高崎で働くサービス業の方へ|未払い残業代請求に必要な証拠の集め方
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高崎市が公表する「統計季報 NO.248」に掲載されている高崎公共職業安定所の「求人・求職バランスシート」によると、令和5年度における販売職の求人募集数は8389人、そしてサービス職は1万365人でした。いずれも求人倍率が高く、就業しやすい職種であると同時に、高崎において販売職やサービス業の労働者不足は慢性化していると考えられるでしょう。
実際に、営業時間が決まっているサービス業では特に、ほとんど休みなく働き続ける状態に陥ってしまう方が少なくないようです。体調を崩すなど、いよいよとなってから、残業代が適切に支払われていないことに気づくケースも多々あるでしょう。しかし、未払いの残業代があることを証明する証拠が必要となります。
そこで、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が、サービス業の方が未払いの残業代請求に必要な証拠集めのポイントから注意点について解説します。
1、未払い残業代請求に必要な証拠集を集めるときの注意点
未払いの残業代を請求するためには、まず「残業代が支払われていない」という証拠を集める必要があります。
証拠がなければ、自分が確かに残業したのだということを証明できませんし、そもそも請求する残業代の金額を算出することさえできません。証拠集めは残業代請求の肝であるといっても過言ではないでしょう。
しかし、証拠を集めるといっても、やみくもに集めればいいというわけではなく、いくつか注意するべきことがあります。注意事項に留意しながら証拠を集める必要があるのです。
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(1)証拠集めを会社に知られないようにする
会社側にとって、残業代未払いの証拠を集められ、裁判などで公開されることは避けたい事態です。つまり、会社側に証拠集めをしていることを知られてしまうと、証拠になるような資料の閲覧ができなくなる可能性があります。最悪の場合は、証拠となりえる資料を処分されるなど、妨害行為を受けることもあります。
また、証拠集めを在職中に行う場合、もしも証拠を集めていることが知られていると、職場での風当たりが強くなるなどの不利益が発生する可能性も高まります。
そのため、できる限り、会社には見つからないよう、証拠を集めることをおすすめします。 -
(2)証拠の質にとらわれすぎない
同じ労働問題においても、どのような証拠が必ず有効になるかなどは、ケース・バイ・ケースです。証拠は数や種類があればあるほど足元を固めやすく、有利に交渉を進めやすくなります。
もちろん、質のことを全く考えるな、というわけではありません。労働時間の記録であれば、個人的な手書きメモよりも、タイムカードのほうが確かな証拠です。だからといって有力な証拠を集めることに気を取られすぎると、ささいな証拠を見落とす結果になりがちです。そして残業代請求においては、このささいな証拠こそが重要なカギを握ることもありえます。入手できるものはできる限り集めておきましょう。
たとえば、「仕事終わりに家族へ送信していたメール」も、証拠になることがあります。確かに、私的なメールでは説得力のある証拠には見えないかもしれません。しかし、それに加えて、同僚の「その日は○時まで一緒に残業をしていた」という証言があれば、残業をしていたという事実を示す、有力な証拠となりえるのです。
このように、証拠が複数あれば、それだけで残業の存在を示す強力な証拠になります。証拠はよりすぐるよりも、できるだけ多く、あらゆる視点から集めておいたほうがよいのです。 -
(3)ひとりで抱え込まずに弁護士に相談する
残業代を請求しようとして、いざ証拠を集め始めてみると、証拠になりそうなものが何も見つからない……、ということもあるでしょう。しかし、もしもそのような状況に陥ったとしても決して諦めてはいけません。その「見つからない」という状況は、あまりにもささいな証拠であるために見落としているだけの可能性が高いのです。実際に残業をしていれば、レジの記録など、何らかの証拠が残っているはずです。
前項で、証拠はとにかく集めることが重要だと説明したとおりです。個人的なメモ書きやSNSへの投稿のように、一見すると証拠になるとは思えないものを見落としていないか、落ち着いて再検証する必要があります。
それでも見つからないときや、証拠になるかどうか不安なときなどは、弁護士に相談することをおすすめします。労働問題への対応経験が豊富な弁護士ならば、過去の経験から判断することもできるでしょう。それ以上に、会社側があなたに対して開示を拒んでいた証拠でも、法的な手続きによって入手できる可能性があります。弁護士が入ることで、個人では入手できなかった証拠を手に入れられるだけでなく、すんなり残業代の支払いに応じるケースが多々あるのです。
証拠が全くないように思えても、諦めず、弁護士に相談してみましょう。
お問い合わせください。
2、証拠になるものと集め方のポイント
前項で、「どんなささいなものでも証拠になりえる」と解説しました。それでも、実際にどのようなものが証拠になるのかを、具体的に知っておくことで、証拠集めを効率よく進められる可能性が高まります。
そこで、残業代請求の証拠になるもののほんの一例を紹介します。
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(1)残業時間を証明するための証拠
まずは、残業代請求時に有力な証拠となるものを解説します。
●タイムカード
タイムカードは、そもそも労働時間を記録するためのものです。当然、残業代請求においても有効な証拠となりえます。ただし、最近はIT機器を用いて記録している企業も少なくありません。その際には、勤怠管理ソフトのログが必要となります。
●パソコンのログイン・ログアウト記録
たとえ個人客の対応をすることが多いサービス業でも、業務にパソコンを使わないということはめったにありません。たとえば、レジや美容院のカルテ、商品の検品などでも、パソコンが使われているケースが多いでしょう。
