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下請法違反で企業名が公開される? 親事業者の義務・禁止行為や罰則

2020年06月22日
  • 一般企業法務
  • 下請法
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下請法違反で企業名が公開される? 親事業者の義務・禁止行為や罰則

公正取引委員会は、下請取引の適正化を目指して全国で講習会を実施しています。平成30年度の本局主催の基礎講習会は高崎市の高崎商工会議所を会場に開催されました。

事業をする際に、下請会社等に仕事を依頼する機会が多い方は「下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます)」という法律があることを知っておかなくてはなりません。下請法の規則を正しく理解していないと、適切な親事業者と下請事業者の関係が築けないだけでなく、違反行為をした場合には、罰則も受けるおそれもあるのです。

本コラムでは、下請法の概要や規則などを中心に、親事業者が気をつけるべきポイントや違反が発覚した場合の対応法を高崎オフィスの弁護士が解説します。下請法で禁止されている行為だとは知らずに、親事業者の都合を押し付けてしまっていないかご確認いただくとともに、ご不安なときは弁護士に相談してください。

1、下請法とは? 目的や概要を解説

「下請法」という法律があることを知らなかった方も多いかもしれません。そこでまずは、下請法とはどのような法律なのかについて、わかりやすく解説します。

  1. (1)下請法の目的

    下請法は、正しくは「下請代金支払遅延等防止法」といいます。昭和31年に制定されたもので、独占禁止法によって規制される取引をさらに細分化した特別法として運用が開始されました。

    通常、親事業者が下請事業者に業務を発注する場合、親事業者が優位な関係となります。ある程度は仕方のないことかもしれませんが、しかし、親事業者が自身の立場を濫用して、下請代金の不当な減額や支払いを遅延することは、下請事業者の経営を圧迫します。

    そこで、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を図るために、下請法が制定されたのです。事業の変化に応じて、規制対象となる役務が拡大されたほか、違反行為に対する措置も強化されています。

    公正取引委員会のホームページにおいて下請法の運用基準が公表されているので確認しておくとよいでしょう。

  2. (2)下請法が適用される取引とは?

    下請法の対象となる取引は、取引内容、資本金の規模により異なります。

    ①物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
    親事業者の資本金が3億円を超える場合には、資本金3億円以下の下請事業者(個人を含む)との取引が適用対象となります。
    親事業者の資本金が1000万円を超え3億円以下の場合には、資本金1000万円以下の下請事業者(個人を含む)との取引が適用対象となります。

    ②情報成果物作成・役務提供委託を行う場合(②の情報成果物・役務提供委託取引を除きます)
    親事業者の資本金が5000万円を超える場合には、資本金5000万円以下の下請事業者(個人を含む)との取引が適用対象となります。
    親事業者の資本金が1000万円を超え5000万円以下の場合には、資本金1000万円以下の下請事業者(個人を含む)との取引が適用対象となります。

  3. (3)親事業者に課せられる4つの義務

    下請法では、親事業者に対して4つの義務を課しています。

    ●書面の交付義務(下請法第3条)
    親事業者が下請事業者に業務を発注する場合、下請事業者に書面を交付する必要があります。
    書面には、下請法第3条記載の事項、具体的には、親事業者と下請事業者の名称、契約年月日、委託する内容、金額、支払いの条件等を詳しく記載しなくてはいけません。

    ●代金の支払期日を定める義務(同法第2条の2)
    発注した業務の支払期日は、物品やサービスを受領した日から起算して60日以内の期日を明確に定める必要があります。

    ●書類の作成・保存義務(同法第5条)
    下請取引に関する書類は、2年間の保存義務があります。
    書類は公正取引委員会規則の定めに従って、親事業者と下請事業者の名称、契約年月日、取引内容、金額等を詳しく記載しなくてはなりません(同法第5条)。

    ●遅延利息の支払義務(同法第4条の2)
    親事業者が下請代金の支払いを遅延した場合、物品やサービスを受領した日から起算して60日を経過した日から実際の支払日までの日数に応じて、当該未払金額に年率14.6%の遅延利息を上乗せして支払う義務があります。

    これら4つの義務のうち、書面の交付義務(同法第3条)と書類の作成・保存義務(同法第5条)に違反すると、違反した本人、親事業者(会社)等に対して、50万円以下の罰金が課せられることがあります(同法第10条、第12条)。

2、親事業者の禁止行為

下請法では、親事業者に11の禁止行為が設けられています。
これらに違反すると、公正取引委員会からの勧告が行われる可能性があるでしょう。勧告を受けると情報が公開されるため、企業の信用にかかわる大きなダメージを負います。

令和2年度では、4月時点ですでに1社が公開されています。たとえ名だたる大企業であっても、平成23年度以降の違反した企業が公表され続けてしまうのです。

  1. (1)受取拒否(同法第4条第1項第1号)

    親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入した場合、下請事業者に責任がないのに親事業者が受領を拒否する行為は禁止されています。

    たとえば、納品時に「在庫が残っているから不要」と拒否する、「社内の方針が変わったからキャンセルする」といった対応は違法です。

  2. (2)下請代金の支払遅延(同法第4条第1項第2号)

    下請代金は、物品などを受領した日(役務提供委託の場合には、役務提供を受けた日)から60日以内に定めた期日までに全額を支払わなければなりません。

    親事業者に都合があっても支払の遅延は許されないので、たとえば「お客さまからの入金が遅れているので支払いは待ってほしい」といった理由でも違法となります。

  3. (3)下請代金の減額(同法第4条第1項第3号)

    親事業者が、下請代金は発注時に決定した金額を下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注後に減額する行為は禁止されています。

    発注後に、「今期は売上が伸び悩んでいるので値引きして」といった要求は下請法違反となります。

  4. (4)返品(同法第4条第1項第4号)

    親事業者が、下請事業者から納品を受けた物品等について、不良品など下請事業者に責任がある場合を除いて返品する行為は禁止されています。

    「まだ在庫が残っている」「シーズンを過ぎてしまった」などを理由にした返品は不当返品となり違法です。

  5. (5)買いたたき(同法第4条第1項第5号)

    親事業者が、下請事業者に対して、発注の際、通常支払われる対価に対して著しく低い下請代金を押し付ける行為は「買いたたき」として禁止されています。

    親事業者の立場を悪用して「見積書は1000円になっているけど、500円でお願いしたい」といった不当な値引きを持ちかけると買いたたきとみなされます。

  6. (6)購入・利用強制(同法第4条第1項第6号)

    親事業者が、正当な理由がある場合を除き、下請事業者に対して指定する自社製品や原材料などを強制的に購入・導入させる行為は禁止されています。

    「当社と取引するなら専用端末を自社負担で導入してほしい」「当社の保険に加入してくれるなら取引をしてもいい」といった購入・利用強制は下請法違反になります。

  7. (7)報復措置(同法第4条第1項第7号)

    下請事業者が親事業者の違法行為を公正取引委員会などに知らせたことを理由に、親事業者が下請事業者に対して取引停止や取引数量を減らす措置など、不利益な取り扱いをすることは禁止されています。

    下請事業者が、親事業者の行為について公正取引委員会に報告したことを理由として、親事業者が下請事業者に対して「次回から発注量を半分に減らす」「もう御社とは取引をしない」という報復行為をすることは下請法違反です。

  8. (8)有償支給原材料等の対価の早期決裁(同法第4条第2項第1号)

    親事業者が、下請事業者に対して親事業者の部品などを有償で支給している場合に、下請代金の支払期日よりも先に部品などの代金を支払わせる行為は禁止されています。
    また、下請代金から相殺する行為も同様です。

    「この材料を使って作ってもらうけど、材料費は先払いで」といった押し付けは違法です。

  9. (9)割引困難な手形の交付(同法第4条第2項第2号)

    親事業者が、下請代金を手形で支払う場合、支払期日までに一般の金融機関で割り引くことができない手形を交付するとは禁止されています。

  10. (10)不当な経済上の利益の提供要請(同法第4条第2項第3号)

    親事業者が、下請事業者に対して自己のために金銭や役務などを提供させ、下請事業者の利益を不当に害する行為は禁止されています。

    「取引をしてあげるから、売り場の整理もしてほしい」「資材をまとめて支給するのでそちらで保管場所を確保してほしい」といった要求は違法です。

  11. (11)不当な給付内容の変更および不当なやり直し(同法第4条第2項第4号)

    下請事業者に責任がないのに、親事業者が、発注の取り消しや発注内容の変更、物品などの受領後にやり直しをさせる行為は禁止されています。

    「社の方針が変わったので、無償でデザイン変更してほしい」といった要求は下請法違反となります。

3、自社が下請法に違反していた!とるべき対策とは?

自社が下請法によって義務付け・禁止されている行為に違反していることが発覚した場合は、どのように対処すべきでしょうか。

公正取引委員会や中小企業庁が、親事業者について必要な調査等をしたあとに、親事業者が下請法で禁止されている行為をしていたと認定した場合、公正取引委員会は、親事業者に対して、勧告をすることができます。

勧告の内容としては、違反行為の取りやめ、原状回復措置、再発防止措置等を求めるものですが、あくまで行政指導であり、法的拘束力はありません。

もっとも、公正取引委員会から勧告を受けた場合には、勧告を受けた事実が公表されます。

企業の信用失墜を避けたいのであれば、勧告は絶対に避けるべきだといえます。

なお、公正取引委員会は、下請法違反を犯したとしても親事業者からの自発的な申し出があった場合で、かつ次の条件を満たす場合、勧告はしないものと発表しているためです。

  • 公正取引委員会の調査よりも前に下請法違反の事実を自発的に申し出ている
  • 違反行為をすでにやめている
  • 違反行為によって下請け業者に与えた不利益の回復に必要な措置を講じている
  • 違反行為について、再発防止対策を講じている
  • 違反行為に対する公正取引委員会の調査・指導に全面協力している


もし、自社が下請法に違反した行為をしていることが発覚した場合には、まずは違反行為をすぐにやめて、下請け業者に与えた不利益を解消するべきといえます。さらに、再発防止対策を早急に整え、公正取引委員会または中小企業庁に違反発覚を申し出ましょう。

申し出の方法は、取引の内容や違反概要、違反行為取りやめの状況や不利益回復措置の状況、再発防止策の状況を詳しく記載した自発的申出書の提出によって行われています。自発的申出書には各項目を疎明する資料を添付する必要があるため、書類作成を含めて労働関係の法令に詳しい弁護士のサポートを受けるのが賢明でしょう。

4、顧問弁護士がいることで得られるメリット

下請法に違反する行為をしていないかを知りたい、下請法違反を犯してしまったので対策を講じたい。

このような希望をかなえられるのが顧問弁護士の存在です。顧問弁護士を契約していれば、下請法によって規定された親事業者の義務や禁止されている行為について、気軽にチェックを依頼できます。法を犯さないよう対策を講じることができるのです。

下請け業者との業務委託にかかる契約書のリーガルチェックを任せれば、思いがけず下請法を犯してしまうケースも回避できるでしょう。もし下請法違反が発覚した場合でも、公正取引委員会への自発的申し出のために必要な申出書の作成や疎明資料の用意、再発防止対策の構築などを、弁護士に一任できます。

下請法の定めを犯してしまい、公正取引委員会からの勧告を受けてしまうと、企業の信用失墜を招きます。下請法違反を防ぎたい親事業者は、顧問弁護士を依頼することをおすすめします。

5、まとめ

下請法が定めた親事業者の義務や禁止行為は、下請け業者の利益を保護するためのものです。親事業者が優越的な地位を濫用していると、下請け業者からの告発によって公正取引委員会からの調査を受ける事態へと発展し、勧告によって企業名が公開されるなどの不利益が生じます。

罰則を受ける違反も存在するため、下請法を遵守するためには気軽に相談できる顧問弁護士を依頼するのが賢明でしょう。ベリーベスト法律事務所・高崎オフィスにご相談ください。

ニーズに応じてさまざまな顧問弁護士サービスを用意しているので、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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