残業代請求は退職後でもできる? 未払いだった賃金を取り戻す方法

2024年07月25日
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残業代請求は退職後でもできる? 未払いだった賃金を取り戻す方法

高崎市を管轄する群馬労働局が公表したプレスリリースによると、令和4年度中に長時間労働が疑われる事業場に対して監督指導が行われた業種のうち、実際に労働基準関係法令違反があった事業場数が最も多かったのは「製造業」でした。また、従業員数が少ない事業所のほうが、監督指導が入った件数が多いことがわかっています。

実際のご相談でも、ご自身が従業員であるうちは「人が少ないから仕方がない」と、たとえ残業代が支払われていない状態であってもサービス残業をしながら働いていたものの、退職してから請求を考える方は少なくないと感じているところです。

そこで、本コラムでは、退職後でも残業代請求ができるのかという疑問に対し、ベリーベスト法律事務所高崎オフィスの弁護士が回答します。


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1、退職後でも未払い分の残業代請求は可能

まずは大前提となる、退職後の残業代請求ができるか否かについて回答します。残業代の請求に、「在職中であること」という規定はありません。したがって、退職後でも未払いの残業代を請求することは可能です。

  1. (1)退職後に残業代請求をするメリット

    むしろ退職後のほうが、在職している場合よりも残業代請求の心理的ハードルは低くなるとお感じになる方のほうが多いでしょう。

    働いていれば、たとえ弁護士に委任していたとしても人事や上司との関係がぎくしゃくしてしまう懸念がありますが、退職していれば人間関係を気にすることなく残業代を請求できるためです。特に、弁護士に依頼すればあなた自身が直接交渉する必要もないため、新天地で働きながら請求することも可能となり、時間的にも精神的にも大きなメリットとなるでしょう。

  2. (2)退職後に残業代請求をするデメリット

    未払いの残業代を請求するためには、残業代が支払われていない証拠が必要となります。手元に十分な証拠が残されていない場合、退職してしまうとご自身で残業代請求に必要を集めるのが難しくなってしまうケースがほとんどです。

    簡単には開示してもらえないので、弁護士に依頼して証拠保全の申し立てをするなどの手続きが必要になるでしょう。また、その結果、証拠集めの段階から弁護士に依頼することになり、その結果、弁護士費用が多少加算されるケースもあります。この点をデメリットと考える方は少なくないようです。

    ただし、弁護士に依頼することで相手方が交渉の土台に上がってくる可能性が上がります。なにより、あなた自身が準備をしたり交渉したりする精神的プレッシャーから解放され、訴訟になった場合は付加金などのプラスアルファのお金を受け取れる可能性も出てきます。

  3. (3)在職中に未払い残業代請求を行うメリットとデメリット

    在職中であれば、タイムカードのコピーなど証拠確保の行動がしやすく、しっかり残業時間の証拠を集めることができる可能性が高まる点が最大のメリットです。もし過去の残業時間の証拠がまったくない場合でも、退職するまでの証拠をきちんと確保しておくことで「過去も同様に働いていたことが推定できる」と判断され、残業代請求が認められるケースも少なくありません。

    他方でデメリットとしては、未払い残業代請求をすることにより、前述のとおり職場での人間関係の問題はもちろんのこと、あってはならないことですが、それ以外にも不当な扱いを受けるおそれがあります。大きなストレスを抱えることになってしまう可能性は否定できません。

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2、退職後に未払い残業代請求を行う方法と注意点

前述のとおり、退職後に残業代請求を行いたいというご相談のほうが多い傾向があります。最大の理由は前述のとおり、人間関係にとらわれることなく請求できるためでしょう。また、在職中は残業代請求について考えることが一切できなかったものの、周囲の話を聞いて自分も残業代請求ができることを自覚して、相談されるケースも多々あります。

本章では、退職後に未払い残業代請求を行う方法について解説します。

  1. (1)未払い残業代請求を行う手順

    未払い残業代請求を行う手順は、退職前であっても退職後であっても大きく変わりません。
    基本的な流れは以下のとおりです。
    ①会社との契約内容がわかる書類やタイムカードなどの証拠を集めて、実際に未払いとなっている残業代を計算する
    ②配達証明付内容証明郵便を使用するか、口頭などで会社側に具体的な金額を示して請求する

    なお、具体的には以下でも紹介しています。


    どれぐらい未払いの残業代があるのか、その概算だけでも知りたいという方は、ベリーベスト法律事務所ホームページ内にある、残業代チェッカーを利用してみてください。働いていたときの年収や残業時間の目安、支払われた残業代などがわかれば、たったの6ステップで残業代の概算を把握できます。

    ただし、残業代チェッカーで出せるのはあくまで概算です。正しく計算した数字を出して請求する必要があります。計算が複雑なものとなっているケースが多いため、一度は未払い残業代請求についての知見が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

    なお、請求しただけで支払ってもらえるのであればここで終了です。しかし、実際には個人で請求した場合は無視をしたり、拒絶されたりするケースが多いと考えられます。

  2. (2)退職後に残業代を請求する際の注意点①|時効

    残業代の請求の時効は、現時点では、3年と定められています。すでに退職していて、過去3年以上サービス残業を続けていた場合は、給料日ごとに残業代の請求時効が完成しているため、請求可能な残業代が日々失われていくことになります。

    したがって、退職後に未払い残業代請求を行いたいのであれば、ひとまず残業代のカウントをストップしたほうがよいでしょう。残業代の請求時効は「請求の意思表示」をすることで、6か月間時効を一時的に停止することができます。

    毎日請求できる残業代が消滅していることを自覚して、なるべく早く弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

    時効について詳しくは、以下のコラムをご確認ください。
    ■参考:「未払い残業代は何年分まで請求できる? 時効を止める・遅らせる方法」

  3. (3)退職後に残業代を請求する際の注意点②|証拠集め

    残業代を請求する際は、残業代が未払いであることを証明する必要があります。

    労働時間を示す主な証拠はタイムカードや業務日報、パソコンのログデータの記録などが挙げられます。もし在職中から、「退職したら残業代を請求しよう」と決めているのであれば、証拠を確保することは難しくありません。しかし、そうでない場合は、個人の力で証拠を確保するのは非常に困難になると考えられます。

    手元にタイムカードやパソコンのオンオフのデータなどがない場合は、家族に送信した「帰宅予告メール」なども残業時間の証拠となりますので、保存しておきましょう。会社にしか残業時間を証明する証拠がない場合は、弁護士に相談した上で裁判所に「証拠保全の申し立て」をすることで、会社側に証拠の提出を求めることができます。

    残業時間を証明する証拠がない場合は、会社が証拠を隠滅する前に、確保することが重要となります。できるだけ早く弁護士に対策を相談してください。

3、まとめ

未払い残業代は退職後であっても、在職中と同様に請求する権利があります。請求には時効があるので手続きは早めに行わなければならない点に注意が必要です。弁護士への相談は「できれば在職中に、退職後はなるべく早く」を意識すべきといえるでしょう。

ベリーベスト法律事務所 高崎オフィスでは、未払い残業代請求をはじめとした労働問題についての知見が豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた適切なアドバイスを行います。ひとりで抱え込まずまずは相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています