ネットショップ運営者は知っておくべき! 特定商取引法とは?
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群馬県においては、特定商取引法違反に基づく業務停止命令、業務改善指示などの処分が平成30年に5件実施されています。ネットショップを運営するにあたり適用される特定商取引法については、きちんと把握し対応する必要があります。特定商取引法に違反すれば、業務停止命令をうけたり罰則を科されたりするなどにより、事業に多大な影響を及ぼします。
ここでは、ネットショップ運営にあたり必要な法律対応について、高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、特定商取引法とは?
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為などを防止することにより、消費者の利益を守るための法律です。具体的には、訪問販売や通信販売などの消費者トラブルを生じやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールと消費者を守るルールなどを定めています。ネットショップは、事業者がインターネットで広告し、インターネットの通信手段により申し込みを受ける取引であり、「通信販売」として本法律の対象となります。
2、このような行為が特定商取引法違反に該当
特定商取引法における「通信販売」については、次のような定めがあり、これに従わないと違反になります。以下簡単にご説明します。
①広告の表示(特商法第11条)
通信販売は、隔地者間の取引であり、消費者にとって広告が唯一の情報となるため、広告の記載が不十分、不明確であることから生じるトラブルを避けるため、広告に表示すべき事項は次のように規定されています。従って、ネット販売においては、ホームページなどにこれらを欠かさず表示する必要があります。
- 販売価格(送料含む)
- 代金の支払い時期、方法(代金引換、銀行振込は振込手数料の負担、コンビニ決済など)
- 商品の引渡時期
- 商品の売買契約の申し込みの撤回または解除に関する事項(返品、交換の特約がある場合はその旨含む。注文番号を必要とする場合など)
- 事業者の氏名、住所、電話番号
- 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者など代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
- 申し込みの有効期限(あれば)
- 販売価格、送料など以外の負担すべき内容と額(あれば)
- 商品に隠れた瑕疵があった場合の販売業者の責任内容(定めがあれば)
- ソフトウェアに関する取引の場合、ソフトウェアの動作環境
- 商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨と販売条件
- 商品の販売数量の制限など特別な販売条件(あれば)
- 請求によりカタログなどを別途送付する場合の金額(有料であれば)
- 事業者の電子メールアドレス(電子メールによる商業広告を送る場合)
※広告の表示事項を省略できる場合について
広告の態様は多様でスペースなどもさまざまであるため、これらをすべて表示することが難しい場合もあります。そこで、次のような条件をいずれも満たす場合、広告の表示事項を一部省略することができることになっています(特商法第11条但書)。
- 消費者から請求があった場合はこれらの事項を記載した書面 (電子メールも可)をすみやかに提供することを広告に表示する。
- 実際に請求があった場合にすみやかに提供できるような措置を講じておく。
省略できる場合を除き、上記の表示をしていない広告は特定商取引法違反になります。
②誇大広告などの禁止(特商法第12条)
消費者トラブルを未然に防止するため、著しく事実と違う表示や実際のものより著しく優良であったり有利であったりすると誤認させるような表示を禁止しています。
③未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(特商法第12条の3、12条の4)
消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者は電子メール広告を送信することを、原則禁止しています。
④未承諾者に対するファクシミリ広告の提供の禁止(特商法第12条の5)
消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者はファクシミリ広告を送信することを、原則禁止しています。
⑤前払式通信販売における承諾などの通知義務(特商法第13条)
消費者が商品の引き渡しを受ける前に、代金の全部あるいは一部を支払う「前払式」の通信販売の場合、事業者は、入金確認後商品の引き渡しに時間がかかるときには、その申し込みの諾否など次の事項を記載した書面を渡さなければなりません。
- 申し込みの承諾の有無(承諾しないときには、受け取ったお金をすぐに返すことと、その方法を明らかにしなければならない)
- 代金を受け取る前に申し込みの承諾の有無を通知しているときには、その旨
- 事業者の氏名、住所、電話番号
- 受領した金額(それ以前にも金銭を受け取っているときには、その合計額)
- 代金を受け取った年月日
- 申し込みを受けた商品とその数量(権利、役務の種類)
- 承諾するときには、商品の引渡時期
⑥契約解除に伴う債務不履行等の禁止(特商法第14条第1項参照「)
たとえば、売買契約の申し込みが撤回された場合などに、事業者は代金返還など債務の履行を拒否したり、遅延したりすることを禁止しており、すみやかに返金や履行などの対応をする必要があります。
⑦顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為等の禁止(特商法第14条第2項参照)
インターネット通販において、次のような「顧客の意に反して売買契約などの申し込みをさせようとする行為」を禁止し、行政処分の対象としています。
- あるボタンをクリックすれば、それが有料の申し込みとなることを、消費者が容易に認識できるように表示していないこと
- 申し込みをする際、消費者が申し込み内容を容易に確認し、訂正できるように措置していないこと
など
なお、通信販売の際、消費者が契約した商品の引き渡しを受けた日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申し込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品が可能です。なお、事業者が広告であらかじめ、この契約申し込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合はその特約によることになります。
3、特定商取引法に違反したらどうなる?
特定商取引法に違反した場合、業務改善指示や業務停止命令(業務の停止)・業務禁止命令(代表取締役などの業務の禁止)の行政処分、または罰則(懲役、罰金など)の対象となります。
4、不安があれば弁護士に相談すべき理由
ネットショップを円滑に運営するためには法的な問題を避けて通ることができないところ、個人事業主や中小企業の方が、自身で法務機能を設置することは現実的ではないと言えるでしょう。一方、ネットショップなどの通信事業においては、問題が生じた際に、対応のスピードが求められます。このようなときに、自身だけで悩んだり判断したりして問題をさらに悪化させる前に、一度法律の専門家である弁護士に相談することは、問題を早期に解決するための一歩になると言えます。
5、まとめ
ネットショップを運営していく場合、お客さまとの関係でさまざまな法的問題に直面することがあります。自身で対応方法を確立しておくのはもちろんのこと、このようなときに備え、法的な問題について気軽に相談できる顧問弁護士を利用するのも一案です。ベリーベスト法律事務所は、低コストで始めることができる顧問弁護士サービスもご用意していますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています