落書きは犯罪? 問われる罪名と逮捕された場合に行うべき対応とは

2020年09月23日
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落書きは犯罪? 問われる罪名と逮捕された場合に行うべき対応とは

看板やシャッターなどに落書きをしてしまった場合、それが悪ふざけや遊び心のつもりだったとしても、逮捕される可能性があります。高崎市の金古運動広場においても、かつてトイレの壁や看板、灰皿のふたなどが広範囲にわたって落書きの被害に遭い、警察による捜査が行われたことがありました。

そこで今回は、落書きがどのような犯罪になるのか、また自分自身や家族が落書きをして逮捕された場合にはどう対処すればよいのかについて、高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、落書きをすることで問われる罪

  1. (1)程度や範囲、対象により異なる罪に

    落書きという行為は同じでも、その程度や落書きの範囲、対象物によって、問われることになる罪名は異なることになります。罪名によって設定されている刑罰の内容も異なるため、同じ落書き行為をしたつもりであっても、想像以上に重い刑罰が処される可能性があるということです。したがって、どのような罪に問われるのかによって、その後の展開は大きく異なることになるでしょう。

    • 落書き行為によって成立する可能性がある犯罪としては、以下が挙げられます。
    • 器物損壊等罪
    • 建造物損壊罪
    • 威力業務妨害罪
    • 文化財保護法違反
    • 軽犯罪法違反
    • 迷惑防止条例違反


    それぞれ根拠法も刑罰の重さも異なるため、順に確認していきましょう。

  2. (2)科される可能性がある刑罰

    ①器物損壊罪(刑法第261条)
    他人の物を、損壊または傷害した者が問われる罪です。

    「損壊」とは、たとえば陶磁器を叩き壊したというようなイメージを持つかもしれませんが、判例は「物の本来の効用を失わしめる行為」と定義づけています。したがって、落書きを行うことで美観が著しく損なわれ、本来の効用が失われるに至ったと判断されれば、損壊にあたることになるでしょう。

    なお、刑法では器物損壊等罪について、告訴がなければ公訴を提起できないと定めており、このことから親告罪と理解されています。したがって、事前に被害者(落書きをした物の所有者など)と適切に示談が成立していれば、告訴されてしまう事態を回避でき可能性が高いともいえます。

    器物損壊等罪の刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料と定められています。

    ②建造物損壊罪(刑法第260条)
    他人の建造物の損壊によって成立する犯罪です。「損壊」の意味は器物損壊罪と同様に考えてよいでしょう。落書きといえば、スプレーなどを用いて建物の壁などへ行われるケースが多いイメージがありますが、対象物が建物と一体化していると見なされれば建造物損壊罪として立件されることがあります。

    建造物損壊罪は、前出の器物損壊等罪とは異なり、非親告罪です。したがって、被害者からの告訴がなくても起訴されて有罪となる可能性があります。

    建造物損壊罪の刑罰は5年以下の懲役と定められており、罰金刑は存在しません。裁判で3年以上の懲役という判決が下った場合は執行猶予も付かないことになりますので、かなり重い罪といえるでしょう。

    ③威力業務妨害罪(刑法第234条)
    威力による他人の業務の妨害によって成立する犯罪です。「威力」とは、相手の自由意思を制圧するに足りる勢いを指し、状況によっては落書きも含まれます。

    たとえば、会社の所有物や、景観を売りにしている場所に落書きを行ったケースについて考えてみましょう。従業員がそれを消す必要が生じ、結果的に業務が妨害されたといえます。また、すぐに落書きを消すことができ、相手の業務を妨害したとはいえない状態であっても、落書きの内容が妨害結果を発生させるおそれがあるものであれば、威力業務妨害罪に問われる可能性があるでしょう。

    威力業務妨害罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。器物損壊罪に比べてやや重い刑罰が科せられることになるでしょう。

    ④文化財保護法違反(文化財保護法第196条)
    文化財保護法とは、史跡名勝天然記念物などの文化財を保存、活用、貢献を目的に定められている法律です。たとえば、歴史的建造物としての寺院や、天然記念物の樹木などに落書きをした場合、文化財保護法違反として罪に問われる可能性があります。

    文化財保護法違反として罪に問われ、有罪になると、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金の範囲で処罰を受けることになります。

    ⑤軽犯罪法違反(軽犯罪法第1条第33号)
    軽犯罪法とは、軽微な秩序違反行為に対して罰則を定めている法律です。落書きは、他人の物の工作物や表示物を汚す行為にあたります。

    軽犯罪法違反の刑罰は、拘留または科料です。拘留とは、1日以上30日未満の身柄拘束を指します。他方、過料とは1000円以上1万円未満の罰金が科される財産刑です。

    ⑥迷惑防止条例違反(各自治体の迷惑防止条例)
    地域によっては、落書きが迷惑防止条例で禁じられていることもあります。

    群馬県では、県の迷惑防止条例や市の条例で明確に落書きへの罰則が定められているわけではありません。しかし、落書きをした地域によっては迷惑防止条例違反として罪に問われ、数万円程度の罰金が科される可能性があるということです。

2、落書きで逮捕された後の流れ

  1. (1)落書きによる逮捕

    逮捕には、主に犯行現場で逮捕される「現行犯逮捕」と、犯行後日になってから逮捕状にもとづいて逮捕される「通常逮捕」があります。

    落書きの場合、落書き現場をおさえられて現行犯逮捕をされるか、落書き跡を見つけられて通報され、防犯カメラなどによって証拠をおさえられたうえで通常逮捕されるケースが考えられます。

  2. (2)落書きで逮捕された後

    逮捕された方は被疑者と呼ばれる立場として身柄の拘束を受け、警察で48時間以内、検察で24時間以内の取り調べが行われます。なお、この間は、家族や知り合いなどと連絡をとることはもちろん、面会することもできません。

    制限時間以内に取り調べが終了しない場合のうち、証拠隠滅や逃亡の危険性があると判断されたときは、最長で20日間の勾留がなされることがあるでしょう。

    落書きの場合、程度や被害が比較的軽く、初犯であるなどの状況であれば、通常はそこまで身柄拘束期間が長期に及ぶことは考えにくいものです。勾留を受けない場合、在宅事件扱いとなり、逮捕後、身柄だけ釈放され事件の取り調べが続きます。このときは、帰宅できますし、学校や仕事に行くこともできますが、検察からの呼び出しに応じて取り調べに応じる必要があります。

    検察は、勾留されているときは勾留期間中に起訴するかどうかを決定します。他方、在宅事件扱いとなっているときは、取り調べが終わり次第、起訴・不起訴の判断を行います。

    起訴されると刑事裁判が始まり、有罪か無罪かの判断が下されます。

3、落書きで逮捕された場合の対処方法と注意点

  1. (1)真摯な反省を示す

    落書きは、大した犯罪ではないという思いがあるためか、警察での取り調べや被害者に対して反省を示さず、それどころか挑発的な態度を取る被疑者もいるようです。

    しかし、上述したように建造物損壊罪であれば、最長で5年の懲役刑すら科される重い犯罪であり、決して軽んじられるものではありません。犯した罪に対しては真摯に向き合い、反省の意を示すことが大切です。

  2. (2)被害者との示談を行う

    示談とは、落書きをされた物の所有者など、被害者に対して謝罪と賠償を行うことによって、当事者同士で事件を解決しようとする話し合いです。

    落書きは被害者に対して強い怒りや不快感を与える犯罪です。きちんと示談を行わなければ、逆に処罰感情を強めるおそれもあります。被害者に謝罪を行い、適切な損害賠償金などを支払うことで、許してもよい・罪を問わないという宥恕意思を示してもらうことをおすすめします。

    示談は、逮捕されてしまう前のタイミングから被害者に対して交渉を行うことも可能です。告訴が必要な器物損壊等罪に問われそうなときであれば、刑事事件化する前に示談を成立させることによって、逮捕されてしまう事態を回避できるでしょう。

    また、逮捕後であっても、示談を成立させて、宥恕意思を示してもらうことによって、不起訴となる可能性を高めることができます。

4、弁護士に依頼すべき理由

落書きによって逮捕されそうなときや、逮捕されてしまったとき、どのように対応すべきか非常に困る方は少なくないでしょう。逮捕による身柄の拘束を受けると、勾留の有無が決定する最長3日間は家族や友人にも相談できなくなってしまうためです。

しかし、弁護士を依頼すれば、面会の制限を受ける期間でも自由な接見を行い、直接アドバイスを受けることができます。取り調べの際、自暴自棄になってしまった結果、不用意な発言をしてしまい、より不利な立場に追い込まれてしまうケースは少なくありません。孤独に陥りがちなこの時期に弁護士とコミュニケーションをとっておくことで、適切な対応を行うことができるでしょう。

また、多くの犯罪被害者は、加害者本人やその家族などと直接交渉を行うことを避けたがる傾向があります。そのため、示談をしたくてもできないことは少なくないのです。このようなときにも、弁護士を依頼することによって、示談交渉を進められる可能性が高まります。より確実に、かつ適切な金額で話し合いをまとめることが可能となるでしょう。

5、まとめ

今回は落書きによって成立する可能性のある犯罪と逮捕後の流れ、逮捕された場合の対処方法についてご説明しました。

落書きは一見すると軽い犯罪にも思えるかもしれません。しかし、被害者に苦痛や不快感などの心理的ダメージを与えるものであり、綺麗に消そうとすれば大変な手間や費用がかかることもある行為です。きちんと償いをすることが大切です。

落書きで自分や家族が逮捕されてしまった場合は、できるだけ早くベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士にご相談ください。身柄の早期解放へ向けた取り組みや被害者との示談交渉など、適切なサポートを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています