未払い残業代は何年分まで請求できる? 時効を止める・遅らせる方法
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群馬労働局が公表する統計資料によると、群馬県の規模5人以上の事業所における令和4年の常用労働者1人あたりの平均月間所定外労働時間は11.3時間でした。これは全国と比べると1.2時間長いことがわかっています。
ただしこれはあくまで平均値です。実際には、これよりも大幅に残業しているにもかかわらず払ってもらえていない、という高崎にお住まいの方は少なくないでしょう。いつかは払ってもらいたいと考えても、残業代請求には時効があります。請求せずにいると請求できるはずの残業代は毎日消えていくことになるのです。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が、残業代請求の時効について解説します。残業代を請求する方法も説明しますので、未払いの残業代がある方は参考にしてください。
1、残業代の請求にも時効がある!
残業代請求における時効とは、残業代について支払いがなく、請求もしないという事実状態が一定期間経過することによって、請求する権利が失われてしまうことを指します。
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(1)残業代の請求をさかのぼれるのは3年まで
残業代の請求時効は3年です。支払期日から3年が経過すると請求できなくなってしまうので、残業代請求を躊躇している間に、残業代が消滅していることになります。
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(2)時効後の残業代の請求は不可能?
原則として、未払い残業代の請求時効は3年なので、3年以上前の未払い残業代を請求することはできません。時効により、残業代請求の権利が消滅してしまう条件は以下2つです。
- 時効期間が経過していること
- 時効が援用されていること
残業代請求における時効の援用とは、簡単にいえば会社側から「時効が成立したので、時効の完成した未払い残業代の消滅時効を援用する。」という意思表示を対象者に伝えることを指します。これにより、時効が完成した未払い残業代が請求できなくなってしまいます。
ただし、時効にかかっている未払い残業代について、その存在を「承認」した場合には、時効が更新されます。つまり、承認残業代を請求したとき、会社が「時効が完成しているので、支払うことができません」といわずに、「未払いの残業代があるので支払います。」と未払い残業代の存在を「承認」すれば、承認された時点で、時効が更新されます。
たとえば、5年分の未払い残業代があったとしても、会社側が時効の援用を行わず、未払い残業代を「承認」すれば全額請求できるようになるといえます。
2、時効を止める・遅らせる方法は?
残業代の請求時効は原則3年ですが、時効のカウントを止める方法があります。
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(1)内容証明郵便を会社に送る
時効の完成を猶予させるための代表的な手段が配達証明付きで内容証明郵便を送付することです。
配達証明付きの内容証明郵便とは、郵便物の内容(送付先や本文そのもの)を郵便局が記録して「○年○月○日付で相手に確かに届けたこと」を証明してくれるサービスです。これによって6か月間は時効の完成が猶予されるため、猶予されている間に交渉して残業代請求を成功させるか、以降で述べる手段を講じなければなりません。
内容証明郵便の文書では未払い残業代の金額や内訳を明示し、それを請求する旨を記載します。会社が勤怠記録を管理していて具体的な金額が不明でも請求することは可能です。とりあえず内容証明郵便の手続きさえすれば、時効を先延ばしにできると認識しておきましょう。
■参考:「未払い残業代請求における内容証明郵便の書き方|自力で行う注意点」
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(2)民事訴訟を提起する
民事訴訟とは、簡単にいうと「裁判」のことです。民事訴訟を提起することにより、時効の完成が猶予されます。
個人でも訴訟を起こすことはできますが、訴訟を起こすためには裁判所に訴状を提出しなければなりません。したがって、法律や裁判についての知識が必要不可欠です。訴状には、「原告と被告の氏名・住所」、「残業代を請求する旨」、「請求を行う原因や争点」を記載します。あまり理解していないまま裁判に臨もうとしても、訴状が受け入れられずに終わることが多いでしょう。
訴状を作っている間にも、時効のカウントが進んでしまいます。訴訟を考えるのであれば弁護士に依頼することをおすすめします。 -
(3)労働審判を申し立てる
労働審判とは、当事者間の話し合いに審判官(裁判官)や労働審判委員などの専門家が立ち会って、事実を確認したうえで、請求の可否や金額を決めるものです。
労働審判を申し立てることによって、時効の完成が猶予されます。申し立ては個人でもできるのですが、民事訴訟と同様、法律知識等が必要になります。労働審判を申し立てる場合も、民事訴訟同様、弁護士に相談しましょう。
3、弁護士に依頼した際の大まかな流れ
時効が成立している残業代がある場合は、スピーディーに残業代請求手続きを行わなければなりません。そのため、実際の請求手続きは弁護士に依頼したほうがよいといえるでしょう。
弁護士に残業代請求を依頼した場合の流れをわかりやすく解説します。
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(1)交渉
弁護士へ依頼したら、まずは会社と直接交渉します。交渉とは、依頼人の相談をもとに弁護士が会社と「電話・書面・直接会社を訪れる」という形でトラブルの解決を図ることです。
交渉を行うのは弁護士なので、依頼人は会社とかかわる必要はありません。
交渉における目的は双方合意のうえで未払い金が支払われることです。会社側が応じなかった場合は労働審判や裁判に移行します。電話や対面などで交渉する場合も、時効のカウントを停止させるため内容証明郵便も送付します。 -
(2)労働審判
基本的に、交渉の次は労働審判を行います。最大で3回の労働審判が行われますが、1回目で解決すればその時点で終了します。期間でいうと申し立てをしてから1か月~2か月程度です。2回目、3回目が開催されると、その分期間が長くなります。
それでも、裁判を起こす場合よりも期間が短く、何度も裁判所を訪れる必要がないのがメリットです。双方が合意しなくても最終回には、残業代の支払いの可否や金額が決定されます。その内容にどちらかが不服がある場合は訴訟に移行します。 -
(3)民事訴訟
会社側が断固として支払う姿勢を見せない場合や審判の内容に不満がある場合は、民事訴訟を提起することになります。
民事訴訟に至ったケースのほとんどが双方ともに弁護士を依頼しています。個人だけで対応することは非常に難しいと考えるべきです。
民事訴訟でも和解(話し合い)による解決が行われることがありますが、和解に至らなかった場合、裁判所が判決という形で、請求の認容の有無、認容額等を明示します。判決に双方納得すれば終了しますが、どちらかが控訴すれば次は高等裁判所での判断になります。高等裁判所の判断でも、どちらかが不服のある場合には、最高裁判所での判断になることもあります。
弁護士に依頼すると初期段階から「民事訴訟」を視野に入れた強気の交渉ができます。結果的に早期解決が期待できるのもメリットのひとつです。
4、まとめ
残業代請求の時効は、3年です。この期間が過ぎると請求権が失われてしまいます。しかし、内容証明郵便などの手続きをすると、時効を先延ばしすることができますし、企業側が時効の援用をしないケースもあり得ます。「請求したいけど時効が近い」という場合は、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
毎日あなたの残業代は消滅しているので、早い手続きが重要です。手続きをする時間がない、自信がないという方はまずは弁護士に相談してください。残業代請求を弁護士に一任すれば、依頼人の手間がそれほどかかりません。面倒な書類作成や交渉・労働審判は弁護士がほとんど行いますので、確実です。
ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは弁護士が、あなたの状況に応じて最適なアドバイスを行います。今この瞬間もあなたの残業代が消えている可能性があるので、なるべく早く相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています