書類チューンは違法行為! 逮捕される可能性と刑事事件化するケース

2023年07月24日
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書類チューンは違法行為! 逮捕される可能性と刑事事件化するケース

車両を改造していないにもかかわらず、改造したものとして申請する「書類チューン」という行為があります。

原動機付自転車は、制限速度が時速30キロメートル以下に制限され、二段階右折が必要な乗り物です。そこで、「原動機付自転車を改造して排気量をアップし、原付二種の区分に変更した」と偽って申請し、30キロメートル以下の速度制限と二段階右折をしなくてよいようにするのです。

書類チューンは、犯罪行為にあたり処罰の対象になります。今回は、書類チューンが違法とされる理由や逮捕される可能性などについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、書類チューンとは

書類チューンとは、実際には車両の改造がなされていないにもかかわらず、行政に改造したとして申請をし、本来とは異なる区分に登録をする行為をいいます。

このような書類チューンは、主に、排気量50CC以下の原動機付自転車(登録区分は原付一種)から、排気量51~90CCの原付二種(黄色ナンバー)に登録変更する際に行われるケースが多いです。

それには、以下のような理由があるからです。

① 制限速度が時速30キロメートルから60キロメートルに変わる
原付一種は、時速30キロメートルの速度制限があります。

一方、原付二種は時速60キロメートルまで認められているので、通学や通勤の手段として高い人気があります。

② 二段階右折が不要になる
二段階右折とは、片側三車線以上の交差点を右折する場合に、二つの信号機に従って、二段階の手順で右折する方法をいいます。

具体的には、片側三車線の左車線を直進して交差点に進入し、交差点を渡った先において車両の進行方向を右に進行します。そして、進行方向の信号が青に変わってから直進をすることで、右折を完了する方法です。

原付一種は二段階右折が必要ですが、原付二種は二段階右折をする必要はありません。

③ 車両の購入価格を安く抑えることができる
原付一種と原付二種では、排気量の大きい原付二種の方が車両価格が高くなりがちです。予算の関係で、原付二種が欲しいけれども、原付一種を購入する人もいます。


以上のように、書類チューンをすれば、
① 制限速度が時速30キロメートルから60キロメートルに変わる
② 二段階右折が不要になる
③ 車両の購入価格を安く抑える
ということができてしまうのです。

2、書類チューンを行うリスク

書類チューンには、以下のようなリスクがあります。

  1. (1)交通事故のリスクが高まる

    原付一種の制限速度が時速30キロメートル以下とされ、二段階右折が必要とされているのは、交通事故による死亡のリスクを抑えるためです。

    原付一種では、排気量の小ささから、一般道を普通自動車や普通二輪車と同じスピードで走行することが想定されていません。そのため、書類チューンによって、原付一種で時速30キロメートル以上を出そうとして、交通の流れに乗れず、追突などの事故が生じるリスクが高まります。

    また、原付一種は、原付二種として販売されている車両に比べると車体も小さく設計されています。二段階右折の規制を排除してしまうと、巻き込まれによる事故が生じる可能性が高まります。

    車両の排気量の区分は、理由があって設けられています。違法な書類チューンによって、本来の登録区分と異なる区分に登録されてしまうと、交通事故のリスクが高まります

  2. (2)規制が形骸化する

    ボアアップと呼ばれる原付一種の車両の排気量をアップするなどの改造をした場合には、市区町村役場の窓口で「原動機付自転車の排気量等変更届」を提出する必要があります。

    排気量等変更届が提出されると、自治体職員は、書面の内容や添付資料などを踏まえて、上位排気量への変更を認めるかどうかを判断します。

    書類チューンによって、排気量等変更届に虚偽の内容が記載されると、審査を担当する自治体職員の判断を誤らせ、虚偽の内容で排気量等の登録がなされるおそれがあります。

    このようなケースが増加すれば、規制が形骸化し、社会風紀が乱れることになります

  3. (3)自賠責保険や任意保険が利用できない可能性がある

    交通事故を起こしてしまった場合には、自賠責保険や任意保険によって、被害者への賠償が行われます。

    しかし、原付一種で登録すべきところを原付二種で登録していた場合には、虚偽の内容での申請になりますので、保険会社から契約を解除されたり、保険金の支払いが拒絶されたりするリスクが生じます

    書類チューンを行うことで、被害者が適正な賠償を受けることができないおそれがあります。

3、書類チューンをして問われる罪と受ける処罰

書類チューンをしてしまった場合には、以下のような刑罰が科される可能性があります。

  1. (1)有印私文書偽造罪

    実際には車両の改造がなされていないにもかかわらず、車両を改造したかのように装った「原動機付自転車の排気量等変更届」を作成した場合には、有印私文書偽造罪が成立する可能性があります(刑法159条1項)。

    有印私文書偽造罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

  2. (2)地方税法違反

    書類チューンによって、本来の登録区分とは異なる区分に登録をさせるために虚偽の報告または申告をすると地方税法463条の20(種別割に係る虚偽の申告等に関する罪)違反となります。

    同法の法定刑は、30万円以下の罰金です。

4、警察から連絡がきたら、すぐに弁護士に相談するメリット

書類チューンを理由として、警察から連絡がきた場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することは、以下のメリットがあります。

  1. (1)書類チューンで逮捕される可能性を判断できる

    罪を犯したからといって、直ちに逮捕されるとは限りません。

    捜査機関が被疑者を逮捕するには、以下の要件を満たす必要があります。

    • 被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
    • 被疑者が逃亡または証拠隠滅を図るおそれがあること


    逮捕されるかどうかは、逃亡または証拠隠滅をするおそれがあるかどうかが、判断要素のひとつになります。

    たとえば、定職がある、もしくは、家族がいるという場合には、現在の地位や家族を捨ててまで逃亡する可能性が低いと考えられることもあり、この場合、逮捕される可能性は低くなります。

    また、捜査機関から任意の出頭を求められた場合に、素直に出頭に応じていれば問題視される可能性は低くなりますが、正当な理由なく出頭を拒否していると証拠隠滅の可能性が高いとみなされて逮捕されるおそれも出てきます。

    このように書類チューンで逮捕されるかどうかは、被疑者本人の具体的な状況や対応によって異なります

    少しでも逮捕のリスクを減らしたいという場合には、早めに弁護士に相談し、逮捕の可能性の判断と回避するためのアドバイスを受けるようにしましょう。

  2. (2)刑事事件の流れについてアドバイスを受けることができる

    逮捕されるどうかにかかわらず、書類チューンの疑いをかけられた場合には、捜査機関による捜査が行われるでしょう。捜査のなかでは、申請の対象となった車両が押収されることもありますし、事情を聞くために警察署への出頭が求められることもあり得ます。

    今後どのような流れで刑事事件が進んでいくかがわからなければ不安な状態で生活を送らなければなりません。

    今後の不安を少しでも解消するためにも早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談をすれば、刑事事件の流れや取り調べの対応など、今後の見通しについてアドバイスを受けることができますので、落ち着いて対応することができるでしょう。

  3. (3)有利な処分を獲得できる可能性が高くなる

    依頼を受けた弁護士は、重い処分を回避するための弁護活動を、直ちに開始できます。

    実際に書類チューンをしてしまったとしても、違反車両を適正区分に変更したり、廃車にしたりする等で、処分を回避できる可能性が高まります。

    また、弁護人を通じて、書類チューンをしてしまった経緯を詳しく伝えることによって、軽微な違反であると認定してもらえる可能性もあります。

    重すぎない処分を回避するためには、弁護士のサポートが不可欠となりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

5、まとめ

安易な動機から書類チューンによって、原動機付自転車を改造していないにもかかわらず、改造したと偽って虚偽の申請をしてしまうことがあります。このような申請は、刑法や地方税法などに問われる可能性のある犯罪行為ですので、絶対にしてはいけません。

万が一、書類チューンをしてしまった場合には、今後の適切な対応を検討するために、まずはベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでご相談ください。刑事事件の実績がある弁護士が、迅速な解決に向けて尽力します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています