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降格人事は違法? 処分を検討するとき気をつけるべきこととは?

2020年11月11日
  • 労働問題
  • 降格人事
  • 違法
降格人事は違法? 処分を検討するとき気をつけるべきこととは?

平成28年6月1日に実施された経済センサス―活動調査の結果によりますと、高崎市内では16940事業所におよそ17万人の方が働いています。

労働者にとって、自身の降格人事は解雇の次に望ましくない処分でしょう。そのため、労働関連法令は降格人事について労働関連法令でも規制されており、会社による違法な降格人事は会社にとってリーガルリスクが非常に大きいものなのです。

そこで本コラムでは、降格人事に関して法的な規制や過去の判例を踏まえながら、違法やトラブルの原因を防ぐ降格人事の進め方について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、降格処分の種類

降格処分の種類には、大きく分けて「人事権の行使による降格」と、「懲戒処分としての降格」の2つがあります。

  1. (1)人事権の行使による降格

    一般的に広く行われていると考えられる降格は、会社の自由裁量で行われる職位の解任および降格・降級です。

    過去の判例においては、「会社において誰を管理者に任命し、あるいは管理者の地位にある労働者を業績不振や業務不適格などの理由で更迭することは、会社の人事権の裁量的行為である」としています(平成3年3月神戸地裁判決)。

    たとえば、課長の地位にある人を部下のいない職位に降職・解任させることは、労働者の適性や能力を評価して行われる労働力配置の問題です。したがって、それが後述する権利の濫用など強硬法規違反に相当しないかぎり、労働者の降職・解任は会社の自由ともいえるでしょう。

    しかし、職能資格を低下させる降格・降級は、労働者にとっては基本給の低下をもたらす、労働契約上の地位の変更です。このような降格・降級について、過去の裁判例では「会社が労働者の職能資格や等級などを見直し、能力以上に格付けされていると認められる資格を一方的に引き下げる措置を実施する際は、就業規則に降格・降級があり得ること、および会社に労働者を降格・降級させる権利があることを根拠づけていることが必要」としています(平成8年12月東京地裁判決)。

    つまり、労働者を降格・降級させるためには就業規則などにその旨が予定されていることなどの合理的な根拠が必要であり、かつ適正な人事考課に基づくこと、権利の濫用に相当しないことが必要なのです。

  2. (2)懲戒処分としての降格

    懲戒処分としての降格は、企業秩序違反に該当する行為をした労働者に対して、会社が行う制裁罰です。これについて過去の裁判例では、「懲戒処分を行うためには、その根拠として就業規則にその要件および効果が定められていること」が前提であるとしています(平成9年7月仙台地裁)。

    また、懲戒処分としての降格により基本給や職位が下がることは、当然ながら労働者にとって不利益です。したがって、懲戒処分としての降格を有効に行う場合は、それが懲戒処分に関する法規制に沿ったものでなくてはなりません。

    就業規則などにその根拠規定があることはもちろんのこと、それに基づいて懲戒処分としての降格を行うとしても、人事権の行使による降格と同様に権利の濫用に相当してはならないのです。

2、降格人事をするときの注意点

先述のとおり、降格人事を行うときは就業規則に降格人事があり得ることが明記されていること、降格人事が会社の権利の濫用にあたらないことが要件となります。この2つの要件について、もう少し詳しくご説明します。

  1. (1)就業規則の周知義務と合理性

    人事権の行使による降格であろうと懲戒処分としての降格であろうと、降格について就業規則を根拠規定とする場合は、そのことが就業規則が明記され、さらに労働者に「周知」されていることが必要です(労働契約法第7条)。

    この周知とは、就業規則が契約として会社と労働者を拘束する前提となる周知であれば足りるとされており、実際に労働者がその内容を知っているかどうかは問われないものとしています。たとえば、労働者が就業規則を知ろうと思えばいつでも知ることができるように、社内のイントラネットに掲示したり事業所ごとに紙ベースのものを据え置いたりすることで十分でしょう。

    なお、降格などの懲戒処分については、あらかじめ就業規則に懲戒の種別と事由を定めておく必要がありますが、その事由は何でもよいというわけではありません。労働契約法第7条において、就業規則は「合理的なもの」でなければならないとされています。ここでいう合理性とは、就業規則において定められた規定について企業経営・人事管理上の必要性があり、それが労働者の権利や利益を不当に制限するものではないという観点から判断されることになります。

  2. (2)懲戒処分における権利の濫用

    ここでいう権利とは、会社が持つ「懲戒権」のことです。そして、懲戒権とは、会社が企業秩序を乱す行為をした労働者に対して降格など懲戒処分を行う権利を意味します。 また、判例によれば、企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必用不可欠なものであり、企業は、企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは、具体的に労働者に指示命令することができると示されています。(昭和52年12月最高裁)。

    繰り返しになりますが、懲戒権を行使するにあたっては、それが会社による権利の濫用となってはいけません。権利の濫用に該当するか否かの判断基準は、懲戒処分の原因となった労働者の行為(企業秩序違反行為)の重大さと、懲戒処分内容の重さとの関係となります。そして、懲戒処分の内容が不相当に重い場合は、社会通念上相当ではない懲戒処分として権利の濫用にあたるとされます。

    また、労働契約法第15条においても、降格などの懲戒処分が企業秩序違反行為の性質、態様、その他の事情に照らして客観的に合理性がなく社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効とすると規定しています。

    さらに、降格など懲戒処分は刑事罰と類似しているため、罪刑法定主義に類似する原則を満たさなくてはなりません。そのうちのひとつは繰り返し述べているように、あらかじめ就業規則に懲戒の種別と事由を定めておく「懲戒の種別・事由の明定」です。このほかに、懲戒規定を就業規則の作成・変更より前に訴求して適用してはならない「不遡及の原則」、同じ事由について繰り返し処分を行ってはならない「一事不再理の原則」があります。

3、降格人事をする場合の流れ

先述のとおり、職位の解任は会社の裁量権に委ねられます。しかし、降格・降級および懲戒処分としての降格は、職位の解任よりもさらに慎重になる必要があります。以下では、降格・降級および懲戒処分としての降格をする場合の流れについてご説明します。

  1. (1)証拠を集める

    降格人事が「客観的かつ合理的」であるためには、誰から見ても降格が妥当といえるものでなくてはなりません。

    降格・降級については、売り上げなど成績不振を示す資料を収集します。この資料は、客観的に数値化されたものが好ましいといえます。

    企業秩序違反行為については、他の労働者からの聞き取り、メールや通話の記録、そして当該労働者が企業秩序違反行為があった事実について認めたことを示す「同意書」が証拠として有効です。

  2. (2)降格の理由を説明する

    当該労働者に就業規則などを参照させながら、降格に至る理由を丁寧に説明します。ポイントは、降格・降級であれ懲戒処分としての降格であれ、降格になる理由が会社や他の労働者ではなく当該労働者自身にあることを納得・理解させることです。

    なお、懲戒処分としての降格であれば、このときに当該労働者に対して企業秩序違反行為に関する弁明の機会を与えることが必要であり、これを欠いた懲戒処分としての降格は違法であり、無効になる場合があります。

4、想定される労働者からの反発への対処法は?

継続的な昇進・昇格を期待していた労働者にとって、降格人事を受けた労働者は決して少なくない精神的なダメージを受けるかもしれません。また、給与が下がることを伴う降格人事は、経済的にも切実なダメージを受けることになります。

だからこそ会社としては降格人事について慎重かつ適法な姿勢で臨まないとならないわけですが、それでも特に自己評価の高い労働者のなかには、会社の降格人事に対して無効を訴え、裁判さえいとわない方もいることでしょう。

そのようなときに備え、労働者に降格・降級および懲戒処分としての降格を検討する際は、弁護士にご相談することをおすすめします。人事・労務の問題解決に実績と経験のある弁護士であれば、降格人事が違法なものとならないように各種の法的なアドバイスをするだけではなく、降格人事を対象労働者に説明し納得させるための適法なロジック作りについてもサポートします。もちろん、降格対象労働者への説明時に同席することも可能です。

また、当該労働者と降格人事の可否をめぐり訴訟に至った場合でも、弁護士は会社の代理人として裁判上の手続きを行います。

5、まとめ

違法な降格人事を防ぐための相談相手、そして労働者と訴訟などのトラブルになってしまった場合の代理人として、弁護士はあなたの会社の心強いパートナーとなります。何よりもトラブルを防ぐためには、降格人事だけではなく日ごろから弁護士と接点を持っておくことが有用です。

ベリーベスト法律事務所では、ワンストップかつリーズナブルな料金で対応可能な顧問弁護士サービスを提供しています。もちろん、降格人事など人事・労務関連の問題にかぎらず、幅広い分野でご相談を承ることが可能です。

顧問弁護士サービスをご検討の際は、ぜひベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士までご相談ください。あなたの会社のために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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