シフト作成でサービス残業などタイムカードがないときの残業代請求法
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群馬労働局が公表する「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果」によると、群馬労働局が令和4年度中に監督指導を行った事業場のうち「賃金不払残業があったもの」は57事業場ありました。内16事業場が製造業、14事業場が接客娯楽業であることも報告されています。
残業代の請求にはタイムカード等の「証拠」が必要です。しかし、サービス業など一部の業種ではタイムカードがないケースもあるようです。さらには、シフト作成時にはタイムカードを押した後に行うように命じられており、実質サービス残業となっている方も少なくないでしょう。その場合はどうすればよいのでしょうか。
本コラムでは、タイムカードがない場合の残業代請求方法と証拠などについて、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。
1、残業代請求にタイムカードは必須?
一般的に、企業が勤怠管理を行う際にはタイムカードを使用するケースが多いようです。しかし、タイムカードではない物を使用して勤怠管理をしている会社もあります。結論からいえば、タイムカードがない職場の場合は残業代請求をあきらめるしかないのか? といえば、そうではありません。
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(1)タイムカードがなくても残業代を請求できる場合がある
残業代請求にタイムカードは必須ではありません。そもそも、労働基準法等でタイムカードで勤怠管理することは企業の義務であると明記されているわけではないためです。
タイムカード以外にもさまざまな方法で勤怠管理を行うことができますので、タイムカードがないからといって、残業代の請求をあきらめる必要はありません。残業代の請求に必要なのは、タイムカードに限らず「残業をしていたことを証明できる証拠」です。
会社側が出退勤を管理していない場合は、従業員の記録で残業代の請求が可能となるケースもあります。タイムカード以外での残業代請求については次の項目で詳しく説明いたします。 -
(2)タイムカードの記録が正確でない場合もある
タイムカードは、会社が公式に設置している出退勤管理なので、残業代を請求する際に「強い証拠」になるのは確かです。会社が用意しているものなので、タイムカードにより、タイムカードに打刻された時間は就業していたと強く推認されます。
ただし、タイムカード自体が確実な証拠とは言い切れません。店舗の営業時間と同時にタイムカードで打刻したあとにシフト作成を行うよう指定されているケースなど、定時にタイムカードを打刻した後で残業を強いる企業も存在するからです。その場合は、タイムカード以外の証拠を用意して、残業代を請求する必要があります。
2、タイムカード以外の残業時間を証明する「証拠」とは
残業していた事実を証明するための証拠は、タイムカードだけではなく多岐にわたります。ひとつひとつは信用性が低いと判断される証拠であっても積み重なれば強い証拠になるケースもあるでしょう。あきらめず、集めてみることをおすすめします。
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(1)パソコンのログイン・ログアウト記録
業務でパソコンを利用している場合、パソコンのログインやログアウトの記録を勤務時間の記録として主張することが可能です。多くの機種で、ログイン・ログアウトのログが記録されていますので、プリントアウトしておきましょう。
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(2)業務日報・日誌のコピー
業務日報や日誌を毎日つけていて、出勤時間、退社時間まで記録してある場合は、それらも証拠となります。上司の印鑑などが押してあれば、より強い証拠になる可能性が高いでしょう。すべてを確保することは難しいかもしれませんが、できるかぎり写しを取っておいてください。
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(3)業務メール
仕事の進捗状況や、シフト作成や売り上げ報告、仕事が終わったことをメールしているのであれば、それが残業の証拠となる可能性があります。取引先や顧客に業務連絡のメールを送信している場合も、その時間は働いていたことを表す証拠となるので保存しておきましょう。
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(4)家族へのメールやSNSでの発言
仕事が終わったことを家族や友人にメールなどで報告している場合や、SNSに投稿している場合は、それも残業代の証拠として認められるケースもあります。過去2年以内のメールやSNS投稿を保存、もしくはプリントアウトしておきましょう。
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(5)メモ書きや日記
自分で、出勤時間や退社時間を毎日メモや日記に記録している場合は、それも残業の証拠となります。大ざっぱに記入しているものではなく、分単位かつ長期間にわたり記録しておくほうが、裁判所などでは「信用性が高い」とみなされる傾向があります。また、具体的な業務内容等も記載するとよいでしょう。
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(6)シフト表
美容やアパレル、スーパーなどの場合、シフト表によって勤務を管理していることもあります。シフト表自体が、法定労働時間である「1日8時間、週に40時間」を超えている場合はシフト表が残業の証拠となるでしょう。
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(7)レジ打ちの記録
アパレルやスーパーなどのレジ担当の場合、レジ打ちの際に担当者名が記録されるケースが少なくありません。定時を超えてもレジの記録にあなたの名前があれば、残業を証明する証拠といえます。
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(8)顧客の予約
美容室などの場合、顧客の予約時間が法定労働時間を超えているケースがあります。美容室で記録している予約表も確認してみましょう。
3、それでも証拠が見つからない場合の対処法
先述した残業の証拠はあくまでも一例です。上記のものが一切見つからなくても、未払い残業代請求の道が閉ざされるわけではありません。
残業代請求の実績が豊富な弁護士などの専門家に依頼すれば、あなたの事情を確認した上で、「このような証拠があるのではないか」と提案してもらえます。また、証拠についても、ご自身で証拠を見つけることができなかったとしても、弁護士が証拠の開示を求めれば応じる会社が少なくありません。
したがって、残業の証拠を見つけられない、まったく証拠がない場合は弁護士に相談しましょう。労働基準監督署や労働局といった公的機関でも残業代の未払い問題の相談に乗ってくれますが、彼らの決定に法的拘束力はないため、残業代を支払うように指導しても、会社側が支払わない可能性があります。
その点、弁護士であれば最初から訴訟等を視野に入れた交渉を行うことができます。示談交渉で会社側が譲歩しなかった場合は、訴訟に踏み切れますし、訴訟で会社側に残業代を支払うようにという判決が出れば、会社の資産等を差し押さえることもできるでしょう。
残業代の証拠が乏しい場合、もしくはまったくない場合でも、あきらめる必要はまったくありません。まずは、弁護士に相談することをおすすめします。
4、まとめ
タイムカードがなかったり、実質タイムカード上では残業をしていないことにさせられていたとしても、未払い分の残業代請求は不可能ではありません。シフト表やメールの送信履歴、パソコンのオンオフやレジの記録、予約表など、アパレル系や美容室、スーパーならではの勤務時間把握方法も存在します。あきらめずに、残業をしていたという事実がわかるものを集め、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、未払い残業代請求事件についての知見が豊富な弁護士が、あなたの権利を守れるようサポートします。タイムカードが存在しない、もしくは残業代が発生していたという証拠になるかどうかわからないというケースでも、お気軽に相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています