退職させてくれない! 違法な在職強要は弁護士に相談すべき理由

2024年02月08日
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退職させてくれない! 違法な在職強要は弁護士に相談すべき理由

群馬労働局が公表する「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、令和3年度中に群馬県内の総合労働相談コーナーに寄せられた自己都合退職に関係する相談は1240件で、前年より12.7%増加しています。

人手不足が叫ばれるようになった昨今、正社員はもちろん、派遣社員などにおいてもなかなか退職ができず悩まれている方が少なくないようです。そのためか、退職代行と呼ばれる、労働者の代わりに退職の意思を会社に伝えるサービスが広がっています。

では、退職させてもらえないというだけでなく退職するなら損害賠償を請求するなどと脅されるなどの在職強要を受けた場合、本来どのように対処すべきなのでしょうか。本コラムでは、在職強要があった場合どのように対処すべきかについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、会社を辞めることについての法律

退職(雇用契約の解約)について民法では、期間の定めのある雇用契約と期間の定めのない雇用契約について、それぞれ定めています。

  1. (1)期間の定めのない労働契約(雇用契約)の場合:正社員

    法律上、期間の定めのない労働契約の場合、労働者から申し出る「辞職」は原則として2週間前に申し出ればよく、使用者の承諾を要しないものとされています。
    退職届を出した際に、会社がこれを受理せず「一方的に辞めることは許されない。」と言われたとしても、法律上は従う必要性はありません。具体的な退職理由を申告する必要もなく一身上の都合で十分です。

    もっとも、2週間前に申し出ればよいというのは法律上の定めであって、会社とのトラブルを避けようと思うのであれば、引き継ぎの期間をとるなど、就業規則に手続きが定められていればそれに従うのが基本的には求められます。パワハラや強引な引き止めにあっている場合などに、最終手段として申し入れから2週間で退職するというのを実行するのがよいでしょう。

    また、裁判例上、2週間の期間をおかずに退職して会社に損害が発生した場合、会社から労働者に対する損害賠償が認められたケースもありますので、退職の申し出はきちんと手続きを踏んで行うことが重要になります。

  2. (2)期間の定めがある労働契約の場合:契約社員や派遣社員

    法律上、雇用期間の定めがある労働契約の場合には、期間途中で退職をするときには、「やむを得ない理由」が必要と定められており、労働者側に過失があれば損害賠償を負うと定められています。したがって労働者は、退職を希望する理由がやむを得ない理由にあたるかどうかを検討する必要があります。損害賠償を負う可能性があるかは判断が難しい場合もありますので、詳しくは弁護士に相談するとよいでしょう。

2、退職させてくれない……違法の可能性が高い3つのケース

次のようなケースは、違法の可能性が高いと言えます。退職にあたり会社ともめて、このような状況に陥ることは、会社側に違法の可能性が高いとしても、労働者側にとってもデメリットが大きいといえるでしょう。したがって、退職にあたって在職強要を受ける可能性があるというような場合は、円満に退職を進められるよう必要に応じて事前に弁護士のサポートをうけるとよいでしょう。

  1. (1)保留ケース

    • 職届を出しても受理してもらえない。留保、預かりなどのまま時間が経過している。
    • 在職強要を押し切って退職したが、社会保険、離職票などの手続きをしてもらえない。
  2. (2)脅しケース

    • 損害賠償請求すると脅される。
    • 懲戒解雇すると脅される。
  3. (3)不当な対応ケース

    • 不当に過大な引き継ぎを要求される。
    • 会社に損害を与えるので、勤務最終月の給与は払わないといわれる。
    • 在職強要を押し切って退職すると、悪評を流される、転職活動、再就職を妨害される。

3、違法な在職強要に遭った場合の相談先

違法な在職強要にあった場合の相談先については、次のような機関があります。

  1. (1)厚生労働省管轄「総合労働相談コーナー」(勤務先企業が所在する都道府県)

    解雇、雇止め、配置転換、賃金の引き下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象とし、専門の相談員が面談もしくは電話で対応してくれます。
    希望の場合は、裁判所、地方公共団体(都道府県労働委員会など)、法テラスなどの他の紛争解決機関にも案内してくれます。

  2. (2)全国労働組合総連合(全労連)労働相談ホットライン

    地域の労働相談センターへつながり相談を受け付けてくれます。

  3. (3)弁護士

    専門知識をもって、相談から法的解決まで一括して対応してくれます。在職強要の程度によっては、法律相談のみで解決するケースもあります。依頼することで、代理人として会社相手に直接交渉してもらうことも可能です。

4、違法な在職強要の対応を弁護士に依頼するメリット

労働者が会社に対して強い姿勢で交渉することは容易なことではありませんが、会社側の言い分が正当なものなのかどうかもわからないまま、会社に逆らえずに時間だけが過ぎていくことは避ける必要があります。
弁護士に依頼することで、弁護士が、会社側の根拠のない損害賠償請求を拒否したり、退職の際に会社が作成すべき書類を滞りなく作成するよう会社側に促したりして、円滑な退職に向けてサポートしていきます。弁護士が間に入ることで、会社側が法的に理由のない主張を取り下げることも期待できます。具体的には次のようなメリットが考えられます。

  1. (1)法的に正しい対応ができる

    会社が在職強要をするとき、労働者に対して伝える法律の解釈は一方的に会社だけに有利な内容であることがありえますが、労働者側でその間違いを直ちに判断することは難しい場合も多いといえます。仕事のミスなどを指摘されたうえ、損害賠償をほのめかされ、反論できずに時間が過ぎることもあるでしょう。
    この点、専門知識を備えた弁護士が対応することで、会社側は不当な解釈を展開することが難しくなります。

    また、弁護士は円満退職へ進めていくために、はじめに内容証明郵便によって労働者の退職の意思を会社に伝えますので、これにより退職の意思表示をしたことを客観的に証明することができます。今後争いになった際、客観的な証拠を残しておくことは非常に重要になります。

  2. (2)交渉のストレスを避けられる

    退職を一度拒絶された会社側と継続して交渉することは、大きなストレスです。弁護士を代理人にし、退職交渉の窓口とすることによって、交渉のストレスを避けることができます。

  3. (3)労働問題を一括解決できる

    在職強要を行う会社は、在職強要以外にも労働問題を抱えていることがあります。たとえば、適正な残業代が支払われておらず、未払い残業代の請求ができるケースもありえます。
    また、パワハラやセクハラの慰謝料を請求する必要があるような場合は、労働審判、訴訟などの手続きを行うこともあります。このような労働問題を一括して解決できる点も、弁護士に相談するメリットになるでしょう。

5、まとめ

退職については雇用と同様に法律で定められています。あなたが期間の定めがない正社員なのか、期間の定めがある派遣社員なのかなどを再確認し、適切な手続きによって退職を進めましょう。ただし、退職の意思を申し出たにもかかわらず退職させてくれないケースが少なからずあります。遅々として手続きを進めてくれないケースだけでなく、なかには、辞めたらら損害賠償請求をするなどと脅す場合など、違法な在職強要が含まれているかもしれません。

「在職強要を受けているが対処法がわからない」、「とにかく早く退職したいが退職代行に依頼すべきか」など在職強要を受け会社を退職させてもらえずに悩まれている方は、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスまでご相談ください。労働問題についての知見が豊富な弁護士が、未払いの残業代の有無や違法な在職強要なのかどうかなど、総合的な判断を行い、あなたが行うべき適切な対応についてアドバイスが可能です。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています