雪地帯で冬の間だけ除雪作業のために雇用されている者のことです。

    ④試みの使用期間中の者
    入社して14日以内のいわゆる「試用期間中」の労働者のことをいいます。

    会社で14日より長い試用期間が設けられていても、解雇予告手当をもらえるかどうかにおける試用期間に影響しませんので、ご注意ください。

4、解雇予告手当の正しい計算方法

ここでは、解雇予告手当の正しい計算方法について解説いたします。

  1. (1)1日分の解雇予告手当

    1日分の解雇予告手当は、直近3か月間の賃金総額をその3か月間の暦日数で割ることによって算出します。

    たとえば、7月10日に解雇予告がされたとします。

    直近3か分の給料が35万円(4月分)、31.5万円(5月分)、28万円(6月分)であった場合、その合計額94.5万円となります。

    そして、4月、5月、6月の3か月間の暦日数はそれぞれ30日、31日、30日であることから、3か月間の暦日数は91日となります。

    そうすると、94,5万円を91日で割って出た1万384円(銭未満切り捨て)が1日分の解雇予告手当ということになります。

    なお、賃金額の合計に残業代や役職手当は含まれますが、ボーナスは含めないこととされています。

  2. (2)解雇予告手当の総額

    解雇予告手当の総額は解雇予告期間によって異なります。

    ①解雇予告期間が30日以上の場合
    解雇予告手当を受け取ることはできません。

    ②解雇予告期間が30日未満の場合
    解雇予告期間が30日未満の場合、解雇予告手当の総額は、1日分の解雇予告手当に30日から短縮された日数を乗じた額になります。

    たとえば、解雇予告期間が10日の場合、1日分の解雇予告手当1万384円に短縮された20日を乗じた20万7680円が解雇予告手当ということになります。

    なお、試用期間中(入社して14日以内)に解雇する場合は、解雇予告手当を受け取ることはできません。

    ③即時解雇の場合
    即時解雇の場合、解雇予告手当の総額は、1日分の解雇予告手当に30日を乗じた額になります。

    具体的には、1日分の解雇予告手当1万384円に30日を乗じた31万1520円が解雇予告手当ということになります。

5、解雇に納得できない場合の相談先

ここでは、解雇に納得できない場合の相談先をご紹介いたします。

  1. (1)労働基準監督署

    労働基準監督署は、労働基準法などに基づいて事業場に対する監督および労災保険の給付等を行う厚生労働省の出先機関です。

    労働契約、賃金の支払い、最低賃金、労働時間など労働条件に関する事務を取り扱っています。

    労働基準監督署に対して解雇に納得できないことを申告し、法律違反がある場合にはその指導・勧告してもらうという方法があげられるでしょう。
    高崎市内の労働基準監督署は高崎地方合同庁舎3階にあります。

  2. (2)弁護士

    会社と労働者の間の労働問題は、労働関連法をはじめとした法律の専門的知識を有する弁護士に依頼するという方法があります。

    解雇についていえば、不当解雇かどうか、解雇予告手当が適切に支払われているかどうかといった相談をすることができます。

    弁護士であれば、相談者の悩みをくみとったうえで、会社と粘り強く交渉するだけでなく、必要に応じて裁判を提起することによって、ご自身のみで行うよりもスムーズに事件の処理にあたることができます。

6、まとめ

解雇は労働者の生活に大きく影響するものです。解雇を予告をされたとき、すぐに承諾したり、会社が提示する書類へサインしてしまったりしないように気をつけてください。まずは、解雇通知書を求め、その書類に記述されている解雇日や解雇理由を確認したうえで、その理由などが正当なのか検討すべきです。

対応に迷われるのであれば、その解雇が不当解雇でないかどうかや、解雇予告手当をもらうことができるかどうか、解雇予告手当の額は適切かどうかといったことは慎重に判断するため、弁護士などに相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、労働問題についての知見が豊富な弁護士があなたが問う対応すべきかについてのアドバイスを行えます。解雇や手当についてお悩みがある方は、にぜひご相談ください。全力であなたをサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています