サービス業の残業代請求、未払い分の計算方法は? 高崎オフィスの弁護士が解説

2019年06月13日
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サービス業の残業代請求、未払い分の計算方法は? 高崎オフィスの弁護士が解説

群馬県中部よりやや南西に位置し、東京へのアクセスも便利な高崎市。榛名神社をはじめとした和の観光スポットや美味しいグルメがたくさんあり、街は旅行客で賑わうようになりました。また、外国人の誘致にも積極的で、外国人向けの情報基盤も整備されつつあります。

さて、そんな高崎市ではさまざまな職種があります職場によっては残業代が支払われず、当然のようにサービス残業を強いられているというケースもあるようです。しかし、従業員に対して残業代を支払うことは雇用者の義務であり、受け取ることは労働者の権利でもあります。そこで今回は、主にサービス業において残業代を請求するにあたっての未払い金額の計算について、高崎オフィスの弁護士が説明します。

1、残業代の計算方法

  1. (1)残業代の計算式

    残業代は基本的に以下の計算式によって計算されます。
    (残業代)=(残業時間)×(1時間あたりの基礎賃金)×(割増率)
    残業代を計算するためには「1時間あたりの基礎賃金」を計算する必要があります。

    月給制や年俸制・歩合制の場合などで基礎賃金の計算の仕方が変わってきますので、基礎賃金の計算方法は後ほど詳しく解説いたします。残業代の割増率は、時間外労働の場合で1.25倍、休日出勤の場合は1.35倍、深夜の残業の場合は1.5倍と労働基準法で規定されています。

    計算するのが大変、大まかな目安だけでも知りたいという方は、ベリーベスト法律事務所が提供している残業代計算ページを利用してみてください。6項目入力するだけで請求可能な残業代の概算がわかります。

  2. (2)残業時間を出す

    残業代の算出に欠かせない残業時間について解説します。

    ●法定労働時間について
    残業代の割増賃金は、法定労働時間を超えた場合に支払われます。法定労働時間とは、労働基準法によって定められているもので、「1日8時間以内、1週40時間以内」です。それを超えて働いた場合は「割増賃金が発生する残業」とみなされます。

    ●時間外労働について
    あなたの法定労働時間がわかったら、次は残業時間を計算します。残業時間は、法定残業時間を超えて、業務が終了するまでの時間です。タイムカードや入退室記録、パソコンのオンオフのログなどで確認できるでしょう。

  3. (3)基礎賃金の計算

    次に基礎賃金を計算します。基礎賃金とは1時間あたりの賃金のことで、いわゆる時給です。月給制の場合の計算式は次の計算式で、算出できます。

    (基礎賃金)=(月給)÷(1ヶ月あたりの平均所定労働時間)

    ただし、ここでの月給には、一部の手当は含まれません。1ヶ月あたりの平均所定労働時間は会社が定めた年間の労働時間の合計時間を12で割って計算します。法定労働時間は、労働基準法で定められているものですが、所定労働時間は会社独自で定めているものなので就業規則で確認しておきましょう。

    日給制は、「1日の基礎賃金を平均所定労働時間で割る」、週給制は、「1週間あたりの基礎賃金を1週間あたりの所定労働時間で割る」という計算をします。年俸制の場合も同様に、「1年間の基礎賃金を所定労働時間で割る」と計算してください。ちなみに時給制の場合は時給をそのまま1時間あたりの基礎賃金として計算します。

    「契約1件成立につき○円支給します」という歩合制の場合は、「基礎賃金をその期間内の総労働時間で割る」ことで計算します。ポイントは「総労働時間である」ということです。

2、変形労働時間制の場合

  1. (1)変形労働時間制とは

    変形労働時間制とは、労働時間をある期間(1年、1ヶ月、2週間など)で定めて、その期間のトータル残業時間で、残業代を計算するという制度です。通常は、1日単位で残業代を計算しますが、変形労働時間制の場合は、あらかじめ決めておいた期間トータルで残業時間を計算します。

    たとえば、贈答品を扱う店であれば、お中元やお歳暮シーズンが繁忙期になると考えられるでしょう。1年単位の変形労働時間制が導入されている場合は、1年トータルの法定労働時間と総労働時間によって残業代を計算します。つまり、繁忙期にたくさん残業をしても、通常時の労働時間が短ければ残業代が支払わなくてよいという契約内容になっているケースがあるのです。

    変形労働時間制は、導入に条件が定められており、1年単位の変形労働時間の場合は、労使協定を結んだ上で労働基準監督署に提出するという手続きが必要です。1ヶ月単位の場合は労働基準監督署への報告は不要ですが、就業規則に始業時刻や終業時刻、変形時間の開始日を明記しなければなりません。

    会社側が変形労働時間制を理由として残業代の支払いを拒否している場合は、就業規則が変形労働時間制の条件を満たしているかどうか確認してみましょう。もし、就業規則に始業時刻や終業時刻などが明記されていなければ、変形労働時間制ではありません。通常の残業代計算方法によって算出された残業代を請求することができます。

  2. (2)残業時間を出す

    変形労働時間制の残業代は、変形労働期間中はトータルの法定労働時間を超えた部分が残業時間となります。たとえば1ヶ月間だけ変形労働時間制が導入された場合、31日の法定労働時間は177.1時間です。したがって、1ヶ月間の総労働時間が177.1時間を超えた部分が残業時間となります。

  3. (3)基礎賃金の計算

    基礎賃金とは、1時間あたりの賃金のことで簡単にいえば「時給」です。変形労働時間制の場合も、基本給を平均所定労働時間で割ったものが、基礎賃金となります。

  4. (4)残業代の割増率

    変形労働時間制の場合は、1日の所定労働時間を超えた残業の割増率は1.25倍、休日出勤をした場合は1.35倍、深夜に残業した場合は1.5倍になります。

3、残業時間に含まれるケースは?

社内では残業代が出ないことが当然であるという暗黙の了解がある行為でも、法律上は残業とみなされるケースがあります。

①早朝の朝礼や清掃
始業時間前に行われる朝礼や、当番制の掃除、お茶汲みなどは会社の指示で行っていることなので、残業とみなされます。たとえ15分程度であっても20日で5時間の残業になります。

②早朝残業
上司の指示の有無に関わらず、始業前に出社して業務を行っていれば朝だろうと夜だろうと残業です。残業といえば定時以降に働くことを想定する方が少なくありません。しかし、始業前に働いた分も法定労働時間を超えていれば残業なので、残業代を計算する際に忘れないようにしましょう。

③家に持ち帰って働く
自宅で仕事をしていた場合は、残業時間を証明することが難しく「本当に働いていたかどうかわからない」と反論されてしまう可能性があります。必ず、メモや業務日誌などできちんと記録しておきましょう。

④強制参加の研修
土日に強制参加の研修を開催する会社もあるでしょう。その時間は残業時間として認められます。ポイントは強制であることです。

4、まとめ

残業時間の計算は、働き方によって若干異なります。基本は「残業時間×基礎賃金×割増率ですが、残念ながら、業務委託契約だった方は労働者ではなく個人事業者とみなされるため、残業代の請求ができない可能性が高い点に注意が必要です。まずは契約書の確認をすることも大切なポイントでしょう。

もしあなた自身が正社員などとして雇用されている立場であれば、残業代の請求ができるかもしれません。実際に請求できる金額の概算をすぐに知りたいという方は、本文でも紹介した残業代チェッカーを活用して、残業代の目安をチェックしてみてください。

残業代を請求するためには、残業時間を証明する資料などは証拠として必要になるので、しっかりと準備しておきましょう。残業代の計算方法が難しい、証拠がなかなか見つからない、会社が残業代を支払ってくれそうにもない、などの悩みを抱えている方はベリーベスト法律事務所高崎オフィスで相談してください。残業代請求問題に対応した経験が豊富な弁護士が、親身になって残業代を計算した上で、適切な対処法をアドバイスいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています