ネットでの誹謗中傷で営業妨害された場合の4つの対処法
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群馬県には、「インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例」があることをご存じでしょうか。
今日、ネットでは日々無数の情報が発信されており、私生活やビジネスにおいていまや不可欠なものとなっています。それだけに、ネット掲示板や口コミサイトなどにネガティブな情報やコメントがネットに掲載されたときは、その影響は甚大なものとなりうるため、安心安全にインターネットを活用できる社会を目指し手制定されたものです。
本コラムでは、ネットでの誹謗中傷により営業妨害をされた場合の対処方法について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスについて解説します。最後までお読みいただきネット上で誹謗中傷されてしまったときに必要な初動対応の理解を深めていただければ幸いです。
1、ネットにおける誹謗中傷で営業妨害をされていたら、まずはそのコメントの削除を試みる
ネットに誹謗中傷コメントによって営業妨害がされてしまった場合、まずはそのウェブサイトに対して削除依頼をすることが考えられます。
多くのウェブサイトでは、お問い合わせフォームなどによりウェブサイトの管理者に対して連絡を取ることができるので、これを通じて削除を求めるのがよいでしょう。
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(1)X(旧Twitter)の場合
Xでは以下のページからヘルプセンターへの連絡をすることができます。
https://help.twitter.com/ja/forms
該当する投稿に関する情報を当該ページに入力していきます。
該当の投稿について、具体的にどのような問題があるのか具体的に記載する必要があります。
誹謗中傷による営業妨害の場合、投稿の内容が事実無根であることや、事実であるとしても信用・名誉を毀損するものであることを具体的に記載しましょう。 -
(2)Googleマップの場合
Googleマップの口コミの削除を求める場合、該当の口コミをクリックします。さらに、右上の「︙」をクリックするとプルダウンの中に「レビューを報告」という項目があるのでこれを選択します。
報告の理由が候補として出てくるので選択して送信します。
該当の口コミに当てはまるものがない場合、「法的な問題を報告する」➡「コンテンツを報告する法律上の理由」を選択しましょう。 -
(3)削除ができない場合
ウェブサイトの管理者に対する削除請求の場合、その請求が認められるかどうかはそのウェブサイトのポリシーやルールに従って判断されますが、最終的には管理者の裁量によるため、削除が認められないことも多いです。
その場合には、裁判所に仮処分の申立てをすることが考えられます。仮処分の申立てというのは、通常の民事訴訟とは違ってあくまで仮の手続きです。しかし、仮処分命令が認められるとウェブサイトの管理者は該当の投稿の削除に応じる場合がほとんどで、かつ、通常の民事訴訟より格段に速く解決することができます。
仮処分は、① 被保全権利の存在 と ② 保全の必要性 のいずれも満たすと認められます。①「被保全権利」とは、仮処分によって守られる権利のことを意味します。ここでは、削除の対象となっている投稿が、社会的信用が毀損されていることや業務が妨害されていることを疎明することになります。
② 保全の必要性が認められるには、仮処分命令によって早急に権利を保全しなければ、被害者が重大かつ回復困難な損害を被るおそれがあることが必要です。ネットでの誹謗中傷により営業妨害をされた場合、保全の必要性が認められるために、その投稿が存在し続けることで悪評が広まったり拡散されたりするリスクが継続して存在することを主張することが考えられます。
2、誹謗中傷した人を特定する
投稿の削除とは別に、誹謗中傷をした人に対して責任を問うことを考えている場合、その前提として誹謗中傷をした人が誰かを特定する必要があります。
特定する方法としては以下の2つが考えられます。
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(1)従来の方法
従来ある方法として、2つの裁判手続きをとる方法があります。
この方法では、まず第一段階としてウェブサイトの管理者に対し、発信者情報開示の仮処分命令の申立てを行い、対象となる投稿のIPアドレスを取得します。
次に第二段階として、そのIPアドレスからアクセスプロバイダを特定し、そのプロバイダに対して発信者情報開示の訴訟を提起するか、発信者情報開示命令の申立てをして、投稿時にそのIPアドレスを使用した契約者の情報開示を請求します。
ただし、プロバイダにある投稿者の情報は3か月で消去される場合が多いため、第一段階でIPアドレスを迅速に特定する必要があります。 -
(2)新設された方法
令和4年10月のプロバイダ責任制限法改正により、従来二段階に分けて行っていたIPアドレスの開示と投稿者の情報開示、さらには投稿者の情報の消去禁止までも含めて一つの手続きの中で行うことができるようになりました。
従来の方法では、発信者情報の開示が認められるにしても、開示がなされるまでに半年以上要することもありますが、この方法により、投稿者の情報開示までの期間を短縮し、迅速な解決をすることが期待できます。
ただし、この手続きでは、プロバイダ側が強く争ってきた場合には、裁判所の開示命令に対して異議の訴えを提起することができるようになっています。そのため、その場合にはかえって長期化する可能性もあるのでこの点に注意が必要です。
3、誹謗中傷した人を特定して民事責任を問う
誹謗中傷をした人の氏名・住所などを特定することができたら、民事上の責任として損害賠償請求をすることが考えられます。
この場合、相手方に対して裁判外で直接交渉を持ちかけるか、または裁判所に対して損害賠償請求訴訟を提起することになります。
4、誹謗中傷した人を特定して刑事責任を問う
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(1)成立しうる犯罪
誹謗中傷をした投稿者に対しては、民事上の責任だけでなく、刑事上の責任を問うことも考えられます。ネット上の誹謗中傷によって営業妨害をされた場合、以下の犯罪が成立する可能性があります。
① 信用毀損罪(刑法第233条)虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
信用毀損罪とは、虚偽の風説を流布することで、社会的信用を害する罪です。
たとえば、ネット上に以下のような、虚偽の投稿をすると信用毀損罪が成立する可能性があります。- 「〇〇レストランの料理に虫が入っていた」
- 「××社は経営状態が悪くそろそろ倒産する」
- 「△△社は反社会的勢力とつながりがある」
ただし、信用毀損罪が成立するには投稿内容が虚偽であることが必要ですので、投稿内容が真実である場合にはこの罪は成立しません。
② 業務妨害罪(刑法第233条・234条)虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
業務妨害罪は、威力または偽計を用いて業務を妨害する罪です。
偽計業務妨害罪が成立する投稿の例は、信用毀損罪の例と同様です。
威力業務妨害罪が成立する例は、以下のようなものが考えられます。- 「〇〇店を爆破してやる」
- 「××会場に殴り込みにいく」
威力業務妨害罪については、投稿の内容が虚偽かどうかに関係なく成立します。
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(2)警察への相談
投稿の内容が信用毀損罪や業務妨害罪に該当するようなものであった場合、警察に被害を訴えて刑事責任を追及することを検討しましょう。
その際は、該当の投稿を証拠として印刷して持参し、被害届または告訴状を提出しましょう。
投稿の内容から見て信用毀損罪や業務妨害罪が成立しうると判断されれば警察が捜査に着手して、加害者への取り調べや逮捕、起訴など進む可能性があります。
5、弁護士に相談する前に準備しておくとよいもの
発信者情報開示や損害賠償請求の手続きは非常に専門的なので法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
刑事責任を追及する場合についても、その投稿に犯罪が成立することを警察に理解してもらう必要があります。そのためには説得的に説明をする必要があるので、弁護士のサポートを受けることがよいでしょう。
弁護士に相談するときには、対象の投稿をスクリーンショットや印刷で持参するとスムーズに方針を検討することができます。また、投稿の内容にかかわる事実関係についても、何か心当たりがあるものがあれば、整理しておくとより良いです。これについても証拠となるものがあれば可能な限り持参しましょう。
6、まとめ
ネット上での誹謗中傷による営業妨害への対処法として、投稿の削除、投稿者の特定、民事上の責任の追及、損害賠償請求の追及をすることができます。
しかし、投稿者の特定については、投稿から迅速に対応をしないと特定ができなくなってしまうリスクがありますので、投稿を発見したらすぐに行動をとりましょう。
ネットが普及した今日では誹謗中傷となるような投稿が気軽になされておりその影響は軽視できなくなってきています。投稿者を特定することができたのであれば、自身の営業を守るためにも、民事上の請求・刑事責任の追及も含めて対応を検討しましょう。ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、風評被害や誹謗中傷をされてしまったときの対応について知見が豊富な弁護士が所属しています。まずはお気軽にご相談ください。
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