業務で使う以上、パソコンのログインはすなわち「仕事の開始」となりえますし、パソコンのログアウトは「仕事の終了」だということができます。またパソコンは、該当機本体のログイン・ログアウト歴を正確に記憶していますから、残業代請求の証拠として利用できるケースもあります。
●業務メール
メールは送受信した時間を記録しています。よって、業務時間外に業務メールの送受信が行われていれば、残業をしていた事実を示す証拠として利用できます。 ただし、職場に据え置かれているパソコンではなく、ノートパソコンやスマートフォンなどで受信できてしまうケースでは、証拠として認められない場合があることには注意が必要です。
●メモ書き
会議の開始時刻や業務の期限など、残業の有無や時間を示唆することが記載されていれば、たとえメモでも証拠となる可能性は十分あります。
●家族へのメールやSNS
メールやSNSへの書き込みなども、残業の存在とその時間を示す証拠として利用できます。自分が送受信したメールや、SNSへの過去の投稿などは必ずチェックしておきましょう。 -
(2)金額の算定に必要な証拠
後日、弁護士などに依頼すれば入手できるものの、できる限り、あらかじめ自分で集めておいたほうがよい証拠です。
●雇用契約書
入社時に渡されることが多い「雇用契約書」には、残業代の支払いについての規定が記されています。残業代請求を行う際には、時間給や規定労働時間から請求する残業代を算出するために必要となる書類です。
●給与明細
残業代請求を行うためには、支払われた額に残業代が含まれていないこと、そして不足している残業代がいくらかを把握する必要があります。つまり、実際に支払われた金額と、残業代を含めて本来支払われるべきだった金額とを比較し、未払いの残業代を算出する必要があるのです。その際、実際に支払われた金額の確認要として、給与明細が必要になります。
なお、使用者側が通常の給与に残業代が含まれている、というような反論を行った場合、給与明細を確認し、通常の給与と残業代分とが分けて記載されているかを調べる必要があります。その際でも重要な証拠として機能します。
●就業規則
就業規則には、各会社、労働者個人によって異なる、給与や残業代についての決まりが明確に記載されています。残業代を請求する際には、就業規則にそって、「給与が支払われているか」・「労働者側に同意は得られているか」・「そもそもその就業規則はルールに基づいて定められているか」といった事実を確認する必要があります。その際にはやはり、実際の就業規則が必要不可欠となります。
上記の証拠はあくまで一例です。他にも残業代を請求するための証拠はありますので、お気軽に弁護士などにご相談ください。
3、サービス業だからこそ気をつけるべき点は?
前提として、業種の違いによって残業代が変わることはありません。残業代とは、通常支払われている賃金に法律で定められた比率をかけて求められるものであり、その比率は業種を問わず同じであるためです。
しかし、すべての業種で残業代が請求できるといっても、業種ごとに労働者がおかれている状況は異なるといえるでしょう。ここでは、美容系やアパレル、スーパーなど、サービス業における残業代請求の方法について解説します。
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(1)サービス業に従事する一般従業員の場合
サービス業は、時間外労働についての問題が発生しやすい業種です。個人店に至っては、タイムカードが存在しなかったり、タイムカードの打刻後に労働を強いられたりと、残業代を支払わずに済むようにさまざまな悪知恵を働かせている職場も珍しくありません。
そのため、シフト表やレジの記録のような、細かな証拠をできるだけ多く集めて残業代請求に臨む必要があるでしょう。証拠集めに悩んだら、弁護士に相談してください。 -
(2)店長など管理職と呼ばれる役職についている方の場合
管理職などの役職についている方は、「基本給や役職手当てに残業代を含む」とする労働契約を結んでいるケースがあります。しかしながら、法律および判例上、「管理監督者」に該当するか否かは、以下の要素により判断されます。
- 職務内容が管理監督者としての職務であるか
- 経営方針や採用状の指揮など、経営者と一体的な立場に立っているか
- 自己の勤務時間について裁量権を持っているか
- 賃金などの手当てが、役職に見合ったものであるか
つまり、これらの要素を考慮のうえ、「管理監督者」に該当しない場合は、管理職であることを理由に残業代の支払いを拒否することができなくなります。店長として残業代を含む役職手当てがつけられていても、本店から労働時間が定められている、経営者の指示を受けて業務を行っているなどのケースでは、「管理監督者」に該当しない場合があります。
そのため、「店長職」などにおける残業代請求を考える際には、実際の業務内容や処遇がいわゆる「名ばかり管理職」ではなく、本当に「管理職」に相当するものであったかどうかが争点となります。
4、まとめ
働いたからには、その分の給料をきちんと支払っていただくべきです。労働契約はそのために結ぶものなのですが、現実にはその内容を曲解してごまかされていることがあります。なかには、依頼しても残業代を支払ってもらえない……というケースも少なくないようです。
しかし、請求する側がそのまま諦めてしまえば、その残業代が支払われる日はやってきません。もしも未払いの残業代があったとしても泣き寝入りしないでください。
個人だけで戦い続けることには、やはり限界があります。また、労基署(労働基準監督署)へ訴えたとしても、直接あなたの未払い残業代を取り戻すために交渉してくれるわけではありません。だからこそ、あなたの代理人として会社との交渉から対応が可能な弁護士に相談すべきといえます。
未払いの残業代請求をはじめとした労働問題について知見が豊富なベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士は、あなたの未払いの残業代が、少しでも早く支払われるよう、心を込めたアドバイスを行います。 まずはお気軽にご相談ください。
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