ボーナスで残業代が支払われるのは違法! 対処法と未払い分の請求法

2024年03月28日
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ボーナスで残業代が支払われるのは違法! 対処法と未払い分の請求法

厚生労働省発表の「監督指導による賃金不払残業の是正結果」によると、令和4年中に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数は20531件、対象金額は121億2316万円にも上ったようです。高崎市やその近郊で働いている方で、会社から「残業代はボーナスに含まれている」と言われたというケースが見られます。結論から言えば、残業代は毎月支払われるべき賃金であり、ボーナス時にまとめて支払うという扱いは違法です。

本コラムでは、ボーナスに残業代を含んで支給するというケースが違法かどうかという基本的な部分から、未払い残業代があるときの請求方法や対応方法について、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスの弁護士が解説します。

1、ボーナスの中に未払いの残業代が含まれるのは違法?

たとえば、月々の残業代は支払わないが、残業代として多めにボーナスを払うと説明する会社があります。しかし、これは、「賃金は毎月払わなければならない」という労働法の基本的なルールに違反します。

  1. (1)ボーナスの中に残業代を含むのはどの法律に違反するのか?

    ボーナスと残業代はまったく異なる性質をもったお金です。ボーナスは、毎月払いの給与とは異なる支払いシステムで支払われるものであるため、お互いを補填することはできないのです。

    そもそも残業代はその月に残業をした分の賃金です。したがって、月ごとに支払う必要があります。労働基準法第24条には賃金を原則通貨で支払うことと、月ごとに1回以上、決められた一定の期日に支払うべきことが明記されています。毎月の基本給、残業代、休日手当、深夜・早朝手当などは、この定められた支払日を守らなければいけません。

    また、法定労働時間である「1日8時間、週40時間」を超えて働いた場合、割増賃金(1時間あたりの基準賃金の1.25倍)を含めた残業代を支払う必要があります。ボーナスで支払うということは、その割増賃金も定められた支払日を延滞して支払うということになります。当然、これも違法となります。

  2. (2)年俸制の場合、ボーナスに残業代を含むのは違法?

    上記で解説した労働基準法第24条は年俸制にも適用されます。年俸も給与ですし、契約が雇用関係として結ばれている以上、年俸は月払いで支払わなければなりません。絶対に年俸にボーナスを含めることができないわけではありませんが、残業代をすべて含める行為は原則的に認められていません。

2、残業代のせいでボーナスを減らされるのは違法?

では、「毎月残業代を支払うが、その分のボーナス(賞与)を減らす」というパターンは違法となるでしょうか。確かに労働基準法にはボーナスの具体的な金額も、ボーナスの支払い義務も記載されてはいません。しかし、「残業したことを理由にボーナスが減らされる」ことは違法となります。

ボーナスに残業代を含める行為は実質的にボーナスを減らすことといえます。もちろん、必ずしも企業が労働者を苦しめるために行っているわけではない場合も考えられます。たとえば、事務処理の遅れという理由で、残業代の後払いを苦肉の策として行っていることもあり得るでしょう。しかし、違法という事実に変わりありません。

そもそも労働者にとって、「賃金の支払期日を守ってもらえないこと」そのものが不利益です。仮に残業代をまとめて支払うとしても、後払いされることになれば、本来、遅延損害金や遅延利息をつけてもらえるのが法的に認められています。ボーナスに含まれた未払いの残業代を請求する際は、それも考慮して請求することができるでしょう。

3、未払い残業代でも請求できないケース

残業代がボーナスに含まれると使用者から伝えられているケースでも、残業代を請求できないパターンが存在します。具体的にどのようなケースがあるのかを、見ていきましょう。

  1. (1)そもそも残業代が発生していないケース

    【業務委託契約を締結している場合】
    そもそも、あなたが労働基準法で定めている「労働者」ではないケースでは、たとえ法定労働時間を超えて働いていたとしても残業代を請求することができません。たとえば、保険外交員や個人請負業者など、業務委託契約を結んでいるケースが該当します。

    そのほかにも、労基法で定められた「管理監督者」や「事業場外労働」に重視しているケースや、裁量労働制によって雇用されているケースでも、残業代を請求することはできないでしょう。ただし、実態が労基法で定められた内容に沿っていないという事実が認められれば、残業代を請求できることもあります。ご不明の場合は弁護士に相談することをおすすめします。

    【固定残業代制度が採用されている場合】
    雇用契約書を交わす時点で、毎月支給する手当に一定時間分の残業代を含むと明確に説明している会社の場合、一定時間分の残業代はきちんと払われているといえます。つまり、契約書上に記載されている時間分の残業代については会社に請求することができません。

    もっとも、一定時間分以上の残業を行った場合は、その分について請求できます。手当に何時間分の残業代が含まれているのか、あらかじめ確認が必要です。

  2. (2)時効を超えてしまったケース

    残業代の請求にも時効があります。退職手当を除く賃金の請求権は2年間と定められています。つまり、発生から2年以内に請求しなかった残業代は、労働基準法115条により時効によって、残業代を請求できる権利そのものが消滅してしまうのです。

    未払い残業代を請求する際は、時効を迎えていないかどうかについて注意してください。

4、残業代が正当に支払われないときの対処方法

未払い残業代を請求するための方法はいくつかあります。しかしいずれの場合も証拠が大変重要になります。請求した根拠を立証する責任は、請求する側に求められるためです。

  1. (1)まずは残業代の証拠を集める

    具体的に証拠として有効とされるものは以下のとおりです。契約書や給与明細などは、念のため保管しておく癖をつけておいてください。

    【実際に働いていた時間がわかるもの】

    • 採用されたときに発行された書類や取り交わした契約書
    • 会社の就業規則がわかるもの(コピーでも可)
    • 給与明細
    • タイムカードのコピーなど、具体的にどれくらい働いていたかがわかる書類
    • 業務用メールアカウントの送受信記録の履歴
    • 帰宅時に使用したタクシーの領収書


    【どのような業務のために残業していたかわかるもの】

    • 残業指示を受けたときのメール、残業指示が書いてあるメモ、残業承諾書など
    • 日記などの備忘録
      (家族や親しい友人などへの報告、退社時に残業内容などを個人のメールに送信など)


    最近では、スマホについているGPSで会社滞在時間を記録するアプリなどもあるようです。今後に備えて利用を検討してみてもよいかもしれません。

  2. (2)証拠がない場合の対処方法

    証拠を集めることが難しいというケースもあります。その場合は、残業の証拠たる書類の提示を会社に依頼することになるでしょう。ただし、個人で会社側へと証拠開示を求めるのは難しいものです。結果的に弁護士を通じて証拠開示を求めたほうがスムーズに進むケースのほうが多いと考えられます。個人が請求しても、「残業を示すものは何も残っていない。捨てた」など、非協力的になるパターンが少なくないためです。

    その場合は、証拠保全手続きを行うことになります。この手続きは、地方裁判所へ「証拠保全申立書」を提出する方法です。これが認められると、裁判官や申立代理人らが現地に行き、会社側に証拠の提示を要求することになります。

    証拠保全手続きは、個人で行うこともできます。しかし、どのような種類の証拠を保全すべきかを申立書にて特定する必要があります。必要書類を熟知した専門家ではない個人では難しい場合もあるでしょう。弁護士に依頼して、証拠を確実に押さえることをおすすめします。

5、ボーナスに含まれた残業代を請求する際の相談先は?

ボーナスを残業代に含まれるなどの違法行為があると考えられるとき、まずはどうすればよいのでしょうか。

  1. (1)労働環境の改善を求めるなら労働基準監督署に申告する

    労働基準監督署に相談したのち、会社側に労働関係法規違反があると認定した場合には、会社に是正勧告を行います。是正勧告を行われた会社側は、労働基準監督署に対して是正報告書を出すことを要求されるので、残業未払い問題が解決する可能性があります。

    ただし、実際に動いてくれたときの労働環境の改善は見込めますが、個人の未払い残業代を代わりに請求してくれる機関ではありません。確実に取り戻したい、支払ってもらいたいと考えているのであれば、別途、個人で行動を起こす必要があります。

  2. (2)個人の未払い残業代請求をするなら弁護士に相談

    個人での直接の交渉が難しい場合や交渉が決裂してしまった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
    弁護士が代理人として活動することで、会社との交渉がスムーズに進行することは少なくありません。法的に適切な証拠集めなどについてもアドバイスできることから、結果、早期に解決して支払いに応じてもらいやすくなる傾向があります。

    また、交渉が決裂した場合であったとしても、労働審判や訴訟等の手続きに速やかに移行することが可能です

6、まとめ

残業代は賃金であるため、「ボーナスとまとめて残業代を支払う」という対応をされているのであれば、それは会社が違法な行為をしているということです。毎月適切に支払われているか改めて確認してください。もし、毎月支払われず、会社対して毎月支払うよう求めても伝えても改善されないようでしたら、次の手を考えたほうがよいでしょう。

残業代をボーナスにまとめられるなど、お勤めの会社側の対応に疑問をお感じになっていたり、適切に残業代が支払われていないときは、ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスへお気軽にご相談ください。あなたが本来受け取れるはずだった未払い残業代の請求をサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています